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夜光おみくじ (ショートショート)

 大晦日の夜だけ発売されるおみくじが人気だ。元々その神社は住民が激減した過疎地でさびれていた。危機感を覚えた神主が苦し紛れに発案したものが当たった。

 神社の横にある小さな社務所に、夜目にも鮮やかなおみくじが置いてある。三宝の中にあるのが蛍光色のみくじだ。1回100円。人々は列をなしておとなしく順番を待っている。

 大吉だ! 病気が治る。

 皆から自然と拍手が湧いた。

 大吉だわ。来年結婚ができる。

 女性の声だ。これも拍手が湧いた。

 ここのおみくじは当たると有名なのだ。しかし、日が変わると発売終了になる。夜がふけるにつれて、まだなの? 早くしてと声があがる。神主はこの人気に喜び、通年発売にしよう、値上げも大幅にやろうと皮算用していた。そこへつむじ風が社務所に吹き、おみくじが全部客の方に飛んでいった。
 皆はそれをつかみ、大吉だと言い合い、称えあう。神主は神意を悟り、夜の冷気とともに龍の形をした夜霧を見て深く拝礼した。
 



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