多様性は面倒くさいものだよね
たまたま妻が購入していたこともあり、借りて読んでみました。
多様性って大変だし、面倒くさいものだよねっていうのが一読目の感想です。
多様性が大事、ダイバーシティが重要という話しはここ数年よく耳にします。しかし、他者を理解する能力を育成するという話しはあまり耳にしないように思います。本著では、empathyとsympathy の違いとあります。
sympathy は相手のことを想い、感情や行為を理解する。とても大切かつ誰にでも出来ることです。
empathy は理解はしなくても、相手の視点、視野に立てる力のようです。誰かの靴を履いてみること。善意あるいはそれに近い力それとempathyがつながっていると言えるようだ。つまり意思とempathyは切り離せない関係なのかもしれません。
sympathyはできて当たり前その上でempathy の能力を身に付ける必要があるというわけです。
ブレイディみかこさんご本人と中学生の息子さんの日常を描いたエッセイです。イギリスのブライトンが生活の拠点で、静岡とは違うのですが、通じるような話題、問題があると感じました。
環境問題改善を訴えたスクールストライキに参加したくても出来ない生徒がたくさんいるというのは、全く気が付かなかった「差」でした。
集落と集落の外側の人。人は「私達」と「あの人達」と区別しがちです。日本は島国だからなのか、明治以来の洗脳によるものなのか、排他思考が強い人が多いようです。「私達」だけで全ての事が完結出来るのであれば、安定安心で心穏やかに過ごせるでしょう。
しかし21世期の現代は、よくも悪くもインターネットで世界はつながっています。全てが可視化される中で「私たち」と言うコミュニティーだけで完結することが非常に難しいです。
多種多様な文脈や背景がありたくさんのコミュニティーが存在しているということを私たちは知っている必要があります。無知は差別を生み出して、攻撃性が生じます。その攻撃性は何の幸せも生み出すことはないでしょう。
この本の読書会があり、他の方々と感想や意見のシェアをいたしました。私は思考の瞬発性が弱いのかあまり意見を出せなかったのですが他の参加された方々の意見が多数あり非常に参考になりました。
再現性と創造性は1つのキーワードだと思います。学校教育では再現性の方が優先される傾向があると思っています。その理由は学校の先生たちはどう評価するのかっていうところを常に意識してるように見えるからです。この評価って言う視点で考えると創造性の方には結びつかないような気がします。読書会に参加されてた人たちがどなたかが仰っていたeducator とteacherの違いが一つの原因かもしれません。
学校や塾には圧倒的にteacher が多いと思います。teacher は文字通り知識を教える人。teacher はどうやったら効率よく生徒に知識を与えられるかというところに腐心してるように見えます。
人の成長に大きく関われる、生徒の背中を押してあげる、ファシリテートができる、これがeducator に必要な要素。教育現場にはeducatorはなかなかいません。
耳にタコだと思いますが,
社会生活においては、世界には正解のない問いがほとんどだと言われます。
社会人として独り立ちできるように育成するのが目的なんだとしたら学校や塾にはeducators が必要なんじゃないでしょうか。educators に必要なのはファシリテーション能力です。子供が発する言葉の核となる意味を間違えずに捉えられることができる、これがファシリテーションの肝です。
読書会で参加者の方々のこれらの深い洞察が非常に学びになりました。
「老人は全てを信じる。中年は全てを疑う。若者は全てを知っている。子供は全てにぶち当たる。」本のカバーを開くとこの言葉があります。
私は中年なので、当たり前だって言われることに対して疑ってみようとしてはいます。よく言う「普通」って言う言葉、基準がどこにあるのかよくわからん。
若者は経験不足のゆえに自分のキャパシティを超える情報にたくさん触れる機会が多いと思います。表層的な知識に若者は満足してしまう傾向がある。ということで若者は全てを知っていると表しているのかもしれません。
子供は未知なことばっかりで世界は溢れています。だからいろいろとぶち当たってその都度悩んだりまたは楽しみながら自分たちで解決策を勝手に編み出していくのでしょう。
周りの大人ができるのは子供たちを尊重しそして信頼することだけなのかもしれませんね。先回りして解決策を子供に示しても子供にとっておそらく余計なお世話なんだと思います。子供たちが自分の頭を使って自分で行動していくことが自分たちの成長につながります。
親離れ子離れ、いつの時代もよく言われますけどこれが結構難しいんですよね。
昔誰かが言ってました。子供は親の言うことなんか聞かないけど、親の行動はよく見ている。つまり親の背中をよく見て勝手に育つということなんでしょうね。
親はそこを意識して親(自分)自身の人生を楽しんでいるというところを子供に見せれば一番良いのかもしれません。