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Ryuichi's Three Laws (彼の三法則)

1オクターヴを12に区分する、すなわち12の音で1オクターヴという仕組みは、西洋人が理屈をこねて作り上げたものです。

これがずらーっと横に並んだのが、ピアノの鍵盤です。

どうして白と黒がこんな風に並んでいるのかというと…検索して調べておいてください。簡単にいうとこうすると「移調」しやすいからです。

12の音があって、文明人はそのうち「七音音階」と呼ばれる音列を使い、そうではない文明の者たちは「五音音階」を使うのだと、やがて図式化されました。七音音階とは「ドレミファソラシ」のことです。五音音階は、しばしば東洋音階とも呼ばれます。詳細は省きます。東洋人はこの音階を使うのだと、西洋人は図式化しました。

東洋の国が、西洋の文明を吸収し、やがて西洋の音楽を学び取って、西洋スタイルの音楽を作るようになると、西洋人はそれを奇異に感じました。「お前ら東洋人なんだから東洋の音楽をやれよ」と。

これってふざけた話です。ひとが苦労して西洋の衣服を着こなせるようになったところに「お前らなんで民族衣装を着ないんだ?」と西洋人に真顔で聞かれたら、誰だってバカにされた気がしませんか。日本の服飾デザイナーたちは、こういう素朴なヒエラルキーに抗うために、西洋人が夢想する「東洋」あるいは「日本」イメージをうまく織り込んだ服飾を工夫し、ブランドとして認められていったのでした。

音楽に関しても同種のヒエラルキーがあります。日本の音楽家が七音音階の曲を作ると「お前ら東洋人なのに東洋音階を使わないのはなんでなんや」と不思議がられるのです。

この不公正なヒエラルキーを逆手にとって欧米進出を図ったのが、この方でした。


彼はある技で、このヒエラルキーに挑みました。ひとつは右手と左手で、異なる調を奏でるという技です。

もうひとつは、三つの「東洋音階」を縦横無尽に使いこなす技です。

緑が「ミ・ソ・ラ・シ・レ」、青が「レ・ファ・ソ・ラ・ド」、赤が「ラ・ド・レ・ミ・ソ」の五音音階です。この三つを「調違いの東洋音階」と解釈して、ひとつの曲の中で使いこなすのです。こんな風に。

 ① 左手が赤の調を奏でるとき、右手は緑音階を奏でる。
 ② 左手が青の調を奏でるとき、右手は赤音階を奏でる。
 ③ 左手が赤⇔青の調、同時に右手が青⇔赤の音階を移るとき、曲全体がそこで転調する

この三つの法則を使いこなせば、七音音階を奏でても五音音階のニュアンスを保てるのです。

そうやって作曲されたのが、この二本の映画のメインテーマでした。


こんなシンプルな三法則で、彼は「世界のサカモト」に成り上がったのです。


この法則を見つけだしたのは、世界でおそらく私が最初です。コードネーム理論がわかっていれば誰でも見つけられる、ごく素朴なものです。

数理物理学者になりたいとぼんやり夢見ていて、その後つまらない行き違い続きでその夢を潰された私の、ささやかな意地の表れですこの発見は。

ゆくぞ。







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