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連載小説【夢幻世界へ】 断片3 夢の風景

【断片3】


風景1

往復するトロッコ列車

駅から真っ直ぐ線路が見える。
その線路の先には到着駅が見える。
昔ながらの券売機で切符を買い、トラックの荷台のような、開けっぴろげの車体に乗り込む。
おばあさん、おじいさん、小さな女の子を連れたお母さん、観光で来たらしき二人のご婦人。

ゆっくり静かに列車は動き出す。

列車は少しだけ、ゴトン、と揺れるが、それからはスムーズに進む。

周囲は広く開け、列車の周りには原っぱが広がる。
遠景に工場、住宅、その向こうは薄緑色をした低山が広がる。空は薄曇り。

1キロにも満たないこの距離を、この列車で移動することに意味があるのだろうかと考える。歴史遺産として運用されている?詳しくは向こうの駅の駅員にでも聞いてみようと思う。

ひとりで来たけど、一緒に来ればよかったと少し後悔する。

誰と?


風景2

透明なエレベーター

ここは展望台。
一階部分は広く、イベント会場とホテルのエントランスになっていて、近くの駅とは歩いて5分程度である。

エレベーターは並列で3基あり、そのうちのひとつに乗る。

上昇すると、途中から四方がガラス張りになり、外の風景が見渡せる。

屋上までは行ったことがないが、どうやらそこはこの世界一帯を見渡せる展望台であるらしい。

途中の階は隣接している病院や、工場の屋上とつながっている。


風景3

屋上は展望台になっている。
円形の部屋から階段で上がると、独立した屋上に小柄な人が二人座れるくらいの展望部屋がある。
そこから漆黒の空や煌めく花火を鑑賞するのだ。

一階部分には人がひっきりなしに出入りしている。
ところが、展望部屋は私たちだけの私的な空間だ。

私たちとは、誰だ?


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