海1_20170326

この街に住みたかった理由

小学校5年生だったと思うの。遠足で鎌倉に行きました。

グループで鎌倉のどこに行くか計画を立てて、実行する遠足だったと遠い記憶の糸をたどりたどり断片的に思い出しました。どこを見たのか覚えていないのだけれど、歩いた街並みや江ノ電、海、寺、木々、ゆったりした時間、笑顔がとても気に入って、大人になったら鎌倉に住みたいなぁと思ったの。その後も生意気な小学生は鎌倉までの小旅行を一人で数度、冒険したの。それでもだんだんと他に興味が移り、そのうちに忘れてしまいました。

家族をもって品川に住みました。便利だし、会社からも近い、公園もたくさんあって犬も飼えるマンションに何の不満もありませんでした。

飽きたとしか理由が思いつきません。便利に飽きたのです。なんて贅沢!よくそう言われます。東京ではないところに住みたいなぁ。そんな理由でした。なんとなく鎌倉はどうだろうとふっと頭に浮かびました。思いついたそのとたんに、思い出したのです。私は大人になったら鎌倉に住みたいなぁって思っていたんだ。思い出したら行って見てみたくなりました。軽い軽い思い付きでした。

「鎌倉のどのあたりがいいですか。」と、訊かれて、江ノ電、海、寺、と小学校5年生の記憶から引っ張り出してイメージを伝えました。不動産屋さんは海が見える江ノ電沿いの物件を三件選んで、「今日は三件見てみましょうか。土曜日ですから海沿いの道は混んでいますから三件見れるかどうか・・・。」と、私たち家族三人を乗せて車は走り出しました。

「ここに住みます!」案内してもらった初日の三件目で決めました。一件目、二件目は空き家物件で、ほとんど新築に近い状態でした。三件目はまだ若い家族が住んでいて、築12年が経過した中古物件でした。でも、楽しく暮らしている感じが伝わってきて、その家族の成長を見守った優しい家だという空気がしたので、即決しました。

駅から7分、海まで8分、富士山が見える素敵な田舎生活が始まったのです。

観光地ですから土日は混雑します。江ノ電はぎゅうぎゅう、海岸沿いの道路は渋滞です。会社までは通勤時間が4倍近くになりました。でもね、夜は街灯が少なくて少し怖い感じや、朝の鳥のさえずりや、青い空と富士山と海とサーフィンとが日常にあるのです。タヌキやリスやハクビシンがふつーにいる都会に近いこの田舎がちょっと不便でとても好きです。

小学校5年生があこがれた大人になったら住みたい街に住んでいます。大切な家族と一緒に住んでいます。


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