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生きる#22 集落を生かし続けるために

鳥獣被害対策の繁忙期に入りました。

春先に出産した雌イノシシの子どもがそろそろ乳離れをし、親が餌場を教える季節。
今、山には食べ物があまりなく、人里に降りて来はじめます。

一方で、田んぼには頭を垂れた稲穂が見え始める頃。
今イノシシに田んぼに入られると出荷できなくなるため、農家さんはこれまで以上に目を光らせているのです。

そういう事情が重なり、8月、9月は鳥獣捕獲件数が増えます。

しかし、それはまだ体力のある地域の話。
『地域の体力』…表現が難しいのですが、『農業である程度稼ぎを作っている人』と、『技術のある捕獲者』の存在があり、
かつ両者の間に信頼関係が結ばれていてはじめて、有害鳥獣捕獲が成り立つのだと、改めて痛感しています。
そして、鳥獣被害対策に向けて動ける体力のある地域は、今後どんどん減っていくのではないかと思うのです。

先日伺った某集落は、過去10年で急激にイノシシの分布が広がった地域。
また、少子高齢化が進み、集落の人口は年々減っています。
『農作物被害』も家庭菜園のスイカやトウモロコシなどの被害がほとんど。
一度イノシシやアナグマにやられると、そのショックから「来年はもうやらない」と言われるケースも多いそう。

家庭菜園が高齢者の生きがい・にぎわい作りになっているという声も多く、鳥獣被害は精神的なダメージが大きいように感じます。

野生鳥獣が増える(よく遭遇する)

生態や対策の知識が無いとただただ恐怖

家庭菜園など農作業の意欲減退

いきがいやにぎわいの喪失

高齢者の引きこもり助長

集落全体の機能低下

このように、農業被害額では計れない負のスパイラルに陥ってしまう…と危機感を覚えました。

実は、この集落のある町にはわたしの義実家があります。
町の昔話を聞くことも多ければ、一方で親類からもイノシシの相談を受けることも。

人口減の一途を辿る日本。
今後消滅していく集落を食い止めることは難しいのかもしれません。
しかし、「どうにかしたい」と直接相談くださった人達の顔が浮かび、「なんとかしたい」というわたしのスイッチが入ります。
山が迫ってきていても、そこにはまだ人々の営みがある。

自分の故郷の風景も浮かび、心はザワつきます。

忘れもしない思い出。
もう亡くなった祖母が、私たち孫のためにと作ってくれたスイカをイノシシに全てやられてしまった。
いつも穏やかで寡黙な祖母だったが、あんな悔しそうな顔を見たのは初めてでした。

もう20年以上も前の話だけど、何故だか急に思い出されました。

地元の風景です

鳥獣被害対策の基本は、
①防除
②環境整備
③捕獲

と言われています。

しかし、野生鳥獣に免疫の無い地域は
まず、
動物の生態を知る
このことからスタートです。

来月から、地域に出向いての鳥獣被害対策研修会が始まります。
加害動物の生態を知り、個人で出来ること、ご近所でできること、地域ぐるみでできることを考えていきます。

捕獲だけに頼らない鳥獣被害対策は、
「イノシシを無駄に獲らない・無駄に埋めない」
という、私が叶えたい世界にも繋がります。

今、地域の方が『イノシシ』というキーワードで立ち上がろうとされています。
高齢な方も安心して趣味の野菜作りに取り組んでいける生きる集落を残していくべく、サポートができればと思います。

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