緑青色の邂逅
ずいぶん先になるだろうと高をくくっていた出来事が、いきなりにして決定したのは、偶然だったのか必然だったのか。
突如入った友人の連絡により、わたし達ははじめて顔を合わせることとなった。
遊びで書いたお話が実現する日が訪れるなんてゆめゆめ思わず、不思議なことがあるものだと狐につままれた心地になった。
noteでのコラボやゲームのマルチプレイ、音声配信を何度か共にしたことがあるとはいうものの、実際に会うのはとても緊張する。
約束の日まで、そわそわと落ち着かない日々が続いた。
それは、冬にしてはうららかで、秋にしては冷えた空気が通る日のことだった。
天気は晴れ。朝早くから支度をしてこちらに来てくれる友人のために、わたしも大急ぎで用意を進めて家を出た。
淡く照らされるおひさまの光を眺めつつ、この儚げな空気は秋から冬にかけての特有なものであると感じながら、約束の場所へ向かう。
少し早めに着いてしまったので、緊張しながら駅構内を行き交う人を眺めていた。
平日だというのに駅構内は混み合い、旅行の人や出張の人など様々な人で入り乱れ、街はすっかり元の調子を取り戻したように感じられた。
スマートフォンを握りしめながら、彼女の連絡を今か今かと待つ。
すると、メッセージボックスに反応がつき、到着したとの連絡が来た。
彼女の好きな色を頼りに1人の女性に近づくと、緊張をにじませながらわたしの顔を窺った。
「ゆうらさんですか?はじめまして、xuです!」
イメージカラーである黄色のダウンを羽織った彼女は、わたしの声に気が付くと心底うれしそうに笑ってくれた。
他人と目を合わせるのが苦手なわたしは、じっと見つめてくれる彼女の目線が恥ずかしくて幾度と目をそらしてしまったけれど、忘れないようにと刻み込むように向けられたまなざしは、不快ではなくどこかむず痒かった。
ある程度行く先は決めていたので、彼女にとっては慣れない土地を丁重にエスコートする。つくづく、都会に比べるとわたしの地元の中心部は、狭くて古臭く感じた。
久しぶりの満員電車と特定の路線に、良くない兆しが見え隠れしていたけれど、周りに迷惑にならないよう彼女とぽつり、ぽつりと会話することで気分を紛らわす。
電車を降りると、途中の駅のコインロッカーに彼女の荷物を預け、昼食の場所へと向かった。
せっかくなら、と意気込んでセレクトしたお店は意外にも小さく、相席のような形で少しショックを受けた。もう少しゆっくりしたかったのに。
昼食時ということもあり、社員食堂のようなあわただしさが流れていたが、定食屋のおばちゃんのような店員さんにほっこりした。
久しぶりの味噌カツに舌鼓を打ち、一息ついたわたしたちは次なる場所へ移動することに。
マスコットキャラクターであるブタに気を取られる彼女が可愛かった。あと意外にも食べるのが早かった。
次に向かったのは、お茶をする予定のカフェ。
わたしの中ではそのカフェは人気で、ひどいときでは2時間程度待たされると記憶していたので、先に混雑状況を確認しておこうと思ったのだ。
(確か、名前と電話番号を書いておけば、外出してよかったと思う。)
昼食のお店でしくじったわたしだったが、ここでもやらかしてしまった。
なんと、お店はぜんぜん空いていたのだ。
店員さんにも恥ずかしい思いをさせてしまったであろう。なにより、わたしのその記憶は、3年も前の話だったのだから。
赤っ恥をかいたわたしはそのまま、彼女を連れて逃げるように家電量販店に足を運んだのであった。
今回の邂逅は彼女を案内するという目的もあったが、この地方は特にめぼしいものがあるわけでもないので、せっかく中心部に来たということもあり、滅多に見ることのできないゲーミングデバイスを見させてもらった。
やはり繁華街に比べるといささかラインナップは劣るが、それでもゲーミングデバイスの普及は確かで、小さいながらも特設コーナーが作られている。
試し打ちしたかったゲーミングキーボードはあったにはあったのだが、打鍵感が気に入らず、むしろ光らないメカニカルキーボードの方が打ち心地が良かったことに少し悔しくなった。
