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右目1.5 左目0.75

『君』と飲んだコーヒーはどこかほんのりとした甘さを感じた。
月が輝くように口角が上がってしまうような。花が咲くように目尻が下がってしまうような。幸せとも呼べる甘さを。
ブラックだったのに。


いつからだろうか。
私の世界が「彼」だけではなくなったのは。
「彼」がどんどん世界の端っこを探すようになったのは。


戻して、私を。
返して、私の目を。
盲目だったあの頃の私にどうか戻して。
「彼」の良いところしか見えない、あの目を返して。


そうじゃないと私は、『君』のことだけを見てしまう。
今の私の目だと『君』という世界しか見れない。
そんな世界で私は『君』と重なりたいだなんて思ってしまっている。


頑張らないと。
『君』を私の世界の中に入れないように。

努めないと。
『君』を世界に入れても心臓が躍らないように。

隠さないと。
『君』のことが好きだというこの気持ちを。

気付かなければ、気付くことさえなければ、きっと『君』を好きにはならないはずだから。
きっと。


私の中のどこかに存在する罪悪感を溶かしたような、真っ黒なブラックコーヒーを「彼」と並んで啜る。
「彼」と飲むそのコーヒーはとっても苦かった。
ミルクとシロップも沢山入れたのに。


苦いコーヒーを飲みながらふと想う。

『君』に会いに行きたい。

いや、これはもう違う。
正しくは

『君』の愛に生きたい。

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