見出し画像

小学校教員採用試験の倍率低下におもう

はじめに

 みなさんは,教員採用試験の倍率低下に歯止めがかからずに,社会問題化しているのをご存じだろうか。特に小学校の採用試験の倍率低下が顕著である。2000年前後(現在45歳前後)のピーク時は10倍を超える自治体が多くあった。私も経験があるが,競争率が10倍を超えるともはや運や神頼みである。「えっ、何であの人が受からないの??」というレベルである。

もちろん、倍率が下がったことは団塊の世代が大量に定年を迎えて,採用数が増えたことも要因ではあると思う。加えて,受験者数も減少しているので教職を目指すこと自体に魅力が減ってきているのではないか。

私なりに教員採用試験の倍率低下で考えられる要因についていくつか考察してみた。

①教員免許更新制

教員の資質能力の担保ということで,安倍政権の下2009年度から導入された。この制度は教員免許の有効期間を最長10年間として,更新講習や新規免許状を取得しなければ,免許失効や免職となる恐ろしい制度である。更新期限2年前に3万円の自費と30時間以上の講習を受けなければならない。確かに,教育内容等は変遷していくものであり,更新講習からの学びは多いが,多忙な学校現場で30時間以上の講習を確保することは並大抵のことではない。22歳で教員免許を取得すると定年までに32歳,42歳,52歳と少なくとも3回は更新を行わないと仕事を続けられないことになる。さらに,免許の有効期限切れで臨時教員の欠員補充ができない事態も多々ある。

この制度の背景には大学の収入源の確保など我々にはうかがい知れないさまざまな利権があるのだろうが,10年以上経過して,現場の反対意見も多く,教員免許更新制は廃止の可能性が出てきたので動向を注視したい。

②教員免許取得のハードル

私の妻が小学校1種免許状取得に向けて,某大学で通信教育課程で学習をしているがとにかく取得しなければならない単位が多い。国語科指導法,算数科指導法,社会科指導法,教育課程,教育心理,・・・等々。おまけに,介護等体験,外国語指導法。これは小学校の外国語が教科化されたので,免許状取得に必須の単位となったためであろうか。妻は短大卒なので,2年間で卒業要件単位と小学校免許状単位を合わせて100単位近く取得しなければならない。また,現在はGIGAスクール構想に伴い,小学校では一人一台タブレット端末を持って学習している。これに伴い,次年度はICTに関する科目を2単位小学校免許取得要件に組み込むらしい。小学校の先生は子ども理解から,英語,情報までそんなにたくさんのことを求められるんでしょうか。こんなに単位数や負担が多いと,大学生は卒業を優先して,教職を諦める人が多いに違いありません。

③学校の業務の複雑化と職業の多様化

コロナ渦の中,通常業務に加えて,感染対策,リモート授業等々,学校現場では多忙を極めている。学校行事を中止するか,しないか。行事をするのであれば保護者は何人までにするかどうか等々,放課後の会議も長時間にわたる。また,教員の年齢構成も50才以上か20代か二極化していて,中堅の30~40代が少なく,考え方にどうしてもひずみが出たり,疎外感が生まれやすい傾向にあると言われる。

また,昔は教育学部や文学部を卒業して学校の先生になるのが良しとする風潮があった。今は,インターネットの普及に伴い,リモートワークを始め職業選択の幅が広がり,「相対的に」過酷な!?教職を目指す方が少なくなったのかもしれない。

それに加えて「給特法」という旧態依然の給与体系に縛られている。簡単に言うと,教育職員には残業代を支給しない代わりに,基本給の4%を上乗せしている。これが,定額働かせ放題と言われる所以です。

おわりに

これまでややネガティブなことをかいてしまったが,子どもがの笑顔や「わかった」といってもらえたり,「先生ありがとうございます」と保護者から言ってもらえたりするとやりがいを感じる。また,「同窓会によんでもらえる」ときは最高に幸せを感じます。

教育は未来を担う人材の育成です。教育職に対する処遇の改善を行い,やりがいを伝えることで一人でも多くの若者が教職を目指す社会になってほしいと考えます。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?