『食べる人の献立学』⑤
今回は具体的に「食事をするときに、献立という発想をどう活かしていくのか」日々の食事選びのためのアイディアをご提案していきます。
じつは食べる人にとっての「献立という発想」を、実際食事を選択するために活かすとなると“食事を作ることが主”な私にとっては、アタマが混乱しそうです。コロナ禍になって外食をほとんどしなくなっているし、家族以外と食事をする場面もなくなっているので「食事を作らないでいいシチュエーション」は極めて少なくなったままです。食事を「食べるためだけに選ぶ感覚」からすっかり遠ざかっているので、ここは出来るだけ“食べることに集中するつもりで”まとめてみます。
7.曜日でメニューを定番化
まず「曜日で食事を固定すること」をご提案します。1日の食事の中で、食材のダブりを防ぎながら食べるものを決めることで、栄養の偏りも防げやすくなります。あるいは曜日で食べるものの傾向を決めておくだけでも「食事先の選択時間短縮」にもなると思います。単純に月曜はパスタ・火曜はカレーなどの「料理先行」でもいいと思いますし、水曜は和食・木曜は中華など「献立の雰囲気だけ固定」くらいでもいいと思います。
8.食事の特長を知っておく
“お腹が空いた。何食べよう?”となったときに、食べたいものがあったらそれがいちばんだと思います。そのときに「食べたいものの特長」が思い浮かぶようになると、お店に行ってその料理を注文するときに“献立としてどうか?何を選んだら栄養バランスがよくなるか?”まで考えられるようになるのが「選食力」です。もちろん食事(休憩)時間や予算など、栄養的なことだけを優先できないとも思いますが、食事を「選んで食べることに集中したい」そして「選んで食べることをより長く楽しみたい」と思うなら、ほんの少しだけ“今食べようとする食事が「献立として」どうか…?”客観的に振り返っていただけたらと思います。今食べようとする食事を献立的に充実できないときは、次の食事で「足らなかった食品や栄養素のカバー」を試みていただけたらと思います。
例えば「和食」はカロリー的には低めの料理も多いのですが、煮物に汁物の組み合わせだと塩分が高くなってしまう可能性があります。「中華料理や韓国料理、東南アジアのエスニック料理」は、料理によっては野菜が多くとれる反面、油と塩分が多い場合もあります。「イタメシ」は選び方によっては野菜の多い献立に出来たり、魚介類やオリーブオイルのような「いい脂肪酸を含む油」の摂取につながる可能性を含む反面、乳製品を日ごろからよく食べる人には、動物性脂肪が多めの食事になる可能性や糖質多めの食事になりやすいなどの特長があります。“特長を知った上で食べること”は、献立という考え方をさらに健康づくりに役立てる食べ方につながります。
日本人は外国の料理もじつに美味しく、比較的「本場の味」を尊重しつつ食生活に取り入れるのが本当に上手いと思います。せっかくバラエティー豊かな食生活を楽しめる土壌があるのですから、そこに「食べる人の献立学」を活かして、健康的な食べ方でより長く食事を楽しんでいただきたいと思います。
9.おわりに
栄養士になって就職した夏に、母が49歳で亡くなりました。胃がんでした。若かったので転移が早く、手術したときはもう手のつけようがなかったと後で知りました。当初病名は「胃潰瘍」と聞かされました。胃を全摘したので、食事制限はある程度“あって当然”と思っていました。しかし後になって改めて、医療的に食事制限が必要な状況に至ることは“ある意味手遅れ”であることを痛感しました。「何でも食べられること」は健康なのです。
予防医療に貢献する食の在りかた…とても大きなことにも思えますが、私は栄養士であり、主婦でもあり、母でもあります。そして「作る人であり食べる人」でもあります。まずは自分が「楽しく続けられること」を自分のカラダに試す気持ちで進めながら、これからも発信していくつもりです。花束のような華やかさよりも、日常的に見かける草花にも名前があることを知らせるような気持ちで…。
『献立学について』はこれで終わります。お付き合いくださって本当にありがとうございました。今後も食育や栄養士の仕事以外のネタでも書くことを続けて行きます。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
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