【小説】仔猫ぶーちょの生活-7 思春期ですか?

ぶーちょは水が大好きである。水を怖がらない猫は珍しい。飼い主の風呂の時間になると、勝手に浴室に行ってタイルに座って待っている。飼い主が湯船に入っていると、縁に座ってお湯に手を突っ込み、遊んでいる。また、髪を洗ったり、体を洗ったりしている飼い主の周りで、流れるお湯と遊んでいる。

飼い主が風呂を出る頃には、ぶーちょの背中はずぶぬれだ。このまま進化すれば湯船で泳げるようになるかもしれない、と飼い主たちは期待した。

ところが、ワクチン二回目の接種が終わったころから、ぶーちょの態度が少し変わった。お風呂の時間にたびたび遅れるようになり、さぼることも増えた。やってきても、外から水を眺めているだけで、中に入ろうとしないこともある。

ぶーちょはようやく毛皮が濡れるのは非常に不愉快だ、ということに気づいたらしい。未来のスイミング猫になる夢が吹き飛んだのは、残念だ。

ほかにも変化があった。

それまで、背中や頭をなでようとして手を近づけると、すぐさま手に飛びつき、かみつき、なでることができなかった。でも、今は少しおとなしくなり、背中を触ることもできる。一日の睡眠回数も減ったが、その代わりに一回の睡眠時間が長くなった。時々キャットタワーの透明な宇宙船ボールに入り、縁に頭を乗せ、あんにゅいな表情をする。

一匹でいることも増えた。いないと思って探すと、飼い主のベッドの上で大きな目を開き、物思いにふけっている(ように見える)。どこにいるのかわからない時もあるが、「ぶーちょ」と呼ぶと、しばらくして出てくる。完全に自分の名前を覚えた。

幼児期をようやく脱し、思春期に入ったのだろうか。


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