春、コーヒーの香りが漂う
冬が終わり桜も散る頃、色々なことを思い出す。
思い出したら、コーヒーが飲みたくなった。
そういう気温なのだ。
この時期特有の気だるい外気温。
風という飾りがあれば爽快に感じる、そんな気温。
こういう気温の何が嫌って、さまざまな匂いがはっきりと
姿を現してくるところ。
どこからともなく漂う香りは、昔仲の良かった友人が着ていた
ジャージの匂いだったり、引っ越す前の家の匂いだったり、
過去の匂いばかりだ。
そんなものばかりで鬱陶しく感じる。
せっかくの新しい季節なのに、初めて知る香りなんてどこにもない。
だからコーヒーが飲みたくなった。
コーヒーの香りはどんな時でも、モダンな空間へと導いてくれる。
湯気と一緒にゆっくり漂い続けるコーヒーの香り。
どんな思い出や気持ちも、コーヒーに溶けていく。