ホロライブの将来

今回はホロライブのコンセプトや内実を反芻し、その将来性について考えたい。この将来性というのは、いわば「今後、ホロライブがVtuber業界において不動の地位を確保できるか」ということである。

なお、本記事におけるホロライブは不祥事による影響を一切考えないものとする。(考慮した場合、ホロライブは砂上の楼閣に等しいため)

アイドルという看板

ひとまず、目に見えるものから将来性を判断していこう。

ホロライブのコンセプトは「アイドル」である。これはにじさんじと対比されるときに頻繁に用いられる。例えば「ホロライブはAKB48、にじさんじは吉本」だとか「ホロライブは面白いアイドル、にじさんじは可愛い芸人」だとか。

これらから、一見ホロライブはVtuber業界のアイドル枠として確固たる地位を既に築いているように見える。しかし、これにはいささか論理的な錯誤が見られる。

1)「アイドル」と形容されるのは、ただ単にホロライブを一括りに表現するにあたって手っ取り早いからであると思われる。実際の配信内容とはさほど関係なく、一種のレッテル貼りに近い。

2)「アイドル」をコンセプトにしているVtuberは山程いる。現時点でのホロライブの人気は、累積した文化――カップリングやスラング――や泡沫の海外ファン(次項で解説)に支えられたものでしかない。新進気鋭の「アイドル」Vtuberがホロライブを凌ぐ可能性は十分ある。

以上の二つの理由から、
ホロライブはVtuber業界において古参「アイドル」としては盤石なポジションにあるが、新参者に後れを取ることは想像に難くない。挑戦的な姿勢を忘れずに邁進していただきたい。

移ろいやすい海外人気

ホロライブの人気を語る上で外せないのが海外人気だ。こちらもにじさんじとよく比較される。「ホロライブは海外ファンを多く抱えており、にじさんじは国内ファンを多く取り込んでいる」だとか「ホロライブの魅力は一目瞭然だが、にじさんじの魅力は海外ファンには伝わりづらい」だとか。

こちらもやはり、ホロライブは海外ファンの牙城であると思われがちだ。ただ、この海外人気はやがてホロライブの逆風と化すかもしれない。

1)この海外人気のきっかけは言語を超越した「一目瞭然の魅力」(=萌え、かわいさ)である。積み上げてきたもの――海外向けのスラングや内輪ネタ――は一朝一夕では用意できないが、萌えや可愛さは何もホロライブの占有物ではない。にじさんじだろうが、アイドル部だろうが、真似しようと思えば真似できる。

2)先月、にじさんじで二名の女性ライバーがデビューした。そのうちの一人である空星きらめ氏の担当絵師は、なんとホロライブの天音かなた氏も手掛けたおしお氏である。無論、この是非を問うような愚行をするつもりはない。(※1)
これは、ホロライブファンが親近感を抱く絵師を起用することで、にじさんじ側のホロライブファンへのアプローチを狙っていたのではないだろうか。もちろん、そのホロライブファンは海外ファンも含んでいる。

3)にじさんじなどの翻訳切り抜きを望んでいる海外ファンは当然一定数いる。中には、ホロライブもにじさんじのように活発な男女コラボをやってほしいと望む海外ファンもいる。決してホロライブの配信内容に惹かれたとは限らないのだ。

以上の三つの理由から、
当分ホロライブはこれまで培った(海外向けの)スラングや内輪ネタで海外ファンを惹きつけることができているが、にじさんじや他のVtuberグループもその気になれば、海外ファン向けのデッキを組むことは可能である。また、海外ファンのホロライブ以外のVtuberへの関心も高まっているため、日々精励を忘れてはならない。

※1.過去に、にじさんじの椎名唯華氏の担当絵師、神岡ちろる氏がその後ホロライブの猫又おかゆ氏のビジュアルを担当したことがあった。おそらくあれも、にじさんじの人気にあやかろうというホロライブ側の思いも少なからずあっただろう。
他にも前例はある。絵師の起用理由を考えると、起用側の狙いが自然と浮かび上がってくる。

技術力のホロライブ、運命や如何に

ホロライブはVtuber業界の参入当初から3Dモデルなどの高い技術力を誇っていた。その後もリアルライブや長時間の3D配信などで経験を積み続け、今もその技術力の高さは業界トップクラスとも言われている。

一方にじさんじはLIVE2Dでの配信からスタートし、「これはVtuberとは呼べない」といった批判的な声を浴びせられながらも、技術力の向上に努めた。そして昨年10月には新鋭のモーションキャプチャーシステムVICONの導入に踏み切り、3Dモデルは以前とは見違えるほど高クオリティなものになった。
先日舞元啓介氏の3D配信を少しだけ拝見していた。初期の同社3Dモデルと比較すれば、まさに目覚ましい進化である。感嘆しながら見ていた。

みなまで言わずとももう分かるだろう。

かつての黒白の差は驚くほど縮まり、いつホロライブが技術的な面で首位から転落してもおかしくないのだ。もちろんホロライブの技術力が落ちたわけではなく、にじさんじのそれが上がったという点で、この僅差はVtuber業界にとって朗報以外の何物でもない。所詮私たちはVtuber業界という小さな箱庭の中で、数年で追いつかれるような僅差のことを「業界トップクラス」と誇っているに過ぎなかったのだ。マジでホロライブ頑張ってくり〜。

まとめ

「アイドル」を掲げていようが、海外の人気に支えられていようが、技術力を誇ろうが、それらは極めて不安定な要素である。他勢力がホロライブを凌駕するのは時間の問題なのだ。いや、時間の問題ですらないかもしれない。もはや他勢力の気分次第だ。事態は一刻を争う。ホロライブの今後の地位は、現在の努力に懸かっている。

まあ、その前に遵法精神どうにかしてもろて。

ぜひ忌憚なき意見を聞かせていただけるとありがたい。以上だ。

最後に

サブカルチャーを標榜するも内容は乏しく、その人気は海外の需要に支えられており、かつて技術力で業界を牽引していたにも関わらずその栄光は過去のものになりつつある。

我が国と近いものを感じるぺこ......

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