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「民間法制審議会家族法制部会中間試案を勝手に支持する弁護士の会」(130名)

共同養育支援法全国連絡会のHPに「民間法制審議会家族法制部会中間試案を勝手に支持する弁護士の会」(130名)による要望書提出の記事がアップされました。少しでもこのアクションが広がって欲しいのでnoteに記事として書き残しておきます。

「民間法制審議会家族法制部会中間試案を勝手に支持する弁護士の会」(130名)により、自民党法務部会「家族法制のあり方検討プロジェクトチーム」提言に基づく民法等の改正作業実施を求める要望書が高市早苗自民党政務調査会長に2022年7月27日に提出されました。

共同養育支援法 全国連絡会HPから引用

要望書の内容は以下になります。

自民党政務調査会会⾧ 高市 早苗 様

自民党法務部会「家族法制のあり方検討プロジェクトチーム」提言
に基づく民法等の改正作業実施を求める要望書


令和4年7月27日

「民間法制審議会家族法制部会中間試案を勝手に支持する弁護士の会」一同
(130名)


現在、法務省法制審議会家族法制部会において、離婚後の家族の在り方に関する審議が行われており、8月末には中間試案が決定されると聞いています。 この中間試案では、離婚後の親権の在り方として、「単独親権制」維持、「原則単独親権制」導入、「原則共同親権制」導入の3案を提示しています。 前2案は論外であり論ずるに値しませんが、問題は一見妥当に見える「原則共同親権制」案(以下「法務省案」)です。法務省案は、以下の2点を同時に制度に埋め込むことで、実質的に「単独親権制」を温存する案です。「『狗肉』と『羊頭狗肉』のどれを選ぶか」と政府・与党に迫っているようなものであり、欺瞞に満ちた提案といえます。 法務省案が羊頭狗肉である根拠の1点目は「選択的共同親権制」の導入を謳っていることです。
法務省案は、父母間の協議により、父母の一方のみを親権者とすることができるとしています。 現在、「離婚後、子は母親が育てるもの」との社会通念が広く流布している中で、協議により、父母の一方が親権を放棄できるとした場合、多くの父親は親権を放棄すると予想されます。結果として、現在と状況は大きく変わらないおそれがあります。 しかし、親権とは、子に対する権利であるとともに義務の側面もあります。親として果たすべき義務を、父母が協議し合意したからと言って免除することは許されません。 また、制度上、共同親権を選択できるにかかわらず、父母の一方が敢えて親権放棄を選択することは、父母の一方が「子を捨てる」ことに父母双方が合意することを意味します。その事実が子の心にどれ程の傷を与えるかは、少し考えれば分かるはずです。そんな残酷な仕組みを絶対に導入してはいけません。 婚姻中の親権放棄について、やむを得ない事由がある場合であって、かつ、裁判所が許可したときに限定されている(民法837条)のも、かかる趣旨からだと考えられます。離婚時の親権放棄を認めるのであれば、この条文と整合性をとるべきです。 同様の趣旨から、離婚に伴い父母の一方の親権をその父母の意思に反して剥奪できる仕組みを導入するのであれば、その場合、婚姻中の親権剥奪事由(民法834条)と同じ要件とし整合性をとる必要があります。 このように、法務省案の提案する「選択的共同親権制」は、父母双方が離婚後も共同で親権を行使するという「共同親権制」を換骨奪胎するだけでなく、現行民法の婚姻中の親権規定と全く整合性のない杜撰なものです。決して認めてはなりません。