それからゲームコーナーで、新作のゲームを買おうかどうかに頭を悩ませる。彼女と一緒にやることができるからだ。
しかし、最近ブラックフライデーで機材などを購入したばかりでお財布は寂しく、また放置されてる積読ならぬ積みゲーがあることから、泣く泣く断念した。
(わたしが購入できる頃には彼女はとっくに飽きてしまっているかもしれない。)
そんなこんなで家電量販店を出たわたしたちが向かったのは、件の新作ゲームのキャラクターたちのグッズが売られている夢のようなお店。
彼女の好きなものといえばそれだったので、都会のものと比べるとおままごとのような店のサイズではあるが、案内することにした。
新キャラのオブジェクトやぬいぐるみたちを見ていると、わたしも心がほころぶのを感じる。それと、彼女は推しキャラを連れてきていた。かわいかった。
平日なのに賑わいを見せる店内を見ていると、長く続くゲームではあるのに人気が衰えないのはすごいものだなぁ、と感心する。
あと、店員さんのホスピタリティが高く、某夢と魔法の国に来たかのような錯覚をするほどだった。
帰り際に見かけたクレーンゲームが、600円で確実に取れるという代物だったのだが、いかんせん欲しい景品が他のぬいぐるみに下敷きになっており、配置替え不可と記載されていたのであきらめた。
(後日ゲーセンで同じものを見つけたが、到底確立機と呼べないほどの難易度だったので断念。2000円を失った。)
昼食がかなり多く、カフェでお茶するほどのおなかの余裕がなかったわたしたちは、多くの雑貨が売られているお店にも足を運んだ。
キャラクターグッズを見たり、クリスマスの特別催事に胸を躍らせたり。
ぬいぐるみにももふもふ癒された。
そうこうしていると、長時間歩き回ったこともあり、2人とも疲れてきてしまったので、お茶にすることに。
目星をつけていたカフェは、まぁまぁにぎわっていたが、スイーツも残っていて十分に満喫することができた。
わたしはガトーショコラ。彼女はプリン。ドリンクは2人でお揃いのリンゴジュースを頼んだ。どれもおいしかった。
少し話を弾ませていると、いつの間にかお客さんがいなくなっており、わたしたちだけが取り残されているのでお暇する。
時間もいい時間だったので、それぞれ帰路につくことになった。
(彼女は家ではなくホテルだったが)
件のキャリーケースを預けているコインロッカーまで、彼女を案内する。
いくら彼女が都会っ子だとはいえ、ここはあまりにも入り組んでいるのもあり、最後の最後まで彼女をエスコートしたかったからだ。
コインロッカーの前につくと、急に寂しさがこみあげてくる。
わたしたちはもう、立派な”友達”になったのであろう。
ぎこちなく別れの言葉を紡いで、彼女とお別れする。
どうか、無事にホテルまでたどり着けますように。
どうか、この旅行が素敵なものになりますように。
そう祈りながら、すっかり暗くなった街に紛れ込んでいった。
このように、noteでのオフ会のはじめては彼女にささげた。
他の方に誘われていくかと問われると、正直わからない。人見知りがひどすぎるので、その方との関係値によると思う。
けれど、1対1は難しくともわたしに会える方法がある。
それは、文学フリマだ。
ミムコさんに、縦スク文庫が素敵なので何か媒体にできないか、と相談を持ち掛けたときに、異例の勢いで立ち上がった案。
なんと、文フリに出展しようという話にまでなっていたのだ。
とても素敵な案で、しかもかなり本格的(ブースまでもう確保してる!)な話ので、ぜひとも応援させていただきたいと名乗りでた。
てなわけで、作家兼売り子として東京に出張することになる。
ご都合合う方やミムコさん・わたし・作家さんの作品に出会いたい方は、チラッと予定を空けておくとよいかもしれない。
みなさんにお会いできるのを楽しみにしています。
(それまでに作品を書かなくちゃいけないんだけどね)
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