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そりゃおめェ…生きてみりゃわかる

前向きになれる話を。

表題の「そりゃおめェ…生きてみりゃわかる」というのは漫画ワンピースに出てくるセリフです。少年時代エースの「おれは、生まれてきてもよかったのかな…」に対するガープの回答であり、印象的なシーンです。

ワンピースを読んだことがない人に向けて、どういう状況で出たセリフなのか簡単に説明します。

世界的な大犯罪者である海賊王の息子として生を受けた少年エース(主人公ルフィの義兄)は、町の色々なところで自分の父親が世間で大悪党として嫌われていると知り、その町の人たち曰く、海賊王の血を引く者がいたらそれだけで処刑され得るほどなのだと聞きます。

生まれながらにして世界的大犯罪者の血を引いており、それだけで世間から嫌われていることを知ります。そして、自分の素性は隠して暮らしながら、街で父親の悪口を聞いたら乱闘するという日々を過ごします。

そんな時に、ぽろっと出た言葉が「おれは、生まれてきてもよかったのかな…」というもの。
この時のエースの年齢は覚えていませんが、小学生くらいの年齢だと思います。
そんな年齢の子がこんなことを口にしているという少しシリアスな場面です。

これに対する回答が冒頭の「そりゃおめェ…生きてみりゃわかる」という言葉になります。エースの素性も知った上で面倒を見てくれている人間(主人公ルフィのじいちゃんであるガープ)のセリフです。

ここまで壮絶な出自を持っていなくても、自分が生まれてきてよかったのかとか生きる意味みたいなものを考えるのは誰にでもあることだと思います。
それを相談された時、もしくは自分で疑問を持った時、どう回答するでしょうか。

「生まれてきてよかったよ」と言ってあげるのは簡単。でも、それで済むようならそもそも悩んだりしないし、なんでそんなこと分かんだよ、って話になります。
生まれたことを肯定してほしいわけではなくて理由がほしいのです。
特に、生まれた瞬間から両親を亡くし、全てを肯定してくれる「親」という存在なしに育った子供にとってはこの質問の答えが何よりも重要なのです。

逆に「生まれてこなければよかったんじゃない」などとは言えません。本人がそういう思考に陥って悩んでいる時の疑問を肯定したとて何の解決にもなりません。というかそんな傷口に塩を塗り込むようなやつはぶん殴られても文句を言えないでしょう。

否定もできない、肯定もできない。
簡単で無責任な声掛けも逆効果。
では、いったいどう声をかけたらいいのか。
そのベストアンサーこそが冒頭の「そりゃおめェ…生きてみりゃわかる」なんだと思います。

その人の生きる意味や生きていてよかったと思えるかどうかなんてものは、その人自身にしかわかりません。
だから、わかったような口で軽くYesもNoも口にしないのです。
それは自分が生きて今後見つけるべきものだと教えてあげるだけ。
生きててよかったのか、生まれてきてよかったのか、最後まで生き切ってみろ、その先に答えがある、ということでしょう。
否定でも、肯定でも、質問から逃げているわけでも、無責任でもない。
本当にそういうことなんだと思って伝えているのでしょう。
また、真実をシンプルにぶっきらぼうな感じで言うのもそのキャラクターらしくていいところだと思いました。
ちょっと捉え方が変わりますが、生きるも死ぬも勝手だが、生きてみなけりゃ一生答えはわからないままだ、ということなのかもしれません。

普通に読んでいたら何でもないワンシーンなのかもしれませんが、個人的にはとても刺さるいいシーンだと思っています。

そして漫画という限定的な世界観での話ではなくて、現実にも意味を感じられる普遍的で秀逸な一コマだと思います。

「生きろ」でも「死ぬな」でもなく「生きてみりゃわかる」。
説教くさくあれこれ言うよりもよっぽど当人の気持ちに寄り添った一言だなと思います。

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