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背守り

「お手を煩わせちまって」
「お得意のあなたの頼みです、訳はありません」
 そう言って女は微笑んだ。


「随分と可愛らしいお頼み事ですこと」
「本来は産着にするもんなんでやしょうけど」
 男はそう言って頭をかいた。
「道中、後ろを気にせず歩ければと思いやしてね… 気休めですが」
 女が静かに首を振り、手元の刺繍を撫でる。
「たかがおまじない、されどおまじない… この縫い『目』がちゃんと見張ってくれますよ」
 手渡された子供用の着物に男は目を細めた。
「吉祥の蝙蝠とは都合がいい、夜もしっかり目を光らせてくれそうだ」


 ふっと、明るい陽射しの縁側で足をぶらつかせる子供を見やる。


「あっしもいつまで一緒にいてやれるか、分かりゃしないんでね」


@Tw300ss  第70回  お題「服」   ジャンル「オリジナル」

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Twitter300字ss企画内にて個人的に連作チャレンジ中、今回10作目です。
よろしければ前作も覗いてみて下さい(´-`)

【前のお話:選択】
hhttps://note.com/1_ten_5/n/n9f864f72575e