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負の体験を皆の前にさらけ出す

 日本で初めて“家族による家族学習会”の検討が始まったのは、今から12年前のことになります。
まずは先行して実施されているアメリカや香港の実際を学ぶ事から始まりましたが、かなりの長期間をかけた学習会であることがわかりました。

後に、アメリカなどでは十分な情報を家族に与えて、それを活用するのは家族自身であり、自己責任に委ねられるということを学びました。
 

ご存知のとおり日本では、他の国と比較して多くの精神障害者が家族と過ごしている、家族が抱え込んでいる現実があり、家族はなかなか家を空けられないと考えました。 

そこで12回シリーズなどという長期間で実施するのではなく、欠かせない知識や情報が5回で分かる抵抗感の少ないテキストを使うこと、多くても10名の参加者を迎えて、十分に本音で語り合える時間を確保すること、という形ができ上がりました。

家族学習会コラム02(5月号)_日本の家族に適応したプログラムに(図1)


家族学習会コラム02(5月号)_日本の家族に適応したプログラムに(図2)

担当者は3~5名で実施して、万が一不測の事態が起きて出かけることが難しくなった場合にも、対応が可能である体制も整えました。
これまでに各地の家族会でさまざまな実践を積み上げてきた、家族ならではの体験が生かされ反映されたものです。


初めて(筆者の)家族会で実施した時に、5名の担当者は一生懸命に取り組んだものですが、その結果かなりの疲労感が残りました。
まわりで様子を観察し、記録し、その効果評価に取り組まれた専門家からは多大な評価が得られましたが、私たちは次年度にとても実施できないと話し合ったものでした。

しかし3か月が過ぎた頃には、その時の充実感がよみがえって、来年も取り組みたいという思いが湧いてきました。
これまでに全国の県連などでセミナーや担当者研修会を開催してきました。当初はとても5回は開催できそうもない、回数が多いという声をよく聴きました。

しかし実際に開催してみると、5回という十分な時間をかけての話し合いはとても充実していたようで、4回目の頃からすでに、もうすぐ終わるのは寂しい、会えなくなるのが名残惜しいという声をたびたび耳にしました。

ただ単にテキストを学ぶのではなく、テキストに触発され、これまでの辛い悲しい体験を思い出しては語り合うことは、家族にとって欠かせない大事なことだと思います。


隠しておきたい負の体験を皆の前に一度さらけ出すことから、回復への力強い歩みが踏み出せるのだと、確信しています。

みんなねっと2019年4月号より転載(この記事は、みんなねっとに帰属しますので、無断での転載・掲載はお控えください。必要な際は事務局にご相談ください。)

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