法務省案が羊頭狗肉である根拠の2点目は、「監護者指定制」の導入を謳っていることです。 法務省案では、離婚に伴い、父母の一方を子の「監護者」として定めることができるとしています。しかも、この「監護者」に親権の中核的要素である「監護権」と「居所指定権」まで付与するとしています。離婚後、監護者に指定されなかった親権者に与えられるのは、親権のうち「財産管理権」などのみです。 この法務省案を「なかの餡子を抜き取り、皮だけになったものを饅頭だと言い張るようなもの」と例えた新聞記事がありましたが、まさにその通りで、「共同親権制」を完全に骨抜きにする法務省案は、政府・与党を愚弄しているとしか思えません。 また、法務省案の「父母の一方を子の『監護者』として定める」主体が不明ですが、仮にその主体が裁判所であると解した場合、裁判所が父母の意思に反して「監護者指定」できることになり、現行の「単独親権制」と何も変わらないことになります。 裁判所の決定で「監護者」の地位を失った父母は、現行制度で「親権者」の地位を失った父母と同様に子の監護から強制的に排除されます。子の監護から排除されたくない父母は、一つしか与えられない「監護者」の地位をめぐり裁判所で争いを繰り広げることになります。現行の「親権者」争いが「監護者」争いに変わるだけです。 法務省案の「父母の一方を子の『監護者』として定める」主体が父母であると解した場合、父母の意思に反して「監護者」としての地位を失うことはなくなりますが、仮にそうだとしても、「監護者指定制」を認めて良い理由にはなりません。なぜならば、上記の「選択的共同親権制」の議論と同様に、親権の重要な要素である「監護権」や「居所指定権」を父母の一方が協議により放棄することは許されないからです。 これらの理由から、「監護者指定制」は、決して認めてはなりません。 そもそも、「監護者」とは、婚姻中・離婚後も一貫して父親を唯一の親権者と規定する戦前の民法において、離婚後、親権者である父親が子の監護をできない場合、いわゆる「乳母」として、親権者ではない母親に子を監護させられるよう設けた規定です。つまり、親権を単独で有する親と有しない親がいることを前提とする規定です。 したがって、婚姻中のみならず離婚後も父母が共同で親権を行使し、共同で監護する「共同親権制」を導入するにあたり、「監護者指定制」は、その歴史的使命を終えたと言えます。 にもかかわらず、法務省案は、そのような家父長制の残滓といえる「監護者」に監護権・居所指定権を新たに付与し、さらには、離婚後のみならず、婚姻中まで「監護者」を指定できるようにしようと図っています。時代に逆行するものであり、その点からも認めてはなりません。
以上の理由から、我々は、「羊頭狗肉」の法務省案が修正されるか否かにかかわらず、下記2点の要望を踏まえた形で民法などの改正法案が国会に提出されることを政府及び与党に強く要請します。 この2点の要望は、自民党法務部会「家族法制のあり方検討プロジェクトチーム」の提言(別添1)趣旨にも沿ったものです。 また、この自民党の提言は、本年5月31日に自民党政調会長に手交された民間法制審議会家族法制部会(北村晴男部会長)作成の中間試案(別添2、以下「民間案」)を反映したものと聞いています。 民法などの改正法案の作成作業は、この民間案を反映した自民党の提言をもとにして実施すべきと考えます。 併せて、判検交流制度により法務省に出向中の裁判官らが、民間案を反映した自民党の提言を踏まえず、現行の法務省案に基づき民法などの改正作業を強行しようとする場合には、判検交流制度を直ちに停止し、裁判官以外の者により法案作成作業が進められることを政府に要望します。

1. 父母の離婚時に、父母の協議のみで一方の親を単独親権者と認めたり、婚
姻中の親権剥奪事由とは異なる事由で、父母の意思に反し、裁判所が父母
の親権を剥奪することを認めたりする法務省案に代わり、民間案が提案す
るように、離婚に伴い、親権を適切に行使できないやむを得ない事由が生じ
る場合に限り、裁判所の許可を得て、父母の一方が親権を放棄できる規律
を制定すること

2. 父母の一方を「監護者」と定めることを認める法務省案に代わり、民間案が提案するように、「監護者」に関する規律を設けることを一切禁止すること

共同養育支援法 全国連絡会HPから

(参考)
現行民法の親権放棄を定める規定(837条)

第八百三十七条 親権を行う父又は母は、やむを得ない事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を辞することができる。

