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【ネタバレあり】映画『アリー/スター誕生』感想【ブラッドリー・クーパーを観ろ!】

こんばんは。これです。2019年明けましておめでとうございます。今年も「これ」のnoteをよろしくお願いします。

さて、新年一発目のnoteも映画noteになります。今回観に行った映画は「アリー/スター誕生」。レディー・ガガ主演でアカデミー賞有力候補とも目されている一作です。

では、感想を始めます。なお、1937年のオリジナル及び2本のリメイク作はいずれも未鑑賞なので、それも踏まえて読んでいただけるとありがたいです。では、拙い文章ですがよろしくお願いいたします。


―目次― ・レディー・ガガとブラッドリー・クーパー ・ストーリーと音楽について ・不満点 ・「ボヘミアン・ラプソディ」との比較




―あらすじ― 自分に自信がなく歌手の夢を諦めかけていたアリー。有名ミュージシャン=ジャクソンとの偶然の出会いが、彼女の人生を大きく変える。――「君の歌は奇跡だ」 ウエイトレスから一気にスターダムを駆け上がっていくアリー。激しく惹かれ合うジャクソンと、全米のステージで一緒に歌う幸せな日々を過ごすが、次第に自分を見失っていき…。 愛と成功のはざまで、最後に彼女が掴んだものとは――? (映画「アリー/スター誕生」公式サイトより引用)


※ここからの内容は映画のネタバレを含みます。ご注意ください。



・レディー・ガガとブラッドリー・クーパー

今回、3回目のリメイクがなされた映画「スター誕生」。2018年版の主演はみなさんご存知レディー・ガガです。いくつもの名曲と奇抜なファッションで有名な彼女ですが、今回は映画に初主演。スターへの階段を上っていくアリーを演じていました。

正直観る前は舐めていたところもあったんですが、蓋を開けてみると歌唱シーンはもちろんのこと、普段のシーンでも抜群の演技を披露していました。興奮や悲しみをオーバーにし過ぎることなく表現していて、ジャクソンに恋するまなざしのいじらしさが可愛かったですね。個人的なお気に入りはジャクソンからギターの絃で作られた指輪を送られるシーン。あそこのアリーはただの恋する乙女でした。

それにやっぱりレディー・ガガってやっぱりオーラがあって、いるだけで画になりますし。まあそのオーラのせいで最初から「ああこれは売れるだろうなあ」感があって、「鼻が大きすぎてダメなの」って言われても、「何が?」ってなってしまったんですけどね。序盤のバイトのシーンなんて不釣り合いすぎて受けますよ。




次にアリーを見出すロックスター・ジャクソンを演じたのは「アメリカン・スナイパー」などでおなじみ、ブラッドリー・クーパー。とにかくこの人の演技がこの映画では輝いてました。ロックスターながらも落ち着いたソリッドな演技は堂に入っていますし、ワイルドな風貌とも見事にマッチしています。そしてその最大の魅力は重厚に響く低音ボイス。あんな渋い声で「もう一度顔を見たかった」だの「君が必要だ」だの言われれば誰だって惚れるにきまってます。反則ですよもう。

さらに、ブラッドリー・クーパーはこの映画でその渋い表情に反して、弱々しい一面も見せてきます。両親を失った孤独をアルコールとドラッグで埋め合わせ、映画が進むにつれどんどんと依存は深まっていきます。その哀愁が物悲しい。仮面をかぶって弱々しい姿は見せないようにしていたジャクソンですが、アリーの前では素の自分を見せられるようになり、ついにはか細い声でアリーに泣きつくところまでいってしまいます。落ち着いていたジャクソンの姿はそこにはありませんでしたが、それでもかっこいいのは本当に何なんでしょうか。ズルいですよ。

