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【中国史記から】欲望と上下関係のコントロール。節度ある行動の大切さを知る燕の国王と宰相のお話。

中国戦国時代(始皇帝の統一前の時代)の七雄(七大強国)の一つに燕という国がありました。この国は一時、隣国の斉に国土の大半を占拠されるという国難にあってしまいます。

斉が用いた策略は、名誉心の強い燕の国王と権力欲旺盛な燕の宰相の二人の欲を刺激したものでした。

あるとき、友好親善のため斉から外交官が燕にやってきます。彼は、燕の国王に向けてこう発言します。
「燕の国が羨ましいです。」
どうしたことかと気になった燕の国王が話を聞くと
「斉の国王は部下を信頼してくれません。しかし、燕では国王は宰相に多くのことを任せていらっしゃいます。これこそ王者の姿勢です。」

たいそう喜んだ燕の国王は、さらに宰相の地位や権限を厚くすることによって、自分の名誉心を高めようとします。もっと褒められたかったんでしょう。

当然、この動きに権力欲旺盛な宰相も喜びます。自分に有利な発言をしてくれた斉の外交官を重く用いることにしました。もっと自分に有利となるような運動をしてくれと大金を預けます。

斉の外交官は、自分以外の様々な人物から燕の宰相の力が大きくなるようあの手この手で燕の国王に進言してもらいます。
「国王様、権限を宰相に譲れば譲るほど、あなたは名君と呼ばれますよ」と。

やがて、宰相は人事権も含めた全ての権限を掌握します。それどころか、燕の国王は自分の地位を宰相よりも低くします。「燕の国王はなんと謙虚な人物なんでしょう。」という人々の評判を得たいゆえの行動でした。

この結果、上下の分別が崩れ、ルールや序列が意味をなさないこととなり、燕の国は3年も経つと、大混乱となりました。

燕の国王の王太子は宰相を取り除こうと挙兵し、内乱が勃発します。すると、この混乱に乗じて斉は燕に攻め入り、燕の領土を奪ってしまいました。

欲の強い上下の人物の欲望をくすぐることによって斉はまんまと多くの領土を奪ったのです。

斉の軍隊がやってくると、燕の国王は戦死し、燕の宰相は逃亡。危難を逃れた燕の王太子が国王に即位しますが、燕が斉に雪辱を晴らすには、このあと30年の時が必要となりました。

欲望、上下関係。こういったものをキチンとコントロールしないと大変なことになるよというお話でした。

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