春眠
欠伸が出る。
長閑な春の昼下がりだった。
宿を出て街道沿いで露店を出したが、気が付くとうつらうつらしている。
昨夜は寒くて眠れず、酷い寝不足だった。
「駄目だ、眠い」
大きな桜の木の下で、そのままごろりとひっくり返る。
あらかたの花は散り、葉桜になり掛けの中途半端な枝先が目に入る。
ハクロも宿に泊った翌日は、よく眠そうにしていた。
「テイ、お前のせいだぞ」
愚痴を溢しつつ懐に抱いたそれを叩く手は、だが、どこか優しい。
腹の上にごろりと重さを伝えてくるその石には、お化けが棲んでいる。
「どこ行っちゃったんだろな、ハクロ」
胸元から伸びてきた小さな黒い腕が、ぺたぺたと頬をさすった。
「そうだな。寝て起きたら、探しに行くか」
@Tw300ss 第71回 お題「眠る」 ジャンル「オリジナル」
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Twitter300字ss企画内にて個人的に連作チャレンジ中、今回11作目ラストです。
よろしければ前作も覗いてみて下さい(´-`)
【前のお話:背守り】
https://note.com/1_ten_5/n/n99a7c7e0c983