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初めての出産、の前の外回転術

外回転術って知ってますか?

外回転術とは、簡単にいうとお腹の中で逆子になった赤ちゃんをお腹の外から回して逆子を治す手術だ。これによって帝王切開分娩を回避出来る。決して帝王切開だけがリスクが高いというわけではない。10人の妊婦がいれば、10通りの出産があっていい。私の場合は、自然分娩を希望していた。ただそれだけだ。

長男を妊娠している時、妊娠後期と言われる28週から35週まで逆子だった。検診で逆子と分かってから、毎晩逆子体操をした。逆子体操とは、うつぶせになり膝を立ててお尻を高く上げて15分間そのままの状態でいるストレッチのようなもの。
妊娠してなけば、ヨガの猫のポーズに近いので気持ちいいのだろうが、お腹が大きくなった妊婦には結構きつかった。正直、普通に寝ててもしんどいのにこの体勢?と思いつつも毎日欠かさずに行った。しかし頑張りも虚しく、赤ちゃんは相当な頑固者のためか一向に逆子のまま。初めての妊娠でどうしていいか分からず、逆子のまま里帰り出産の産院に移った。産前休暇に入った出産予定6週前の事である。それまで検診を受けていた病院では勧められなかったが、出産を予定している産院の先生から外回転術を勧められた。先生から、『まだ逆子でも問題ない。でも、35週過ぎたら外回転術を希望しますか?上手な先生を紹介できますよ』と。外回転術??何それ?である。見かねて先生が説明して下さった。しかし、説明を聞いても全くイメージが湧かなかった。家に帰ってからネットで調べた。ネットでも、お腹の上から赤ちゃんを回すと書いてある。そんな事出来るんだ!と驚きつつも、不安なため更にネットで情報を漁った。やり方は分かってきたけど、本人体験談とか成功事例が殆ど見つからない。胡散臭さが増すばかり。悪阻が終わって優雅なマタニティーライフを送る予定だったのに青天の霹靂。毎日の逆子体操、ネットで外回転術の事例を必死に検索、週一回の検診…。全然心が休まらず(笑)

そんなこんなでいよいよ先生から外回転術を勧められた。勧められた病院は、なんと祖母の家の近くで昔から(立地だけ)知っている○○病院。なんだか急に親近感が湧いて、お願いすることになった。早速○○病院に行き、外回転術が上手な先生から説明を受けた。先生は、今まで何人も外回転術を成功させているとの事。良かった(心の声)。
施術は、2泊3日の入院。施術の前日からお腹の張り止めを点滴し、当日は分娩台の上で施術する。もし失敗したらそのまま緊急帝王切開になる。念のため施術を受けた日も入院する、と説明を受けた。費用は数万円で保険の対象と説明を受けたが、確か3万くらいだったような気がする。施術に伴うリスクなどの説明も受け、初診の後すぐに手術の予約をした。同意書にもサインした。この時、妊娠35週だった。その病院は、今では珍しく無いが3Dエコーも撮ってくれた。その写真は今でも大切にとってある。
さて、入院日。その日は、お腹の張り止めを抑える点滴を受けるだけだった。事前にナンクロの雑誌を買っていき、病院食やおやつのケーキなんかを嗜んでいた。しばらくすると、お箸が上手く持てない。手が震えて、ナンクロのマスが塗れない。あれ?っと思って看護婦さんに聞いてみたら、『点滴の副作用ですが、正常なのでこのまま点滴進めますね』との事。えっ?正常なの?これ。明らかに体の末端が小刻み震えてるんですけど。
病室の4人部屋には、私の他にもう一人妊婦がいた。その方は、早産で妊娠初期から入院してる。何ヵ月も前から毎日この点滴を受けていますよと説明された。そういえば、彼女は移動はすべて車イスで腕には無数の点滴痕…。もうね、文句を言えなくなりました。赤ちゃんを身籠るってすごいね。お母さんが強いはずだわ。結局、その日は震えと動悸で寝れませんでした。

そして手術日当日。手術室に車イスで移動した。確かに立てない。手術室には、施術する先生と看護婦さんが二人。医学生二人。事前に医学生が見学して良いですか?と看護婦さんに聞かれた。ちょっと嫌だったけど、『はぁ』と軽く返事をしてしまった。こっちは、緊張してるし、動悸が激しいし、寝不足で頭はぼんやり。

さて私は、分娩台に乗っていつでも出産できるあのポーズでスタンバイ。看護婦さんは、横にいてお腹にエコーを当てて赤ちゃんの頭の位置を確認。もう一人の看護婦さんは明らかに出産の準備をしていた。先生は私の上に乗り、お腹の上から赤ちゃんの頭の位置を確認。頭のすぐ下に胃があって、『胃に頭が引っ掛かって赤ちゃんが頭を下にできないみたいですね。ここを避けて回しますね』そしてすぐ『じゃあ行きます』と先生。ぐっと手をお腹に差し込む。…失敗。
『もう一回だけ行きますね』と直ぐ様再びチャレンジ。ぐにゅんという赤ちゃんの頭が胃に当たって回った感覚があった。痛みはほんのちょっと。『はい、成功です』と先生。病室に時計があったが、手術時間は約10分程度で終了。何事も無かったかの様にまた車イスに乗り病室に戻った。

えー!!
マジー!!
治ったのー!!
先生すごー!!
である。

翌日、普通に歩いて退院。
翌週36週の検診。産院の先生に外回転術が上手くいったことを報告。『良かった。でも、エコーを見ると頭の大きな赤ちゃんだから、このまま40週までいくと帝王切開かも』と。

なぬー?!
またもや危機が迫る。

その産院では、マタニティーヨガをやっている。逆子などではない経膣分娩予定の妊娠は、検診の後にヨガを受けられるようになっていた。ずっと受けたかった。優雅なヨガを受けつつ、やっと憧れのマタニティーライフがスタート。しかし、頭にはまた帝王切開の文字が過る。ヨガの講師の先生が、『土日に生まれて来て欲しいとか、理想の出産があったら毎日赤ちゃんに話しかけると良いですよ』と教えてくれた。早速、その瞬間から『早く生まれろ~生まれるなら土日にして~(主人が立ち会い希望。サラリーマン)』と念じた。翌日金曜日夕方、なんと破水。そのまま入院し、土曜日の明け方に立派な頭の男の子を出産。初産で7時間の超安産(笑)

嘘みたいな本当のお話し。

妊娠って不思議。
赤ちゃんはもっと不思議。
妊娠初期は悪阻があって辛かった。
生んだ後もずっとずっと大変だった。
けど、今では全部良い思い出だ。

長男は今年で12才になった。
まだまだ可愛いけど、しっかりしてきた長男。相変わらず意味不明な行動が可愛すぎる次男。そんな息子達を見て、生んで良かったなーと思えるこの時が幸せ。

色んな妊婦がいる。
色んな出産がある。
色んなお母さんがいる。

自分がちゃんとお母さんをやれてるかなんて分からない。でも、今日も子供達を抱きしめる。