見出し画像

読書ノート 「こころの声を聞く」河合隼雄対話集

             

 いいとこ抜粋。

 人間というものは不思議なもので、そのような「存在」そのものと切れてしまって、自分や他人を勝手に規定したり、限定したりするのが好きで、それによって、その文化の「秩序」が保たれるなどと言ったりします。
 しかし、それは何とも浅はかな「秩序」ではないでしょうか。「男らしい」「女らしい」ということがたとい概念的に反対のものとして明確にされたとしても、どうしてそれらが一人の人間のなかに共存していけないことがあるでしょうか。

(「性別という神話について」富岡多恵子との往復書簡)


 (安部公房の作品を読んで)皮膚がモゾモゾしてきたり、まさに「粟を生じる」ような感じになったりする。


 最近はヒステリーは少なくなっているし、鬱病は増えている…五十歳くらいになって強迫神経症が出るなんて、普通は考えられないし、今まではなかった。それがこの頃、ちょいちょいありますね。それはどういうことかというと、中年の終わりくらいに思春期を迎える人がでてきたと考えるとわかりやすい。

(「常識・智恵・こころ」谷川俊太郎との対話)


私の場合は、ユングの言ったことを出来るだけ正しく日本に伝えるというより、ユングが生きたような生き方を自分も日本でするという、そっちのほうを大きく考えています。

(『「王の挽歌」の底を流れるもの』遠藤周作との対話)


 非常に統合度の高いシステムとか、非常に適応度の高いシステムというと、はじめからちゃんと考えてつくられたものがいいものだというのは、完全な迷信ですね(河合)。

…実際にそういうふうに完全にプログラム化されたシステムというのは、危機状態では逆に弱いんですね(多田富雄)。

 男はだいたい無理しているわけですよ(河合)。


 舌足らずかもしれないですけど、生命系以外の他のシステム、たとえば資本主義経済とかあるいは言語、民族、それから文化もそうかもしれませんけど、そういうものを超システムという概念で眺めてみますと、共通点が非常にたくさん出てきます。そうしますと、経済活動とか言語形成とかというのは、生命と非常によく似ていて、ひょっとすると、私はああいうものも一種の生命とみなすべきなんじゃないかなと思っています(多田)。

(「自己・エイズ・男と女」多田富雄との対話)

よろしければサポートお願いいたします!更に質の高い内容をアップできるよう精進いたします!