中1の子にこんなことを喋らせるなんて
[これの続きです]
タクヤお兄さんについて、アサミは話を続けます。
水中カメラを欲しがっているというお話ですが、本テキストの本当の狙いは、ここ。
主語が「He」(彼)なのに、赤でマークした動詞は、活用していないわけです。否定形だから。
おとなになった今、振り返ると「かんたんじゃん」と思うでしょうけど、中1でこれを習ったとき、皆さん戸惑いませんでしたか? 今の中1課程でも、ここはちょっとした山場です。
そのため、少々不自然な英文が混ざってしまっています。
he can't take pictures in the sea (?)
これ、文脈にも寄るのですが、こんな風に聞こえる(読まれる)おそれがあります。
彼は海での撮影が許されない
「can」は「できる」と私たちは習います。今の中1生も小学校のうちにそう体で覚えさせられます。
本当は違うのです。「can」はもっとフレキシブルに使われています。「できる」の意で使われるほうが少ないぐらいです。
「can’t」も「できない」の意で使われることはむしろ少なくて、「したくてもそれが許されない」とか「とてもありえない」とかの意のことのほうが多いのです。
アサミはきっと「兄は海の写真をふだんからブログに載せまくっているが、海中の撮影については、そのためのカメラを持っていないので、できないでいる」と言いたいのでしょう。すなわち
Although his blog is filled with photos of the sea, he also wants to capture underwater images and is seeking a special camera to do so.
(兄のブログには海の写真がいっぱいありますが、海中写真も撮りたがっていて、いい特殊カメラを欲しがっています)
とでも手を入れれば、伝わる英文になるのですが、中1のこの段階でこのレべルのものはとても教科書に載せられないので、
タクヤは普段は自分のブログに写真を載せるのだが
しかし海で撮るわけにはいかない。
水中カメラを持っていないのだ、
そこでひとつ欲しがっている。
ウワァァ-----。゚(゚´Д`゚)゚。-----ン!
いえ、教科書作成者が好きでこんな英文を用意したわけではないのは、よっく理解しています。否定形のとき動詞は原型に戻るってことをテキストで示すには、そうするしかなかったのだって、よーくわかってます。
後でまた論ずるつもりですが、日本の中学英語教科書、とりわけ中1用のは、青春ストーリー仕立てにするのが70年以上にわたってお約束になっているため、英文がどうしても背伸びせざるをえないのです。
新課程でさえ、中1の9月ぐらいでは、お兄さんのことを語るには語彙も文法知識もとても足りません。
足りないのに、そういうお話を語らせないといけない。
そのせいでこんなおかしな英文が、堂々と掲載されてしまうのです。
[続く]
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?