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天才ディラック(24歳)の1926年論文を解読するのだ・その6

⇧これの続きを語ろうではありませんか。


見た目は難解そうですけど、よく見ると手の運動です、式の変形。


六ページ目へ。第二章はこのページの末で幕引きです頑張って解読していきましょう。

赤で囲んだここで、ポールくんは「どうや、ハイゼンベルクの行列とちゃんと同じ形になったやろ。ということはぼくの仮定はどれも正しいのだ」と(淡々と)勝利宣言その1をしています。ただ…

「エルミート性を持つことの一般的証明は現段階ではお手上げであるが、以下のような特定の形式であればエルミート性を持つことの証明はたやすい」


そして、赤で括ったところで、鋭いことを指摘しています。もし $${W_n}$$ が虚部を含むと $${ψ_n}$$ が $${t}$$ が無限大のとき非有界になってしまうことを考えると、$${ψ_n}$$ に掛けられる定数は一定の条件が課せられないといけない、と。


どういう条件かというと、ここでこんな風に語っています。「要はこんな式になってればええんですわ」

「こう置けば、エネルギー、角運動量、その他の積分定数に対して定まった値を持つ原子系の定常状態を表す固有関数が作れる。以上」


無駄のないスタイルで、最短距離で語っていくポール・ディラック語法です。私流にアレンジしてありますけどね。自分は適当に道草するほうが頭がよく回る頭なので、彼の論文には憧憬とともに反面教師的な感情も湧いてきます。「そんな道草いらないからさっさと話を進めなさい」 そうですかそうですか。


ここが第二章の最終段落です。「ここまでの議論は特殊相対論には対応していないので、そうする場合は $${t}$$ を $${t-x/c}$$ として立式すべきやね」「本章での理論は、電磁気学に応用できる気がする」と、その後の彼の歩みを予感させる締めくくりです。


うわーん全17頁の論文のようやく6ページ目のほぼ終盤まで解読がようやく進んだよパパン。ポールくんは物理学的解釈よりも数式の簡明さを尊ぶひとだから、アインシュタインとは対極的ともいえます。

なんというか、脂汗を流さないひとって感じ。淡々と進んでいくと、山のてっぺんについちゃった、みたいな。


つづくのだ ⇩

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