コロナ禍下が炎上しやすい理由

このコロナ禍下において、エッセンシャルワーカーに関するSNS上での炎上案件が、ここ1,2週間だけで複数ありました。今日はそのことについて考えてみたいと思います。

#GratefulForTheHeroes絵 事件

【事件概要】(*筆者によるまとめです):Twitter上で漫画家ひうらさとる氏の呼びかけによって始まったタグ('20/4/10~)。エッセンシャルワーカーを英雄的なイラストで描くことで応援しようという呼びかけ

医療従事者からの強い不快感と反発が表出し始めたのは4月17日(現存するTweetから確認)、急速に炎上した。多くの絵が投稿されたと推察されるが、国内の投稿は削除されたのか多くを見ることは出来ない。

過去、同じようなイベントは何度も行われていたと記憶している。例えば熊本地震を悼む「#くまもんがんばれ絵」などは記憶に新しい。しかし、今回のような反発は無かったように思う。

当事者不在の違和感

#GratefulForTheHeroes絵 に対して不快感を示す医療従事者の訴えとして、以下のようなものがあった。(最もリツイートされた投稿が見当たらない為、筆者の記憶を頼りに記す)

医療従事者である当事者も逃げたい。家にいたい。(でも帰れない)
私たちは一人の人間である。美化されることによって逃げたいのに逃げられない現実をつきつけられるようで苦しい。

エッセンシャルワーカーに対して感謝を持つことは至極自然な気持ちだと思う。従事者を描くことで応援になると考え、行動に起こしたこと。それ自体に問題は無いとは思う。しかし、「いつ」「何の為に」「誰を」「なぜ」描いて発表するのかという点がボヤケていること、絵を描けば喜ばれると素直に信じ切っている素朴さ・呑気さが炎上につながったと考える。

精神的に余裕の無い当事者にとっては、自分たちが絵描きによって無神経にも単なるモチーフとして消化されているのではないか?という疑念と苛立ちを喚起させてもおかしくなかったと思う。

糸井重里・炎上事件

【事件概要】(*筆者まとめ)4月26日付け『ほぼ日刊イトイ新聞』内『今日のダーリン』文章において、〝「いま懸命にはたらいている前線のようす」をステイホームしている人たちに伝えてくれないか。”と呼びかけた。主な炎上の原因は、その前の枕として記していた「観戦スポーツのおもしろさ」と並べているように捉えられたことが問題とされる。

本案件に関して、私は糸井さんに同情を感じている。エッセイ内の文章を意図した形とは異なる切り取られ方をしてしまい、誤読された劣化コピー文章がひとり歩きをして炎上につながってしまったとみている。つまりはこうだ。「スポーツ観戦をライブで楽しむように、前線で働く人を家で、しかもライブで応援したい」・・・本文をよく読めば、それは本人が意図した内容とは異なると分かるのだが。


世界的な非常事態下での発信の難しさ

一流ライターである糸井重里でさえも誤読され炎上につながる現在は、どう考えても受け手である我々がピリピリした精神状態におかれているということの裏付けでもある。とはいえ、一流ライターならば誤読されないように書くこともできたのではないの?と訝しくも思う。

糸井氏の本意を捉えるに「ドキュメントとして現場を記録し、前線で戦う人たちに畏敬の念を持たせてほしい」ということだろう。それを多くの人たちが「エンターテイメントとして現場をライブ中継してほしい」と盛大に誤読している、その誤読の原因はなにか。(1)RTされた誤読文を無根拠に信じたから(2)#GratefulForTheHeroes絵事件と同様、一生懸命頑張っている人をモチーフとして消費することへの嫌悪感が根底にあるから、いずれかだろう。

求められる〝解像度の高い想像力と情報精査能力”

ほかにも〝ゴミ袋にメッセージを書くことで清掃業に携わる人を応援”を呼びかける小泉環境大臣などにも批判的な意見がTwitter上で目立った。これも複数のニュースをよく読めば、小泉大臣は「ゴミを小出しにしろ」「ゴミ袋が破裂しないように空気をぬけ」等、至極真っ当なことを伝えていることがわかる。

#GratefulForTheHeroes絵 、糸井重里、ゴミメッセージ…、おそらく今後もコロナ禍関連での炎上は大いにありうる。今回挙げた炎上案件を考えるに、多くの人々が感情的になっている傾向があるのは確かだ。このような状況下では、受発信に関して通常時以上の慎重さが求められる。情報発信の際は発信する情報そのものの鮮度と信頼性、どのように受け止められるかという想像力が必要だし、情報受信の際も、その情報の信頼性について検討すると共に、その情報がもたらすものについて自分の頭で考える訓練が必要だ。今一度、その情報をシェアする前に冷静に精査してほしい。





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