日本十進分類表(NDC)について

※以下の文章は、岡山県立図書館のホームページから、2019年12月27日にコピーした、日本十進分類表(NDC)区分に基づいています。NDCは更新されることがあり、項目が削除されたり付け加えられることがあるので、ご注意ください。

 こんにちは。片山順一です。今回は、作家志望と切っても切り離せない本の話です。中でも図書館で紙の本を分類するための日本十進分類法(NDC)という区分について。

 NDCは、日本の多くの図書館で使われている本の分類方法です。その本が何について書かれたものなのかで、分類してあります。

 図書館に行くと、本の背表紙にラベルを張って、『368.61』などのように書かれていますが、あの数字のことですね。

 たとえば、1が頭なら分類は哲学全般となります。100から199までが、哲学と関連したことが振り分けられているのです。110なら、哲学各論、120で東洋思想、130から西洋哲学、140で心理学、160で宗教全般、170神道、180仏教、190キリスト教といった具合です。

 頭の数字で大まかな分類が分かれており、詳述は面倒くさいのですが、
2が頭なら歴史(日本史、ヨーロッパ史、個人の伝記、地理もここです)。
3なら社会科学(政治、法律、経済、統計、社会、教育、民俗、国防など)
4で自然科学
5が技術、工学
6は産業
7は芸術、美術
8が言語。
そして9が文学です。

 0番もあり、ここは総記と呼ばれます。いまいちどういうものが入っているのかわかりませんが、列挙すると、01が図書館、図書館学、02は図書、書誌学、03は百科事典、04は一般論文集、講演集、05が逐次刊行物(雑誌が入っています)、06は団体とあります。07がジャーナリズム、新聞の区分で、08が叢書、全集、選集。そして09が貴重書、郷土資料、その他の特別コレクションだそうです。
 なんかつながりがありそうな、なさそうな。気がします。

 たとえば、日本語で書かれた日本の小説だったら、純文学だろうがライトノベルだろうがSFだろうが推理小説だろうが、913.6という番号が振られています。これは、日本文学の中の小説に入りますね。出版社や書店において支配的な、いわゆる“ジャンル”という概念は、こと日本で支配的な本の分類においては、存在しないのです。全部同じ本。高級も低劣もない。なんて、その本を好きな人が異なれば、次元そのものが違うように扱われることは、分かったうえで、そんなたわごとを言っておきましょう。

 では、マンガはどうかというと、基本的に726という番号です。これは、7芸術、美術に所属し、その下の72絵画の中に設けられた、726漫画、押絵、童画という分類になります。手塚治虫の漫画を読んでいると、マンガ家であることを自虐するようなセリフが出てきますが、日本という国としては、漫画は芸術、美術として扱うということになるでしょう。外国や国際的な分類でどうかは、ちょっとわかりませんが。

 あと、いわゆる18歳未満が閲覧不可能な漫画が、どこになっているのかは調べていません。雑誌形式なら、雑誌分類になると思うんですが。

たのしい悪知恵

 権威ある日本十進分類表によれば、ちょっとしたいたずらができます。

 たとえば、自分は学校の勉強とかは一切なにも興味なくて、アニメを見まくり、漫画を読みまくり、ライトノベルをもっぱらに読んでいるんです。本棚は単行本と文庫で埋め尽くされている、どうしよう教養がない。みたいな精神状態に陥ったとしましょう。

 ここで分類の出番です。ライトノベルは小説というくくりであり、番号であれば91の日本文学。漫画は、726。前述したように美術、芸術、絵画に当てはまります。

 だから胸を張って言いましょう。

 自分は文学と芸術、絵画をこよなく愛していると。三度の飯を間に合わせにしても、将来への投資を蹴っても、欲しい書画を追いかけることに情熱を持っていると。そして、それらに描かれた一般的な事実をさらりと述べていくのです。

