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空飛ぶストレート

 俺は軽犯罪法第1条を犯し刑務所ならぬケーキ所に収容された。そこは空中にある。所長はイチゴ模様の服を着ていた。背後の囚人たちは単色の作業服を着ている。最初に所長からの訓示があった。
「白色の囚人服は生クリーム担当、黒色はチョコクリーム担当。現在カスタードクリームがやれるぞ」
「どれも嫌だ。普通の囚人服が着たい」
「それだとショート刑期どころか饅頭にもならぬ」
「満期ならぬ饅頭とは苦しいな」
「口答えするな」


 俺は囚人服をもらえず素裸のまま独房に入れられた。四方透明で空中に浮かんでいるようだ。ケーキ所を俯瞰すると、はるか下界から空腹の子どもたちが無料ケーキの出荷を待ち構えていた。
「せっかくのショート刑期だし、クリーム塗りでもやろう」
 所長にいうと、仕事用囚人服の在庫と空きがなく、そのままケーキの出荷係に命じられた。そういうわけで俺はコック帽だけもらってフリチンでケーキを配っている。子どもたちも大喜びで、やりがいがあるよ。


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