そして、映画終盤でジャクソンはある到達点に辿り着くわけですが、ここでの演技がとてつもなく素晴らしかった。カメラは首から上を映さないでシーンを進めるわけですが、体だけでもうどんな顔をしてるのかが分かる。カメラがジャクソンの顔を捉えたときには、あまり表情は変わっていないんですが、確かに悲しさ辛さがにじみ出ています。さらに、そのあとの正面のショットはもう圧巻。ジャクソンの切ない決断をした表情に思わず吸い寄せられていってしまいます。抑えた演技ですがすごくエモーショナルで胸にくるものがありました。他にもブラッドリー・クーパーはいくつも素晴らしい演技を見せていて、もう「ガガよりクーパーを観ろ!」って感じです。


「アリー/スター誕生」では、この二人がコンビになってストーリーが進んでいくわけですが、レディー・ガガとブラッドリー・クーパーの相性は抜群。それぞれが互いの魅力を十二分に引き出して、映画の魅力を一段階も二段階も上に引き上げています。二人が一つのマイクに向かって歌う場面はまさに象徴的。この映画はこの二人のコンビではなければ成しえなかったはずで、これはぜひとも観てほしいなと思います。




・ストーリーと音楽について

「アリー/スター誕生」では主演二人の好演も光りましたが、最大のストロングポイントとしてストーリーに紐づいた音楽を挙げないわけにはいかないでしょう。この映画の宣伝からして音楽が推されていましたがそれも頷けます。

まず、映画はジャクソン率いるバンドの演奏「ブラック・アイ」で幕を開けます。テンポの良いロックンロールが強固なバンドサウンドに乗って鳴らされるわけですが、ここでのブラッドリー・クーパーの歌声がクールでセクシーでものすごく上手くて。一気に映画の世界に引き込まれて行きます。

ジャクソンがライブを終えて入ったのは場末のドラッグクラブ。ここでジャクソンとアリーが出会います。ここでアリーが歌ったのが「ラビアン・ローズ」。艶っぽいメロディとレディー・ガガのパワフルな歌声が合わさって妖艶な雰囲気を作り出していました。そのステージが終わったあとにジャクソンが出演者にせがまれて歌った「メイビ―・イッツ・タイム」も郷愁を感じさせるメロディに、過去を捨てたような歌詞が乗っかりジャクソンというキャラクターを雄弁に語っていきます。

二人は仲を深め、スーパーの駐車場でアリーが曲を口ずさみます。それをジャクソンがアレンジしたのが、この映画のテーマともなっている「シャロウ」。「幸せな時には つい望んでしまう 変わることを」二人が交互に歌ったのちに一斉に歌うところで感情の高ぶりを感じます。静かな演奏が二人の魂の歌声を引き立てていました。



二人は一緒にツアーを回ることになり、ツアーは成功を収めアリーはソロデビューをすることになります。ここでジャクソンはアリーに「自分に嘘をつくな。すぐに見破られる」というアドバイスを送ります。しかし、テレビでアリーが披露したのはノリノリのダンスナンバー。一度は断ったダンサーを事務所の意向で再び入れたアリーに、ジャクソンは辟易する様子を見せていました。

アリーが音楽的な成功を収める一方で、ジャクソンは落ちぶれていきます。アリーという光に照らされ、どんどんと濃くなっていくジャクソンという影。その対比が辛い。映画のサイトで寺島しのぶさんが「才能は残酷だ」とコメントしてましたけど、まさにその通りだなって。あまりに強すぎる才能っていうのは他の才能を食べてしまうものなんだなぁって感じました。

その後、紆余曲折があり映画はいよいよラストシーンへ。最後にアリーが歌ったのはジャクソンが作った「アイル・ネヴァー・ラブ・アゲイン」というラブバラード。ここまでさんざ力強い歌声を響かせてきたアリーが最後はしっとりと情感を込めて歌いあげます。そしてフラッシュバックするジャクソンとの日々。「もう二度と愛さない」という歌詞がオーケストラの音色に乗せられて、観客を私たちを感動で包み込みます。悲しみから立ち上がろうとするアリーの強さが見れて、正直泣きそうになりました。すんでのところで留まりましたけど。

このように最初から最後まで「アリー/スター誕生」は素晴らしい音楽に彩られていました。他にも名曲、名シーンはたくさんありますし、ぜひともその目で確かめてもらえればと思います。




