波のカナタ 中学1年生

中学1年生 晶 雪ノ下 和
桑ノ葉晶は中学一年生になる。母親に言う。
「サッカークラブに入りたい」
「お父さんに聞いてみて」あんなヤツと話したくない。晶の進学する中学校にはサッカー部がなかった。クラブチームに入らないといけない。遠征費が掛かるとサッカークラブに入っている友達に教えてもらう。

晶、遅くに仕事から帰って来た父親に話す。
「駄目だ」
「どうして」こいつ、マジで話通じない。
「学校の部活じゃないと内申にプラスにならないだろ。サッカーなんて危ないだろ。怪我したらどうするんだ。テニスにしなさい。ラケット、ユニフォーム全部買ってあげるから」
「サッカーが、いいんだってば」
「ダメ!! サッカーは危ないし、クラブだと母さんの負担が大きいだろ」
「母さんなんか__来なくていい!」
「とにかくダメ! 話は終わりだ」

晶は泣いて部屋に入った。窓が開いていたため、ドアがバタンと勢いよく閉まる。
「晶! ドアは静かに閉めろと言ってるだろ!」父親は、泣いている晶をドカドカと蹴る。晶、静かに立ち上がり父親を突き飛ばした。何する、と言いかける父親を蹴った。怒りが収まらず、新築の壁を蹴飛ばして穴を開ける。晶は家を走って出て行った。

春から中学一年生になる。
母親が再婚して、大きな家に住むことになった。新しい父親。そして、同い年の兄。綺麗で立派な洋館のような家に圧倒される。うちが住んでいた団地とは全然違う。クリスタルのシャンデリア。大きな薄型テレビ。広い庭。
ニワトリを飼っている。同い年の男子が鶏を抱っこして渡そうとする。ニワトリが怖くて、母親の後ろに隠れた。それなのに、男は鶏をかわいいのにと、けしかける。ここは、見た目は豪華で美しい家。
__けれども、私は団地にもう戻りたい。母と二人に戻りたい。

朝が来る。晶は、昨日の夜は夕御飯を食べなかった。
朝もムカついてフルーツと牛乳だけ飲んで、食パンを持って家を出た。
あー。腹減った。
早いのでまだ生徒は少ない。学校で入部届にソフトテニスと書く。くしゃくしゃに丸めてポイッと黒板に投げる。ハアーとため息を吐くとのろのろと丸めた紙を拾いに行く。机の上で手でアイロンをかけ広げる。

テニスが嫌なわけじゃない。__けど、サッカーしてたら、アイツに会えるかもしれないじゃん。サッカー大好きなアイツに。
__功に会いたいんだよ!!
晶、机に突っ伏する。

©️ 石川 直生 2020.

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佐々木 功です。え。ありがとう。晶ー!なんか挨拶だって。晶です。え? えっと。え。柚子です。お金は大事だよ〜♪お気持ちだけで。