変更変更変更、それに伴う苦手な苦手な事務作業

 もう三月の半ばである。昨年秋の代表就任から怒涛の日々を送ったことは述べたとおりであるが、今年に入ってからも負けず劣らず怒涛であった。
 この数ヶ月の動きを、ざっと箇条書きにしてみる。
1月
 一冊!決済の始動およびサービスの諸改善、およびそれにともなうメディア取材
 ものづくり補助金の採択決定、「ああ、これで会社を維持できる」と喜び、放心することしばし。月末に、交付申請が必要と知り、大いに焦る。申請
 社名変更の登記手続き、それにともなう諸関係所への変更届け。ホームページ変更
2月
 補助金交付申請の書類不備によるさしもどし、修正そして再申請。この一連の往復は一度ではない。六度に及ぶ。こうした作業が驚くほど苦手なのを今更ながら痛感。「さしもどし」の通知、電話がくるたび、うきゃー、と叫びたくなる。それを抑え、冷静にクールに端然と対応。「はい? なるほど、営業利益の項目が一桁間違ってましたか。0をひとつ減らせばいいですね」。こんなふうに。
 社外取締役に竹本吉輝さん(株式会社トビムシ代表)、近藤淳也さん(株式会社ond代表)をお迎えする。その準備、書類づくり、変更登記
 本社を東京都から京都市に移転。その準備、書類づくり、変更登記
3月
  補助金交付申請決定
 一冊!寄付のお願い(こちら、どうぞよろしくお願い申し上げます)
 補助金事業開始のための資金手配(金融へ融資をお願いする)
 本社移転にともなう諸関係所への変更届け。電話番号取得の手配、名刺の手配
 水面下でうごく「一冊クラブ」プロジェクトの打ち合わせ・・・

 もちろん、これだけなら怒涛とまではならないが、一冊!取引所の以外のしごともしているのだ(けっこう、それになりにやってます)。
 ともかく、この数ヶ月の変化は創業以来、最大といっていい。そりゃあそうだろう。社名を変えたのだから。
 この変更は、年末のある打ち合わせに由来する。「一冊!取引所」のホームページはなかなかステキなデザインだと自負しているが、運営会社である株式会社カランタの会社ページのほうは「とりあえず」作った段階で止まっていた。手が回らないまま放置されていたと言っていい。だが、今後、事業を軌道に載せていく、そう考えたときに足元である自社ホームページの体裁を整えることは必須と考えた。
 それで、そのデザインを一冊!取引所のロゴをつくってくださった寄藤文平さんに依頼することにした。年末もさしせまったある日(「文平銀座はこの打ち合わせで仕事納め」とそのとき聞いた)、オンラインで寄藤さんとお話した。
 雑談のあとすぐ、寄藤さんに訊かれた。「カランタ・・・この社名って何か意味あるんですか?」
 私は、「いや、とくに、というか、ミシマ社の起業時に借りたワンルームのビルの名前で、そこに前社長の蓑原も間借りしていたこともあり、この名前にしたんですよね」と、まあ、長たらしい割にはたいして必然性のない内容の返答をした。すると文平さん、しばらく無言でなにやら思案顔ののち、 おもむろに言ったのだった。
 「三島さん、社名変えたら?」
 えっ、と思うと同時に、やはりそうか、とも思う。
「実はそうしようと考えたことがあったんです。けど、代表変更の登記手続きとかなんとか、そうした事務作業が大変すぎて、社名変更をしたら、「あの大変さをもう一度味わうのか、辛いな」と思うと、気持ちが折れたんですよね。で、このまま行こう。手続きに時間をとられるのはよそうと思い直しました」
「うん、けど、そう思っていたんなら、絶対そうするほうがいいですよ。長い目でみたとき、今の手間を惜しんだために、三島さんの思いと社名とのあいだにあるずれがどんどん大きくなって、とりかえしがつかないってことになる気がする」
 たしかに、と率直に思った。「そうですよね。そのとき考えていたのが、この社名です」と言って、椅子の後方に貼ってある黒板シートに私はこう書いた。
 株式会社一冊
 寄藤さんは見た瞬間、「いい!」と言ってくれた。「すごくいいじゃないですか。「一冊」がおこなう出版業界の現場をつなぐシステム改革。誰がみても、この会社は本気だってわかる」
 寄藤さんに背を押され、社名変更をその場で決める。
 運営、経営体制も一新、社名も一新。いよいよ、いよいよ、スタートだ!   こうした思いを抱いて新年を迎えたことが、元旦のすがすがしさの大きな要因であったのは言うまでもない。
 そのすがすがしさを心の底から感じられる。長い手続きを経て、その状態をついに迎えた。
 あとは突っ走るのみ。この間、溜まりに溜まったアイデアを実現していくぞ! と闘志をみなぎらせていた。ところが、思わぬ事態に直面する。京都に本社移転したら、東京の信用金庫からの借入は返さないといけない?? そ、そんなあ〜。
 一難去ってまた一難。どこまでも続くよ事務作業は、である。

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