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関係性の質(1)トラブルから何を学びそれをどう生かすか?

 ビジネスにおいてトラブルは避けたいものですが、しかしトラブルなしでオペレーションを回していくのは容易なことではありません。以前勤務していた会社のアメリカ人の上司がよく”Troubles come in bunches.”と言っていました。これは、「トラブルは束になってやってくる。一度二度でなく三度四度と顔を殴られたような思いをする。」ということを意味していました。皆さんはそういったご経験がありますか?

 組織には文書化されていない、ほとんど意識されていない仕事の流れの理解や担当者、部署同士の了解などがあります。この無意識の前提のおかげでいちいち連絡や確認をしなくても仕事を効率的に進めることができます。これは決まった作業工程や業務分掌に加えて暗黙的なつながりができているということです。
 しかし担当する人間が変わったり、製品にちょっとした変更があったり、時間と共に仕事のアウトプットに求められるものが変わったりするとこの前提は成り立たなくなってしまいます。

 何か不具合が出た時、それが大きくなる前に根本原因をきちっと探り出し明示化して関係者に共有すればトラブルは小さいうちに解決でき、また業務の本来の目的を再確認し暗黙知をつなげ直すいい機会を与えてくれます。しかし場当たり的な対処や臭いものには蓋といった考えが横行するとトラブルの種があちこちに存在するようになり、一つのトラブルが導火線になって対処が難しい大きなトラブルを引き起こします。本当に想定外の事故がないわけではありませんが、ここ数年に起きた食品メーカー、自動車部品メーカーの大規模なリコールや化学工場の大きな事故などを見ても、トラブルが起きるまでには同じ原因が組織の中に存在します。

 よくメディアの報道では組織の体質と言う表現が使われますが、その実態は人と人の仕事上の関係性で、平たく言うと自分の仕事しか見ていない、仕事の繋がりを見ていない、何かあった時にどう協力していいか分かっていないということです。トレーニングやトラブル防止マニュアルなどが存在しても、仕事を協力して行える関係性が欠落していればそれらはすぐに形だけのものになりがちです。外から見ると「なぜこんな当たり前のことができないのか?」と事態は、トラブルを他人事として扱い放置し当たり前のことを長い間やって来なかったつけが現れたものです。

 一事が万事といいますが、小さな不具合を自分達を見直す良い機会と捉えトラブルを防ぐだけでなく、よりクリエイティブなルーチンを作っていく材料として使えば組織の健康度をきちっと保つことができていきます。

                            (河田)

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