自立とは

娘(21)が家出した。
突然、でも突然じゃないかな、でも突然かもしれない。
いま帰る、というラインを最後に、帰らなくなって1週間。
わたしは朝と夜、家にいるとパニックになり、しんどくて眠れない。
だって、着の身着のまま、いなくなったから。
洗濯ものも干してあるし、好きな食べ物も買ってあるし、お部屋も
暖かくしてるし、布団も干してるし、お風呂もすぐ入れるのに、
いない。帰ってきたかな、と物音ですぐ起きるから、眠れない。

帰るって言ったよね?
嘘?
待ってるんだけど。と何度も連絡する。

パニックのまま1日過ぎたころ、
当分帰りません、話はない、友達のとこにいる。
と返事。

話はないって、つもる話をよくする親子なんですけど。
ずっとしゃべってる親子なんですけど。ないのはアナタだけで、
わたしはあるのよ、とりあえず帰らないと話にならない。

帰れ、帰れ、とラインする。既読にならない。

これを、どうすりゃいいのか、わたしは自分の気持ちが
混乱してわからない、母や妹や弟に、帰るように伝えてくれと
ラインする。介護で大変な母も、意識の朦朧としている闘病中の
父も、一気に元気になり(ショック療法)帰れ帰れと怒り出す。
そう、怒ってよ。怒ってほしい。
連絡をしないで、嘘ついて出ていくのは、お母さんが傷ついているんだよ!と。

しかし、今度は、母や弟や妹にも連絡しなくなった。
みんなが、待つしかない、と言い出した。

自立したいんだと、母には言ったらしい。

当たり前だよ、すればいいよ、どれだけ好きなことやったって
かまわないんだし、旅をして見聞を深めて、またその話を
聞かせてほしいよ。朝まで友だちと好きな音楽聞いたりイベント
行ったりしているから、それないいことだから、どんどんしなさい
って歓迎したじゃない。わたしだって行きたいし、話ききたいよ。

と、最近よく話していた。
でもさ、連絡はするでしょうよ、自立したいなら、大人なんだったら。

具合悪いわたしに、弟がやってきて話を聞いてくれた。
娘みたいに育ててくれたから、おやじみたいに、うなだれていた。
が、弟が言うのは、
連絡しないよ俺も、嫁さんに。と。
へ?
2軒め、3軒め呑みに行って、朝帰りしても、連絡しなくても、
奥さんは自分のことで夢中だからね、皮肉だけ言われるけど、と。
え?
連絡をするというのは、常識だと思っていたけど、人によって
とらえ方が違うんだね、でも信用関係ってことだよね。
うん、帰ろうとして帰りたくなくなっただけじゃない?
え?
そんなことがあるの?

と、ど真面目な弟から意外な話を聞いた。ちなみに弟夫婦は
仲良しである。

だいたい姉貴は、真面目な21歳だったわけ?

いや、布団かついで家出して、昼夜逆転して、最近まで
収入不安定のパーティ好きの、とんでもない奴でしたよ。
自分のことで精いっぱいで、毎日精いっぱいお酒飲んで
精いっぱい生きていたわけです。
だからさ、遊びまくるのはいいんだよ、それは咎めてないよ、
でもさ、帰るっていって帰らないって、残酷だよ!

そこに何でこだわるのか俺にはわからないなあ。。

弟の意外なアドヴァイスに、??となるも、
娘のようにかわいがって育ててくれたので、やはりショックもあり
俺が甘やかしたんだ、とうなだれる面も。

わたしは仕事柄、「自立」という言葉や言葉の概念を使い、説明し、考える時間が多い。障害をもったり、引きこもってしまったり、学校に行けなくなってしまった人が、「自立」するとはどういうことか。社会と関わる、とはどういうことか。
彼らは、決して一人で働いて一人暮らしができるわけではありません。
数々のサポートがあって、生きる目標や、価値や、やりたいことを見つけて、それが収入を得るものであっても、そうでなくても、自信と喜びのうちに暮らしていけることが、自立の一部だったりします。精神的な自立ともいうでしょう。
物質的なサポートは、いろいろな援助や制度があります。

娘が自立したい時期だというのは、言動によく表れていますが、現実的には
一人では難しく、そして母は援助ができません。
その話し合いをしないと、急に出て行っても、何も解決しないんです。


わたしたち母娘は、仲良いと思っていました。
というか不思議なのですが、前世では、立場が逆だったのでは?と
思うことが多い。
今回も、
大人になりたい子ども(娘)と、大人になりたくない子どものままでいたいわたし(母)は、そんな感じ。

世界の平和は、家族からです。
話し合いを求む。



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