ガルボの「アンナ・クリスティ」 (1930)

「ガルボがしゃべる!」スウェーデンなまりのためにトーキーでダメになるんじゃないかと心配されたガルボは、それどころか、サイレント以上にミステリアスな雰囲気を漂わせることになったのです。

ユージン・オニールの戯曲が原作で、石炭を運ぶはしけの船長が10数年ぶりに娘と再会し、はしけで一緒に住むようになり、海で助けた船員と娘が恋仲になるが、娘が売春宿で働くまでに落ちぶれた過去を持っていることを知り、父は嘆き、船員は彼女から離れる。ところが……。

この映画にはアメリカ版とドイツ版の二種類あり、アメリカ版の撮影後に同じセットでドイツ版が作られました。なんと、ガルボ以外は、監督も共演者もまったく別(撮影は両方ともウィリアム・ダニエルズ)。アメリカ版の監督はクラレンス・ブラウン、ドイツ版はジャック・フェデー。ガルボ自身はドイツ版が好きだと言い、私もはるかにドイツ版が好きです。アメリカ版の父親ジョージ・F・マリオンと彼のいかがわしい女友達マリー・ドレスラーは薄汚すぎます。それにガルボと恋仲になるチャールズ・ビックフォードは野獣すぎます。ドイツ版の俳優は知らない人ばかりですが、アメリカ版よりも人間味があるし、船員役の俳優はビックフォードよりもはるかにガルボにふさわしい容姿と態度です。それに、MGMは監督の演出まで拘束しなかったらしく、アメリカ版が演劇を正面から撮影しているように見えるのに対し、ジャック・フェデーは、まるでジャン・ギャバンとミシェル・モルガンが主演しているフランスの詩的リアリズム作品のように仕上げています。

2013年4月15日

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