つれづれつづり_恋愛観_1

ゲイの恋愛観 - その1

つれづれつづり、第2回のテーマは「恋愛観」となりました。
恋愛経験の乏しい僕ですが、ゲイにおける恋愛観はノンケのそれとは異なる傾向があるように思うので、つれづれ綴ってみたいと思います。
もちろん恋愛観はセクシャリティ関係なく人それぞれなので、「こういうものだ」と決めつける訳ではなく、あくまで個人の感覚だという点はご了承ください。

前回の「平成」のテーマで半生を振り返ったので詳細はそちらをご覧いただきたいのですが、僕はノンケに初恋して大失恋し、ゲイの世界に上手く馴染めず友達や恋人もなかなかできないという10代・20代を過ごしてきました。
そういった経験を踏まえた上で、ゲイの恋愛観はノンケと大きく異なると実際に感じるし、それは以下の3つが主な理由だと思っています。

1.日常生活における出会いが無い
2.結婚という公的・法的な結びつきが無い
3.子供を残せない

今回のテーマでは、この3つの理由について1話ずつ書いて行きます。
ということで、初回は「日常生活における出会いが無い」という点について。

日常生活における出会いが無い

思春期に自分がゲイだと気付いた時、みなさんはそれを周りに打ち明けられたでしょうか。おそらくほとんどの人ができなかったのではないかと思います。
今では世間のLGBTの理解が少しずつ進んで状況は変わってきているかもしれませんが、学校のような閉鎖的な空間の中でセクシャリティを公言することは、いじめや嘲笑のターゲットになるリスクが大きすぎて、人には言えず悶々と一人で悩んでいた人も多いと思います。

ノンケであれば、クラスメイトや同じ部活の女子生徒に恋をしたり、それを友達に相談して悩みを聞いてもらったり、そして意を決して告白して見事に成就したり。そんな当たり前な恋愛を経験してきた人がほとんどだと思います。
ところがゲイの場合は、まず自分と同じ性的指向の人間を見つけることができない。「自分はゲイです」と分かりやすい目印がある訳でもなく、ノンケに恋をして告白しても実らないどころか先述のカミングアウトリスクにも成りかねません。(中学〜高校生のようにまだ若くて性自認や性的指向が定まっておらず性的好奇心も強い時期であれば、ノンケに告白して上手くいったり向こうもそれがきっかけでゲイやバイに目覚めたみたいなケースも聞いたことはありますが、それは稀なケースだと思います)

今ではゲイアプリやSNSなどで同じ学校や近隣地域のゲイを探して恋人を作るといったこともできますが、それでもやはりセクシャルマイノリティ自体の母数が少ない為、ノンケに比べると出会いの数自体は少ないのではないでしょうか。それは社会に出てからも同じで、職場内など日常生活圏内で恋人を見つけることは現実的ではないと言えます。(もっとも、それくらいの歳になるとゲイコミュニティの中で居場所を見つけて、職場での出会いは一切求めていない人がほとんどだとは思いますが)

「日常生活における出会いや接点が無い」ということは、「自分から恋人を作ろうと動き出さないと、いつまでも恋人ができない」ということ。普段の生活の中で、同じセクシャリティの誰かから告白されるなんてミラクルは起こらない。
ただでさえマイノリティとして肩身が狭い思いをして生きているのに、誰かにセクシャリティがバレるリスクを覚悟しながら出会いを探す為の一歩を踏み出す必要がある。これは、若くて自己肯定感が低かったり田舎のような狭い世界で暮らしている人たちにとって、とても勇気がいる行動だと思います。この一歩が踏み出せないまま、ノンケを装ったまま大人になり、結婚したというクローゼットなゲイも、昔は多かったんじゃないかと思う。

そして多くのノンケが青春時代に「恋愛」という一大イベントを日常の延長線上で経験してきたのに比べ、ゲイは恋愛経験が乏しいまま社会に放り出されてしまう。「一度も付き合ったことがない」「童貞」といったレッテルが重くのしかかり、「誰かから愛される」という経験によって育まれるはずの自己肯定感を得ることができないまま年齢を重ね、セクシャルマイノリティであること、ひいては自分自身の存在自体を後ろめたく感じさせてしまう。いわゆるリア充や陽キャのような華々しくキラキラした人よりも、「どこか陰がある人」がゲイに多い気がするのは、そういった背景もあるんじゃないかと思う。

もうひとつ、恋愛と日常が分断されるデメリット挙げるとすれば、「その人の素性がよく分からないまま恋愛を始める」ということ。
加えて「共通の友人もいない」となってくると、完全に二人だけの世界。
その人が何者なのかは、その人自身が語る言葉でのみ構築される。
本当にその年齢?本名は?本当に他に付き合っている人はいなの?
真実を知る術は無い。
そしてそれを逆手に取って、節操のない恋愛やセックスをしている人たちもいる。自分も20歳の時に騙されたような恋愛を何度か経験し、ゲイの世界における出会いや恋愛に不信を募らせていた時期もありました。

また、アプリやSNSで知り合って、タイプだったので実際に会ってお茶をしたりセックスをしたとしても、その人の「人となり」がつかめず、恋愛までに発展しなかったり。あるいは付き合ったとしても、「ちょっと違った」と数ヶ月で別れることになったり。
日常生活上の出会いであれば、その人がどんな人なのか普段から見えているし、少なくとも共通の友人はいるはずなので、その人についての情報も教えてもらえる。そもそも人として問題があるような人を紹介したりしないし、社会的な周囲の評判にも繋がるのでお互いを騙すような行為は起きづらい。
「お互いを知る過程」を完全にすっ飛ばして恋愛に突入して、短い期間で付き合って別れてを繰り返すパターンがゲイの場合は特に多いように感じる。

ゲイコミュニティの中で居場所を見つけられたり、SNSを上手く活用できるようになれば、そのコミュニティの中で恋人を見つければいいだけなのかもしれないけれど、そこに辿り着くまでのハードルはやはり高い。

長々と書いてしまったけれど、ゲイの恋愛にとって「最初の一歩」を踏み出すことの心理的ハードルの高さがもっと下がり、若いゲイの子が自分を否定せずにもっと自由に恋愛を謳歌できるような世の中になればいいなと思います。


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