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小5の英語教科書に目をとおしてみたら(1)

2020年といえばコロナ騒動が世界規模で広がっていった年でした。トランプが大統領で安倍が首相でトーキョー五輪がこの夏に予定されていて、ゴールデンウィークはどこの観光地も事実上立ち入り禁止になって、夏には小康状態になって気が緩んだところに冬に向かって感染拡大していった、そんな年。

奇しくもこの年、日本の小学校では全教科のカリキュラムが改訂されています。改訂は数年一度行われるのですが、この年には抜本的な改訂でした。とりわけ大きく変わったのは英語の授業が、小5スタートに改められたことです。それまでは小5~6にかけて「外国語活動」の名目で英語の学習が行われていたのが、小3~4に繰り上げられて小5~6生ははっきりと英語の授業があてがわれるようになったのでした。すなわち成績が付くのです。

これで保護者の目の色が変わり、いやおうなしに "英語できない=人生の敗者" と国民規模での刷り込みがなされていくのかと思うと、そして "英語できる=人生の勝者" と今まで以上に思い込まれていくのかと思うと、今日も日本はいい天気だなーって思います。

小5~6の英語教科書、コロナ大騒ぎより以前に全社のものに目を通してはいました。とあることで先週よりそのうちのひとつにじっくり目を通しているところです。

かなり戸惑ったことを告白せざるをえません。

小5篇を昨日ラストまで再見して感じたことを以下綴ってみます。

小3~4での「外国語活動」で、すでにある程度英語、というか英語の単語にはなじんでいるという想定で教科書が開幕していますね。たとえばレッドとかブルーとかグリーンとかの色の名前。

それから外来語。サラダやサッカーなどは英語由来で、つまり日本の子どもたちはカタカナ表記というかカタカナ発音とはいえ、そこそこ英単語になじんでいるわけです。

そういう基礎体力をもとに、小5の授業開幕。

最初に戸惑ったのが、ここ。最初の単元の最初のページ。


教科書のなかの小学校。一方、実際の授業では、これらの絵のなかの対話を録音再生で生徒たちに順に聴かせて、どれがどの絵に当たるのか当てさせるのです。

当てさせる? 正しくは〇で囲まれたこれらのイラストに、番号を付けていくゲームをするようです。録音再生で最初に聞こえてきた内容にあたるものに「1」を付けて、次に聞こえてきたものに「2」を付けるという風に、です。

レッドとかレタスとかしか知らない新・小5生にいきなりそういう課題?と驚きましたが、実は裏仕掛けがあります。

ALTの先生が、転入生を紹介しています。何を言っているのかわからなくても、声を聞けばわかるわけですよ。成人女性と小学生女子の声だなって。

これもそうですね、小学生男子と小学生女子の声だって、聞けばわかる。

英語の授業というと、習う英文について、すべての単語を理解するものだと私たちは思い込んでいますが、小学校英語はそうではないようですね。文ではなく音声重視で、そして察するところから始まるのです。

右ページ下に、こんなのもあります。


これは動画を小5生たちに見せて、やはり何か察するように導くのです。おそらく名前を名乗り、その綴りを述べているのです。名前とアルファベットなら、よほどのアホの子でなければどの子も聴き取れます。

これも音声から察するクイズですね。「I like なになに」の喋りが分からなくても、「登場人物の好ききらいを聞いて、線で結ぼう」とあって、赤とか黄とか、それにバレーボールの絵とかがあるから、小5生は「I like volleyball.」と再生音声を聞けば「ばれーぼーるって聞こえるから、この絵だな」ととっとと選べるわけです。

右ページ。

アルファベットのおけいこ。いきなり「How do you spell your name?」なんて英文が出てくるのでびっくりですが、音声重視の教材なので気にしない気にしない。朗読音声で「エス・エー・ケー・ユー・アール・エー、さくら」と朗読されるのだから S - A - K - U - R - A と書き留めるぐらい、よほどのアホの子でないのなら書き留められるということなのでしょう。

ページの下半分は何のけいこかと思ったら「I」を綴るお稽古のようです。自分の似顔絵を描いて、自分の名前をローマ字で綴って、そして「I」を書いて、空欄にケーキとかの絵カードを載せるというゲームです。絵カードは教科書の巻末に厚紙でずらっと用意されているので、それを貼る(というか載せる)わけですね。「cake」とか「bread」とかは小5冒頭ではとても綴れないだろうし。

ここから実際に教室内での相互ゲームになるわけですね。おとなりの席のこと名刺交換ごっこ、みたいな。


ああいやだいやだ、小学生のときはそうでもなかったけど中学生になってからはこの手のお隣さんとのゲーム授業、大の苦手でした。こちらからは何もしないからよそから自分のエリアに入ってこないでくれみたいな感じ。個人的な思い出話はいいとして、名刺交換ゲーム、アット小5イングリッシュクラッシーズですかそうですか。

How do you spell your name?
E - M - I - L - Y. Emily.

What sport do you like?
I like soccer.

いきなり「How」と「What」を使う!? とびっくりでしたが、昔でいう「はうでぃーどぅ?」「あいむふぁいんせんきゅーあんじゅー?」「あいむふぁいんせんきゅー」のおけいこと同じものですね。とにかく耳で覚えて名刺交換ゲームとして体で覚えて、この文例でいえばアルファベットと「えみりー」と「すぽーと」と「さっかー」さえわかればええねんというおけいこですわ。

右ページについては、

このイラストから察するに、皆の前でランダムにこういうのやらされるようですね。

あーっこういうの大の苦手でした! 小学生のときはできたけれど中学では苦痛でした。小5の英語の授業はこんな風なのですかそうですか。

以下はおまけコーナーっぽい。生徒用というよりは、教科書採択用のアピール用でしょうか。冗談です。

やだなあ、小学生のときの自分が蘇ってくるようでやだな。それに、今の保護者は子どもの教科書に目を通しても狙いがわからなくて目を回してしまうんだろうなって感じました。

続く

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