最近は簡略化の傾向も見られますが、まだまだ漫画にもライトノベルにも様々な教養が入っています。異世界転生ものだって、主人公と読者に都合よく(わるく)ねじ曲げられてはいますが、歴史上の教養や政治的な考えがわりと入っています。いいものから、悪いものまで、この世に存在するあらゆることがエンターテイメントを成り立たせているのです。それらを軽くひけらかせば、あら不思議、芸術と文学をこよなく愛する、教養ありそうな人が誕生しました。

 実際、オタク出身の評論家的な人って、さまざまなことへの通底した知識を持ってる感じがするんですよね。

知識チェック

 自分が今何を知っていて、なにを知らないか、というのも、十進分類表でなんとなくチェックできます。国会図書館のNDLサーチを使えば、基本的に日本語で書かれた日本の本は、ほぼすべてどういう番号が振られているのかわかるのです。

 大概めんどうくさいけど、読んだ本のタイトルやISBNコードを記録しておいて、一個一個調べていけば、自分がどの分類の本を読んでいるのかが分かります。

 つまり、どの分野の知識があり、どの分野が抜けているのかが分かるのです。

 ネットでもどこでも、もしも無知をさらしたくないなら、本棚にない番号のニュースとか論争には、参加や言及しないほうがいいのかも知れません。あるいはあくまで教えてもらうという立場でいたほうがいいのかも。無知をさらしてでも動くべきときだって、あるとは思いますがね。

 作家志望の私は、数年前から、通読した本については一個一個分類を調べて記録してきています。一部適当になっていたり、間に合ってないものもありますけど。

 自分の本棚をちらっと見ると、1分類に所属する神話や宗教、2分類の歴史、3分類の社会科学から通じる社会病理、軍事なんかが多い印象です。一方で、4分類の自然科学系はスッカスカです。5分類の技術、工学、6分類の産業も少ない。これで、どうやって食っていくつもりなのでしょうか。典型的な文系脳です。
 これから、人類を救うか滅ぼすかの自然科学について、全く知らないのはどうかと思うので、意識して増やしていきたいところです。

 ちなみに、電子書籍でしか存在しない本に、この番号が振られているかは、私にはわかりません。もしないというのなら、今現在出版も興隆していて、革命のようにもてはやされている電子書籍は、日本という国の図書館上の基準で分類する価値はない、ということになるのかも知れません。

 ただ、電子書籍でも流通量が一定を超えたものは、出版業界で一定の需要があるとみなされ、早晩出版社から声がかかって本での出版となるでしょう。そのときは番号がついて国会図書館に収められることになり、この国で本として出版される知識の体系に加わることができます。こうして思えば、紙の本というのは、一定の価値があると考えられているような気もします。

NDCはなぜ必要?

 本は知識を伝えるといいますが、今や人間社会を成り立たせる知識は膨大になりました。体系立てて理解することは必至となり、分類が必要になったということでしょう。

 分類すると切り捨てられる大事なことはありますが、といって、まったく分類されてない知識の山から、自分の好きなことを抜き出すのは難しいものです。NDCは、図書館司書や、それに類するお仕事をなさっている方には常識でしょうが、一度気にしてみると面白いかもしれません。

 あと、項目を詳細に見ていくと、どういうことがこの国によって大切にされ、されてこなかったか、あるいはタブーとされてきたかもわかる気がします。

 たとえば、イスラム教は世界宗教であり、現代の世界を理解するうえで非常に重要なはずですが、16の宗教全般の中に含まれ、独立した1xの分類で扱われていません。あまり研究がされず、知識を深めてきたわけでもないということではないでしょうか。ヒンズー教も独立分類がありませんね。儒教、道教など一見この国と関係が深そうな宗教もありません。対して、17が神道、18が仏教、そして19がキリスト教というのは、この三派は国にとってより重要だということではないでしょうか。

 あれがない、これがある、なぜこの本がこの分類、といった発見があるでしょうから、眺めまわしてみると面白いかもしれません。

 最近の社会情勢の変化や、実際に本を読んでいる私たちの気持ちに対して、案外冷淡でカチコチな権威主義的本の世界を垣間見ることができるでしょう。

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