2 前項の事由が消滅したときは、父又は母は、家庭裁判所の許可を得て、親権又は管理権を回復することができる。

現行民法の親権剥奪を定める規定(834条)

第八百三十四条 父又は母による虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するときは、家庭裁判所は、子、その親族、未成年後見人、未成年後見監督人又は検察官の請求により、その父又は母について、親権喪失の審判をすることができる。ただし、二年以内にその原因が消滅する見込みがあるときは、この限りでない。

戦前の旧民法の家族法制を定める規定(732条など)
第七百三十三条 子ハ父ノ家ニ入ル

第七百三十九条 婚姻又ハ養子縁組ニ因リテ他家ニ入リタル者ハ離婚又ハ離縁ノ場合ニ於テ実家ニ復籍ス

第七百八十八条 妻ハ婚姻ニ因リテ夫ノ家ニ入ル

第八百十二条 協議上ノ離婚ヲ為シタル者カ其協議ヲ以テ子ノ監護ヲ為スヘキ者ヲ定メサリシトキハ其監護ハ父ニ属ス

第八百七十七条 子ハ其家ニ在ル父ノ親権ニ服ス

第八百七十九条 親権ヲ行フ父又ハ母ハ未成年ノ子ノ監護及ヒ教育ヲ為ス権利ヲ有シ義務ヲ負フ

現行民法の家族法制を定める規定(766条など)
第七百六十六条 父母が協議上の離婚をするときは、子の監護をすべき者、父又は母と子との面会及びその他の交流、子の監護に要する費用の分担その他の子の監護について必要な事項は、その協議で定める。この場合においては、子の利益を最も優先して考慮しなければならない。

第八百十八条 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2 (略)
3 親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。

第八百十九条 父母が協議上の離婚をするときは、その協議で、その一方を親権者と定めなければならない。

第八百二十条 親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。

第八百二十一条 子は、親権を行う者が指定した場所に、その居所を定めなければならない。

第八百二十四条 親権を行う者は、子の財産を管理し、かつ、その財産に関する法律行為についてその子を代表する。

共同養育支援法 全国連絡会HPから

この要望書が提出された日は自民党法務部会が開催された日で、要望書は部会で配布されています。

反面、法務省法制審議会は日弁連(日本弁護士連合会)で法務省法制審案を説明。日弁連は法務省法制審案に賛同する事を決めたようです。

令和4年7月29日付の朝日新聞朝刊で自民党法務部会が開催された事が記事になっています。しかし残念ながら、「民間法制審議会家族法制部会中間試案を勝手に支持する弁護士の会」(130名)の要望書については記事になりませんでした。

自民部会、子どもの親権めぐり論点整理

 自民党法務部会は28日、離婚後の子ども養育のあり方をめぐり、法制審議会(法相の諮問機関)の部会がまとめた「共同親権」の導入と、現行の「単独親権」の維持を併記する論点整理について議論した。出席者によると、「原則、共同親権にすべきだ」との意見が出たものの、現行のままでよいとの意見は出なかったという。
 今の民法では、父母が婚姻中は双方が親権を持つが、離婚後は一方に決めなければならない。法制審議会の部会は19日、離婚後の共同親権を法改正で実現する案と、現行法のまま単独親権を維持する2案を併記した。

令和4年7月29日付 朝日新聞から引用

私は130人の弁護士さんと同様に民間法制審議会の方を推しています。少なくとも法制審議会案は全く賛同出来ません。法制審議会の動き、民間法制審議会の動き、自民党法務部会の動き、共同養育支援議員連盟の動きに注視し、自身で出来る事に取り組んでいきたいと考えます。

また、法制審議会の動き、民間法制審議会の動き、自民党法務部会の動き、共同養育支援議員連盟の動き、日弁連の動き、有志130名の弁護士さんの動きは本来大きな話題になってもおかしくないニュースなのではと感じます。テレビや新聞で適切な報道がされる事を望みます。

サポートは別居や離婚を経験した子どもの支援に活用させていただきます。宜しくお願い致します。