見出し画像

エレン先生、虚数について語ろう

数学の話をします。なんですその嫌そうな顔は。虚数についてです。

なんですそのさらに嫌そうな顔は。

虚数ってなんだべ? という素朴な問いに、皆さんならどう答えてあげますか。検索してみたら Yahoo Japan の「知恵袋」にこんな回答がありました

ちなみにどれもつまんないです。面白くもなんともない。

ウィキペディアの「虚数」にも目を通してみました

感動的につまらないです。

そこでこの私が、多少はつまらなくない、そこそこ面白く「虚数」について語ってみます。

まずはこれをご覧ください。

「線?」 

線です。びよーんと横一文字。

これをですね、ものすごく小さい円が、横一列に並んでいるとみるのです。

「みえない」 

心の目で見るのです。いいですか心の目です。

このものすごく小さな円を、もっともっと小さくしていって、それと同時に、円の数が横一列にどんどん増えていく様を、心の目で眺めてください。

「想像しろってこと?」

イマジンですイマジン。心の目でぐっと眺めるのです。

もし、無限に小さい円というものがあるならば、この線は、無限小の円が横一列に無限に並んでいる様ってことになります。

「無限に小さいのなら、消えちゃうってことじゃないの?」

消えはしません、そういうのは「点」といいます。

いいですか無限に小さい円が、無限にぎっしりと並んでいると考えるのです。どんなに顕微鏡で拡大しても見えない、そういう小さな円が、横にびっしり並んでいるのがこれだって、眺めるのです。

これは心の目で見るべし。数学はこの「心の目」が大切です。コツさえつかめば使いこなせます。リラックスリラックス。

ここでこんな疑問がわいてくると思います。「無限に小さい円を、横一列に並べて線分にするのはいいとして、線ってたしか『幅』が存在しないってことになってたんでないの」と。

実はこのもっともな疑問というかパラドクスを解消するために発明されたのが「虚数」なのです。

こんな風にですね、真横方向については「実」(real)つまり現実に即したものと考えて、縦方向についてはまぼろし、つまり「虚」(imaginary) と名付けて、いちいち「幅」としてカウントしないと規約化してしまうのです。

「ずるいやん」 

数学においてはずるいということばはありません。全体でつじつまが合うのなら、それで真とされます。

チョークやマジックペンでさーっと線を引いて「ほらここに無限小の円が並んでいますよー」と開き直るのです。

いいですか「心の目」で見るのです。完全に空想であっても、全体でつじつまがあっているならばそれは真です、それが数学というものです。しつこく言っておきます。

ここには「無限小」という考え方の芽があります。「無限に小さい円」は「何もない」ではなく「点」と呼び、「線」があったら、「無限に小さい円」が並んでいる…この発想の転換によって、数学は飛躍的進歩をとげて現代に至っています。

要は「線があったら、無限に小さい円が並んでいる」と空想してみましょうってことです。

そして、この小さすぎて見えない円を「心の目」で見るようにすると、いろいろ面白い世界が広がっていくのです。

いいですかこの円は「無限に小さい円」です。この無限小円においては、タテ方向はカウントしない。

「赤の矢印?」

まあね。この「虚数」の考え方を受け入れると、「線を無限小の円の連なりとみなす」変てこなゲームが、うまく成り立ってしまうのです。

「そのゲームは、どんな面白さがあるの?」

面白いというか、数学における他のいろいろな謎現象が、きれいに説明できてしまって気持ちよくなるのです。

かつてはバラバラに謎現象だったものが、「無限小の円は点と同じ」理論を使うと、破綻なく説明できてしまうのですよ。

この理論を成り立たせるために持ち込まれたのが「タテ方向はカウントしない」規約でした。

「ひょっとしてそれが『虚数』?」

正解。

あるゲームを成り立たせるために、ルールブックにひとつ追加された規約と考えればいいのです。

カウントされない、まぼろしの次元とでもいうのかな。

実際、この規約が追加されたことで、数学というゲームは、とんでもなく壮大で、それでいて整理されたものに進化したのでした。

ちなみに名高いスティーヴン・ホーキング教授も、虚数大好きマンでした。

これを使うと、創造神を仮定しないで、宇宙の誕生を説明できてしまうぜっと宣言して、その後本を書いたら世界的ベストセラーになりました。

ロマンですね。



まとめ

  • 「円」を無限に小さくして「点」と見なす

  • 「点」を切れ目なくびっしり並べて「線」と見なす

  • 「点」は「無限小の円」とみなしてみよう

  • そうすれば「線」は「無限小の円」が切れ目なくびっしり並んでできているとみなせる

  • 数学の考え方では「線」には幅がない

  • だが「無限小の円」の切れ目なくびっしり並んだものは「無限小の幅を持つ線」となって矛盾してしまう

  • そこでこの場合の「幅」については虚(きょ)として別カウントにしてしまおう

  • これは円(二次元)を線(一次元)に押し込めるための裏技

  • この裏技は「無限小」の世界ゆえに可能となる

  • これが「虚数」理解の出発点


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?