記憶冷凍　(バレエショートショート)

　藍たちは、レッスン中に増杉 ふえすぎさんから、持っていた扇子でいきなり顔を叩かれた。彼女は次々に周囲にいる人の口元を狙って叩いていく。アタシの悪口をいうな、いじめるなと叫びながら。もちろん、藍たちは彼女に対してなにもしていない。増杉さんも普段はとても静かで内気なコなのに、顔を真っ赤にして怒っている。

　音楽を止めて皆で理由を聞いた。増杉さんは皆が、お前は踊るなといじめたと主張する。だから悪魔から手にもっている扇子を使って懲らしめろと命令されたという。先生はその場ですぐに増杉さんの親に連絡して帰ってもらった。

　翌日先生は、藍たちを集め、増杉さんはしばらく入院することになったと告げた。
「いいですか、あなたたちは無実です。が、今の彼女にとっては悪魔とやらの命令が真実です。あるはずのない声が聞こえる…幻聴、ですね。病気ですから昨日のことは忘れてあげてください」

　藍たちはもちろんそうするつもりだ。

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たらはかにさまの企画に参加中です。

わたしは職務で統合失調症の患者さんと話をしますが、幻覚や幻聴には本当に悩まれておいでです。しかし適切な服薬で必ず良くなりますので、定期的な受診をしてくださいね。