書評「天上の葦 太田愛」


コロナ禍でふたりの読書会は中断していた。
再会するにあたり読書人Tが提案したのは「天上の葦」だった。
 
「天上の葦」の著者は太田愛、初めて聞く名前でした。
太田愛が水谷豊の代表作である「相棒」の脚本家である、と。
 
角川文庫の「天上の葦」(上・下)を買い求め、わが庭に咲く黄なるヘチマの花だけが私を癒してくれる激暑に読みはじめた。
このところ、本を読むに少々の疲れを感じ入っていたのでなかなか「天上の葦」ははかどらない。
また、登場人物が多く主人公は誰なのか?「天上の葦」(上)の主な登場人物で確認しつつ読みました。
妻が先にあっという間に読んでいたので、感想を求めたらいつものように「別に」のひとこと、「下巻が面白い」をつけ足した。
 
この本では、『著者(主人公)は何を主張したいのか』を探りながら読む。
物語は、世界に知れる渋谷・スクランブル交差点で96歳老人正光秀雄(まさみつひでお)が空をふり仰ぎ右腕を蒼穹の一点を指さし昏倒した。この風景は正午のトップニュースとして全国にテレビ放映された。
 
著者の構成力が際立っている。「天上の葦」(下)の主な参考文献から推察できる。
戦時下の言論統制、公安警察、東京大空襲などの實相を学ぶことができる。
 
妻のひとことの下巻の後半になると段々面白くなってきた。
私は、興信所所長鑓水七雄(やりみずななお)が発したひとこと「日本にも良心的なプロジューサーやディレクター、ジャーナリスとは大勢いるんだけどね」、これだよ、と。
 
終章を読むころ、政界が揺らぐかもしれない自民党派閥のパーティ裏金問題が起こる。朝日新聞の一面に「松野官房長官1000万円超のキックバック」が報道され一気に政権崩壊になりかねない状況となった。
 
これからどうなるか、「天上の葦」が見下ろしているぞ!

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