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スパイクジョーンズのMVの話

お次はこの方。
マルコヴィッチの穴、と言えば映画界に名だたる名作だが、
その監督、しかも初監督作品だったと言えば僕の興奮も1%は伝わるだろうか。
曲の映像監督としてのキャリアはもっと前で92年かららしいが、
その頃から既にSonic Youth、Beastie Boysらのヴィデオや彼らのスケボーを撮り始めてるってんで恐れ入る。
他にもジャッカスシリーズ、かいじゅうたちのいるところ…と有名作も多く手がけてきた。

で、彼の代表曲を早く観よう。観ようよ。

The Pharcyde/Drop

もうこの曲を抜きに語ることは出来ないでしょう!
自分もこれを初めて目にしたときはそのアイディアに腰抜かした。
逆再生って思いついても出来ないよねってやめちゃうもん。
これが96年の作品。すごい。
このDVDシリーズは副音声で解説がついてることがあるのだけど、
実際に口元も動きもすべて反対から演じていった本人たちの裏話がなかなか興味深い。
ただ歌詞を逆さに読んでも逆再生でリップシンクしてるように見えないらしく、言語学者監修の専用の歌詞をひたすら覚えて撮影したらしい。
今では日本でも逆再生MVはあるけど、OKAMOTO'S/Beautiful DaysとかL'Arc〜en〜Ciel/瞳の住人とか…でも時間軸はあくまで逆走。
逆再生で順走に見せるのとはスケールが違う。

Fatboy Slim/Weapon Of Choice

日本だと誰なんだろう。遠藤憲一さん的なポジションだろうか?
強面のクリストファーウォーケンという俳優をガッツリ踊らせるという絵面とアクロバティックな映像技術美が満載で、01年MTVミュージックアワード受賞。
こういうのって、まぁ映画フラッシュダンスみたいなことなんだけど、
極力代役無しでこちらは撮られたらしい。そうは見えないからすごいし、
継ぎはぎテクが今は進歩してるから現代人にはさほど衝撃はないかもしれないけど、
荒野を切り開いた者は偉大だ。
終わってまた再生しても繋がるようになってるのも良い。
因みにクリストファーウォーケンは当時84歳、、、

Björk/Triumph Of A Heart

ビョークのかわいいイメージヴィデオかよっていう作品。
動物の擬人化は彼女のヴィデオではよく使われるテーマだが、
ここの猫はおそらく曲で聴こえてくる「みょおん」という音にインスピレーションを受けているように思われる。
この曲は「Medúlla」という全編声だけのアカペラアルバムに収録され、
Dokakaというヒューマンビートボクサー(なんと日本人)とコラボした傑作。
通してポップだが照明はどこかダークで雰囲気があり、トラックの格好良さをMVに反映させた着眼点の良さが見て取れる。
本編とは関係ないがこの変わった結び方は「It's Oh So Quiet」のメイキング時にもしていたので、お気に入りの髪型?なのかもしれない。笑


Wax/California

単発アイディアがすべてなタイプのMV。彼を有名にしたヴィデオの一つでもあり、今でも目を引く作品である。
スローになっているので撮影自体は一瞬で終わっただろうが、曲がり角にはすぐに飛び込めるようにプールが設置してあったりと、
細心の注意は払われていたようだ。
ダイナミックさと繊細さがウリだね☆


The Notorius B.I.G./Sky's The Limit

今観てもさしたる衝撃はないかもしれないが、
ビギーが亡くなってから撮影する必要がありひねり出したアイディアが、
「似た子役を抜擢する」というアイディアだ。
日本ではm-flo loves MINMI/Lotta Loveなどに見られる。
子役の用意と指導はスパイクジョーンズ側が請け負っていたのでプロデューサーであるDidyはそのクオリティを訝っていたが、
その見た目と表情には太鼓判。
どんな指導方法をとったか気になる。
個人的にはビギーの子役もアクセも良いが途中に出てくる子役のLil Kimがお気に入り。