・不満点

ここまで述べてきたように、「アリー/スター誕生」は全体的にはいい映画でした。しかし、不満点が全くなかったわけではありません。この映画を観て私が抱いた不満点。それは「話がトントン拍子で進みすぎる」ということです。

ジャクソンがクラブに入ってアリーを見初める。二人きりで話す。アリーをステージに上げる。あれよあれよという間にソロデビュー、とまっとうなシンデレラストーリーをやるのはいいのですが、それにしたってアリーが苦悩しなさすぎです。アリーの自信のなさもあまり描写されていませんし、テンポを重視しすぎて、アリーのキャラクターの掘り下げが不十分になってしまった印象を受けました。

「アリー/スター誕生」では、アリーの苦悩を引き受けていたのは言うまでもなくジャクソンです。親がいないという孤独、人気に翳りが見え始めたという焦り、アリーの成功への妬みなどで、酒とドラッグに溺れ、おしっこまで漏らすという失態ぶり。こういったジャクソンの苦悩は見ていてつらいものがありましたが、個人的にはやっぱり主人公であるアリーに苦悩してもらいたかったというのは、正直あります。終盤で十分苦悩していましたが、もっと途中でも苦悩ぶりを垣間見せてほしかったところ。そうすることでラストで受けるカタルシスも変わってきますしね。でも、ウィキペディアを見る限り、オリジナル版からおおもとのストーリは変わってないみたいですし、もしかしたら私とこの映画の相性があまりよくないのかもしれないですね。でも、そんな私でも最後のシーンは感動して泣きそうになりましたし、実際泣いたという人が大勢いることも何ら不思議ではありませんね。観て損はしない映画だと思います。




・「ボヘミアン・ラプソディ」との比較

「アリー/スター誕生」は音楽映画としての側面も持っています。ここ最近でヒットした映画として思い浮かべられるのは「ボヘミアン・ラプソディ」ですよね。QUEENのボーカル、フレディ・マーキュリーの半生を描いたこの作品は興行収入50億円を突破。大ヒット作となりました。ここでは最後に「ボヘミアン・ラプソディ」と「アリー/スター誕生」の比較を行ったうえで感想を締めさせていただきます。



まず、「ボヘミアン・ラプソディ」と「アリー/スター誕生」は同じ音楽映画ですが、そのアプローチは全く異なります。「ボヘミアン」は曲が先にあって、曲に合わせて脚本を書いたいわば曲が主役の映画。一方「アリー」は脚本が先にあって、脚本に合わせて曲を書いたいわば脚本が主役の映画です。それぞれ好美はあると思いますが、個人的には「ボヘミアン」のアプローチの方が好きですね。脚本に合わせて曲を書いた「アリー」の音楽が映画にあっているのはむしろ当たり前。それよりかは「ボヘミアン」の音楽と脚本がばっちりかみ合った瞬間、まあ具体的に言えばライヴエイドですけど、の方が爆発力があったのでその分感動も大きかったというのが理由です。

さらに、先の項でも述べましたけど、アリーとフレディではやっぱり苦悩の差があったのかなと。程度としては(比べられるもんじゃないけど)アリーの方が重かったんですけど、かけられた時間はフレディの方が長かったと思います。そのぶんライヴエイドでの放出が大きかった。さらに、ジャクソンとQUEENのメンバー3人も同じく苦悩してましたけど、「ボヘミアン」ではメンバー3人ともがライヴエイドのステージに立っているわけで、ここで「アリー」と異なっています。「ボヘミアン」では4人分の苦悩がカタルシスとして解放されたというのも、私が「ボヘミアン」の方が好きな理由ですね。とはいえ「アリー/スター誕生」も全く悪い映画ではないです。それのことは私が保証しますので、どうか安心して映画館に足を運んでいけたらと思います。蛇足失礼しました。




以上で感想は終了となります。「アリー/スター誕生」、主演二人の演技も、音楽も素晴らしいですし、感動する映画ではあるので年末年始に観てみてはいかがでしょうか。オススメです。

お読みいただきありがとうございました。


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