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経験から学べるスゴさ

少し前の話ですが、抽選にあたり日本将棋連盟×不二家主催の「ペコちゃんはじめての将棋教室」に親子で参加。

息子は、着ぐるみのペコちゃんの動きには興味津々でしたが、将棋の駒の動きには興味を持たず、駒を並べるところでほぼ断念。
まだ早かったのか、そもそも興味がなかったか・・。ほろ苦い将棋デビューでした。

そんな将棋つながりで、藤井8冠の話。

藤井8冠のすごさは、テレビやニュースやらで、強さの源として集中力、探求力、構想力、平常心、などなど多くの言葉で語られていますね。

その評価はごもっともと思いながら、将棋素人の自分は『経験から学べるスゴい人』とひそかに思っています。

藤井八冠も、将棋をはじめたときから、敵なし最強キャラではなかったようです。師匠である杉本昌隆八段の書籍「藤井聡太は、こう考える」のなかで、棋士との対戦から学び、強くなってきたことがうかがえます。

経験学習モデル

松尾 睦教授の唱える『経験学習』は、『適切な「思い」と「つながり」を大切にし、「挑戦し、振り返り、楽しみながら」仕事をするとき、経験から多くのことを学ぶことができる』というモデル。

具体的には、
挑戦する力(ストレッチ):高い目標に向かって挑戦する姿勢
振り返る力(リフレクション):何かアクションを起こしている最中やアクション後に、何が良くて何が悪いかについて振り返ること
楽しむ力(エンジョイメント):やりがいや意義を見出して楽しむこと

藤井八冠の強さも、この3つの要素から説明できそうです。

①挑戦する力

先述の「藤井壮太は、こう考える」に紹介されていますが、チャレンジ精神を強く感じます。

・藤井にとってはリスクを恐れることが、最大のリスクなのでしょう
・危険な順から読み進めることは彼の性格なのです。無意識にそれをずっと続けてきたことが藤井を鍛えてきたのだと。
・藤井は勝つことよりも読むことを、勝利よりも将棋の真理ともいうべきものを求めているのです。
 などなど。

「藤井聡太は、こう考える」

仕事もそうですが、自分の得意なカタチに持ち込んだほうが効率的だし、ミスのリスクも減る。ただ、生産性は良くなっても、そこから新しいものは生まれにくい。

藤井八冠は、自分の得意なカタに引っ張られず、その局面ごとに何がベストかを常に考える
言うのは簡単ですが、きっと、実践するには大変。毎度、過去に得た成功体験を一度捨て、高速でアンラーニングさせている感じでしょうか。

挑戦し続けるタフネスさ、に感服です。

②振り返る力

将棋には「感想戦」という対局終了後に互いの指し手を振り返る場があります。負けた棋士も、冷静に勝負を振り返っているように見えますが、気持ちの切り替えがうまくいかない棋士もいるようです。

「振り返る力」という点では、一流の棋士ほど、気持ちの切り替えが早く、感想戦を次の成長につなげようとするというのもわかる気がします。

藤井は勝ちにこだわっていません。
ただ将棋が好きなだけなのです。はためから見れば、手痛い敗戦をした後に、感想戦でさっきまで戦いを振り返るのは非常につらい作業と思われるかもしれません。

しかし、藤井にとっての対局相手は、勝負が終われば研究パートナーなのです。勝負が終われば、そのまま感想戦を楽しめるのです。勝負がかかった一戦と感想戦の間に壁がないのです。

「藤井聡太は、こう考える」

自分のような凡人は、些細な失敗でも、ミスを引きずりがちですが、藤井八冠の振り返りの姿勢をみると、切り替えの早さはもちろん、次に向けて視点が変わっている印象を受けます。

ただ、同じ一流棋士であっても、藤井八冠の感想戦は、受け答えが早く「何のことかわからないことがある」という声もあるようです。

③楽しむ力

3つの要素のうち、テレビを通して見る藤井八冠から強く感じるのは「楽しむ力」。
とにかく将棋が楽しそう。

「楽しむ」とは少しニュアンスは違いますが、王座戦の対戦相手 永瀬九段は、「藤井さんの強さは、穏やかだけど勝負ができる人」と話しています。

―永瀬さんは、穏やかな人ではないのですか。
永瀬
 相当キツいと思います(笑)。
客観的に見て、それは否定できない。ただ、私のようなタイプの方が普通なんです(笑)。

「穏やかなのに勝負ができる人」。
こういう人はなかなかいません。その点は、野球選手の大谷翔平さんや、あるいはボクシングの井上尚弥さんと、どこか似ている感じがします。この「穏やかさ」が、藤井さんの突出した「強さ」におそらくつながっている。

文集オンライン

確かに世界のオオタニさんも、二刀流の大変さやストイックさよりも、穏やかに、野球を楽しんでいるイメージが強い。

厳しい顔をして勝負にのぞむ人が多い中で、大きな舞台でも「楽しめる」気持ちを自然に持てるのは、やはりスゴイですね。

最後に

テレビのインタビューをみても、藤井八冠は目の前の1勝よりも、自分なりの将棋の世界(理解)を見つけようとされている、そんな印象を受けます。(勝手な想像ですが)

おわり