The  Chemical Brothers/Elektrobank

曲は有名な方ではない。
ただ、音楽性と全く関係がない映像をマッシュアップさせることがダンスミュージックでは今では普通になったが、
これはその先駆けだったのではなかろうか(ex.Benny Benassi/Satisfaction)
ストーリー性が強く、曲調が急激に変わる後半部分への入り方に「なるほおどォ!」と膝を打つ。
ダンスミュージックなのに妙に感情移入してしまう作品性の高さが光る。

R.E.M./Electrolite

これでもかという特撮の寄せ集め。これはこれで楽しい。
R.E.M.は冒険的な仕上がりに寛大で、かなり様々なテイストのヴィデオを残してきている。
本当はスパイクの取り上げるべきMVとかヒットソングとかあるから詳しい人から見たら「はいやりなおしー!」と思われるラインナップなんだろうけど、
曲だけでもダメだしヴィデオのインパクトありきだけでもダメで、
僕の心に引っかかったものしか選出していない。

Mike Watt/Big Train

MVを調べていて見つけた作品。ただこの小型トレインたちが出てくるに終始していただけだったらここには載せなかった。
最後まで観ていってほしい。
このMike Wattという人のことは今回で初めて知ったが、Sonic Youthのサポートメンバーとしてレコーディングに参加したことがあるあたり、
アメリカでは無名というわけではないのだろう。
一本のMVのために模型を用意するの大変だっただろうなぁ〜

Beastie Boys/Root Down

彼らを取り上げるなら欠かせないのはSabotageの方なんだろうけど、
色々観てたら僕にはこっちの方がグッと来た。
ヒップホップには定義があるというのをフリースタイルダンジョンに出ている人たちは知っているのだろうか。知らなくても良いけど。
4大要素のフレイヴァー全てを感じさせる、時代感がタマらない。
Beastieメンバーのライミングもキレキレに入り始めた時期の、この空気感、
グラフィティ、ノイズ加工。
どれをとっても今撮影することは出来ないであろう、博物館的な感動。
こういう視点、ガンコオヤジっぽいと思われるのだろうか笑

Kanye West feat. Dwele/Flashing Lights

「My Beautiful Dark Twisted Fantasy」というアルバムのために撮られた短編映画があり、それの関連となる。
とても短いのだがかなりショッキング映像。
よく着目すればスコップの先に血が付いてないのも今なら分かるのだけど、
当時はセンセーショナルで、だけど美しいこの映像に魅了されたものだ。
トランクにいるのがカニエで、このアルバムのどの曲もヴィデオもストーリー性が強く傑作となったが、疲れるのも確か。
生気を吸われるほどの圧倒的に張りつめた空気があるアルバム。
このヴィデオは没が他に2タイプあったのと、カニエ自身当時一番好きなヴィデオだと発言していたらしい。
加えて数々の雑誌、MVランキングでも上位に入るほど評価されている。
フランスのNekfeuというラッパーから続編的ヴィデオがリリースされたり、没になった方もリークされているのでそちらをチェックするのも面白い。


〜おまけ〜

LCD Soundsystem/Drunk Girls

日本ではあまり話題にあがらないがダンスミュージック会の重鎮。
観ていてあまりに気の毒になるので載せようか迷った。
取り上げたいと思ったのは一点。
この映像のメッセージが、写真投稿SNS全盛期への問題提起。
皮肉なのではないか、と思ったから。
想像は自由なので真偽は敢えて確かめないけど。


10曲も紹介するとさすがにボリューミーだけど、キリはちょうど良くなるなぁ。
これ以上は多すぎるし5曲は少なすぎる。
今後は感得別の得意な手法とか、もう少しそちらに焦点を当ててまとめられたらもっと読みやすいかと反省。

一応参考までに:

スパイクジョーンズのベストMVランキングはたくさん組まれるくらい有名な人なんだよってことで置いておこう(全編英語ページだけど)


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