週刊蓄積

毎週日曜日の深夜、玄関からマンションの廊下に出ると、きつい香水のにおいが鼻をつく。誰もいない。自分がコンビニに並び立ての月曜発売の週刊少年ジャンプと週刊プレイボーイを買いに出る、その直前に帰宅していると思しきご近所さんの残り香。こっちは毎週決まった時間に部屋を出てるから、向こうも割ときっちり帰宅時間を守ってるわけだ。

それにしても、すごいにおいだ。根本的に苦手なタイプのにおいだってこともあるが、なによりもその濃さに毎週驚く。普通にすれ違った人が発してても辟易するレベルだが、これは残り香だ。しかも、恐らく一日働いて帰ってきた人の。一体、出勤時、つけたての体から発せられるにおいはどれだけのものか。さらにそのまま電車に乗っているとすれば、それは一種のテロル。においの主はどういう嗅覚をしているのか。そして、どういう香水のつけ方をしているのか。鼻くそぎっしり詰めて香水の湯船に浸かってるんじゃないか。

においを抜けて外へ出る。最寄りのコンビニでジャンプとプレイボーイをサッと手に取り会計。毎度おなじみ、店長のおじさん。毎週一冊しか入荷しないプレイボーイが珍しく早々に売り切れたりすると、入店するなり「売り切れちゃったんですよ…」と言われる、程よい顔見知り。いい人なんだが、ひとつ気になることがある。

最近、買い物はほとんどカードでしてる。カードっつったって、信用ないからクレジットカードじゃなく、LINE Payのプリペイドカードだ。スマホでチャージできてJCB対応の店で普通に使えるから便利。ただ、件のコンビニの店長、このカードのスキャンの仕方を一向に覚えられない。

カードを手渡すといちいち必ず「あれ、どっち向けてやるんだろう?」ってな様子でカードを裏返したり、ひっくり返したりしつつ、「てへっ」ってな照れ笑いをする。で、矢印書いてあんの見つけて「ああ、こっちか、てへっ」なんつって。毎週、同じ時間に。そりゃあ最初は、カードに慣れてないんだな、ちょっとかわいらしいな、くらいに思ってたさ。でも、もう「てへっ」じゃねえよと。小倉優子だって、こりん星爆発させたろう。それと同じだ。かわいいで済む時期は終わってる。とっくにかわいくない。

些細なことなのは確かだ。でも、毎週同じ時間に同じことやってんだもん。回数を重ねていくことで、それは着実に臨界点に近づく。そして、ジャンプとプレイボーイを手にマンションに戻り、部屋に近づいていくと、しぶとい誰かの残り香がもう一度出迎えてくれた。毎週なんなんだ、お前らは。もう限界だ。書く。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?