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経済成長してるはずなのに給料が上がらない件


安倍政権発足(2012年12月)以降で(名目)GDPは493兆円から541兆円(2019年7月現在)と10%程度増加しています。平均給与は国税庁の統計上も増加しておらず、報道やSNSなどでもバブル後に大きく下がって下がったまま。という声がよく聞かれます。



(表①)過去10年の日本の名目GDP推移



(表②)民間平均給与の推移(2017暦年度まで)
(時事ドットコム(https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_eco_company-heikinkyuyo)より引用)


GDPは1年間に国内で産み出された付加価値の総額で、分配面でもっとも大きいのは雇用者報酬(給料)となり、先進国ではおおよそ3分の2程度は雇用者報酬として分配されるとされています。

したがって、GDPと給料、そしてその平均は、よっぽど劇的な経済構造の変化でもなければだいたい比例的に動くと考えるのが合理的に思われ、このようにGDPは増加しているけれども平均給与は上がらない。という状況には違和感というか、不自然な感覚を受けていました。

もちろん、経営者が利益を追求して従業員の給料を押さえ込んでいるとか、格差・貧富の拡大などの文脈で解釈するのは簡単なのですが、そういうことだとすると、もっと政権を攻撃したい勢力の人たちが大々的に言ってそうなんだけどなあというのが直感でした。


それでいろいろネット上を見ていたところ、理解しやすいデータがあったので引用します。


(表③)名目雇用者報酬と労働分配率の推移


(表④)名目雇用者一人あたり報酬と雇用者数の推移


(表⑤)名目雇用者報酬増加率の要因分解

表③,表④,表⑤はいずれも GD Freak! (https://jp.gdfreak.com/)より引用


以上から分かることは次のとおりです。

✔ 雇用者報酬そのものは10年前との比較ではGDPとおおむね比例的に増加している(表③)
✔ 雇用者数が増加しているので、一人当たり報酬はGDPの増加率ほど増加していない(表④)
✔ 雇用者報酬の増加は、雇用者数の増加による要因が大きく、一人当たり報酬の増加要因は小さい

✔ 逆に考えると、GDPの増加は雇用者数の増加による要因が大きい。


雇用者数の増加といってもあまりピンと来ないかも分かりませんが、55歳以上、特に65歳以上の年代の雇用者数が増加しています。

(表⑥) 各年齢階級における正規、非正規の内訳 男女計
独立行政法人労働政策研究・研修機構 (https://www.jil.go.jp/kokunai/statistics/timeseries/html/g0209.html


15歳から54歳までの雇用者は10年前と比較してほぼ同程度です。55歳以上の雇用者の増加は、当該年代の人口そのものの増加もあるものの、現役で仕事をする人の割合(高齢者の就業割合)が増加したことが大きいでしょう。働き続きけることの価値観の変化などもあることでしょうが、どちらかというと、年金支給時期の引き上げ、高齢化雇用安定法による定年引上げや継続雇用の義務化等の労働法上の措置といった政策による影響、また貯蓄率の低下や平均余命の伸長といった経済環境の変化によるところも大きいでしょう。


まとめ

(なぜ経済成長してるはずなのに給料が上がらないのか)
経済成長の要因に、高齢者の就業率が増加している影響が相当大きく含まれると考えられる。経済成長による付加価値の増し分が高齢の就業者数の増加と釣り合い、平均給与は増加していない。

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