銀河鉄道999に仕掛けられたモンキーマジック(追悼、松本先生)
父を亡くした時の気持ちが、訃報とともに蘇ってきました。それを振りきりたくて、先日後輪を修理してもらった自転車のペダルをこいで、中学生のとき私に永遠のダメージを与えてくださった暗黒卿の墓まで行って帰ってきたところです。昨日の午後のことです。訳の分からない話ですみません。
今回はあの曲の分析をします。あれです。タケカワさんの天才ぶりがさく裂する、あの歌です。
♪ ドレミファソラシドレ~
これが基本ですあの歌は。「レ」までは駆け上がるけれど、それ以上には行けない。しかし山場ではついに「ミ」に突き抜ける。
♪ A **journey** to the stars
この「ジャニー」のところで「ミ」に突き抜けるのです。
この曲は、よく聴くと「ド↗レ」のフレーズが鍵だとわかります。歌ってみてください。
♪ さあゆく~んだ
(ド↗レミ~ファソ)
この後、旋律は「レ」まで駆け上がるのだけれど、そこからさらに上には行けないで一つ下の「ド」に一旦着地します。
この後長二度下に転調して、
♪ あの~ひと~わも~お
(ソド~ド~ド↗レド~ソ)
♪ みつめて~る~
(ラドラド↗レ~)
元の調に戻って、
♪ A **journey** to the stars
(ド、*ミ* ド~ドレド~)
「ド」から1オクターヴをさらに跳躍して「ミ」に一気に飛び上がり、三度下の「ド」に着地する。このとき伴うは、堂々のメジャー・トニック和音。軌道に乗って、どこまでもばく進していくイメージ。
和声進行についても非常に心憎い技がさく裂しています。ひとつは The Beatles (というかポール・マッカートニー)の代表曲「Yesterday」と同じ技です。
♪ Yesterday, all my troubles seemed so far away
これ、冒頭の「いえすたでぃ~」はふつーで、この後いきなり悲し気になるわけですが、音楽用語で「平行調転調」という技の効果です。詳細は省きますが、同じ技をタケカワさん使っていますここで。
♪ さあゆくんだ、そのかおをあ~げて~
「さあゆくんだ」は長調なのですが、「そのかおを」で短調に切り替わるのですよ。平行調転調の技です。夜空に駆け上がるものの、不安や怖れの気持ちがそこには伴うイメージ。
しかし終盤では堂々の長調で、彼は歌い上げる。長調の象徴「ミ」に向かって。
♪ The Galaxy Express 999 will take you on a journey, a never-ending journey, a journey to the stars
簡略に言い切ってしまうならば、♪さあゆくんだ(ドレミファソ)の「ミ」は「男の子」を象徴し、♪ジャニー(ミド‘~)の「ミ」は「男」になった様を歌っているのです。
1オクターヴ高い「ミ」、それは男らしさの「ミ」。「レ」は999を表し、「ミ」は1000への桁上がりを象徴…と語ると何だかかっこいいのだ。
この曲について、松本先生はあるテレビ番組で「ぼくらのとは違うマジックを(彼らは)使った」と総括したのがとても印象的でした。
さよなら零士先生。今となっては何もかも愚かで不公正で傲岸で不安で絶望で、その裏返しで夢いっぱいだった、あの日の私に代わって、あなたに別れの挨拶を送ります。
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