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弾けた!

「ちょっとまっててね」と言って暗い夜道の中で、そこだけ異様に明るいコンビニに入っていく姿を見つめている。

くたびれたサラリーマンや、半袖短パンのおじいさんの自転車が通り過ぎていく中、静かな車内でずっと前を見ていた。

ドアが開いて運転席にどかっと座る君。いいものを見つけた犬のように、キラキラした目をさせながら、キラキラしたそれを渡してきた。

カップを持つ手は次第にかじかんできて、「冷たい!」なんて笑いながらソフトクリームを掬う。

ゆっくり溶けてく甘さで口元が綻んだ。「美味しい。ありがとね」と言うと少し照れた顔をし、夢中になって頬張る私を見て「可愛い」と零すのだった。

暗くてはっきり見えないそれはクリームソーダのような見た目で、私が好きそうなのを選んだと言った君の横顔が車道の街灯に照らされていた。

ほじって下に行くとぷるぷるのゼリーとパチパチが入っていた。小さく口を開けるとパチパチと可愛らしい音が聞こえる。それを楽しむ私を見て益々満足そうだった。

機嫌が悪くなったり、ちょっとした空気を和ますために君はいつも私に何かをくれる。「目をつぶって口を開けて」といわれ、私の口の中に放り込まれたそれはいつだって甘くて優しかった。

その甘々に飲まれてニタニタと笑ってしまう単純な私が好きだと言われた。

君が1口食べたそれも口の中で弾けていい音を奏でる。口の中の花火は私たちに小さい夏を運んでくれた。

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