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読書ノート 「眠りの館」 アンナ・カヴァン 安野玲訳



 「生はせめぎあい──せめぎあいの結実だ。せめぎあいなしには創造への衝動は存在しえない。人間の生を昼と夜、二極間のせめぎあいの結実とみなすなら、夜という陰極は、陽極である昼と同じ重要性を帯びているはずだ。夜には、昼とまったく異質の宇宙線の影響で、人事万般がともすれば運命の分かれ道に立たされる。ほとんどの人間は夜に死に、夜に生まれるのだ」(「はじめに」)


 断片的で自伝的な夢の言葉で紡ぐ。「夜の言葉」で紡ぐこの幻想小説は、アンナ・カヴァンの現実世界である。夢と現実の狭間でせめぎ合いながら、どこか落ち着く先を見つけようとしていたことすら忘れ、錨を外した孤独な精神が彷徨う。

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