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【試験運用投稿論考】乃木坂46を通して保守思想を考察する~連綿と紡がれる伝統と絆~

「乃木坂らしさ」が示唆するもの


音楽ナタリーより引用①

 放送作家で作詞家の秋元康がプロデュースしている我が国を代表するアイドルグループ「乃木坂46」は、令和5年でデビュー11周年を迎えた。デビュー当初は、当時のメンバーで一期生の生駒里奈(秋田県出身)をセンターに据える楽曲が多く、「乃木坂46といえば生駒里奈」という印象が強かった。しかし、二期生の加入など新規加入メンバーが増えていく中で、生駒里奈のみならず他のメンバーも頭角をあらわして、多彩な才能が輝き始め、白石麻衣や松村沙友里、橋本奈々未が「御三家」と呼ばれるなど、様々なメンバーに光があたるようになり、「乃木坂46といえば?」という問いに対して、様々なメンバーの名前が挙がるようになった。数々の楽曲も国内外で評価されていく中で、「乃木坂らしさ」を確立していき、世間に浸透していくようになった。この「乃木坂らしさ」の定義は難しく、メンバーだけでなくファンもそれ以外の人もそれぞれ解釈や受け止めが異なるため定義は難しい。しかしながら、11年の歴史を紡いでいくなかで、「乃木坂らしさ」は徐々に確立され、感覚として広く共有されていると思う。現役メンバーもそれぞれが思う「乃木坂らしさ」を暗中模索、試行錯誤しているから、勝手に定義するべきではないだろうが、筆者なりに定義するならば、「可憐さと芯の強さ」であり「伝統と先進性の融合」だろう。この「らしさ」を模索している彼女たちから、「保守思想のあるべき姿」を感受した。本稿では、乃木坂46を通して保守思想を考察し、我が国における保守思想のあるべき姿を提起したい。
 筆者が乃木坂46の11年間から感じ取り、近年の彼女たちの活動を通して考えたことは、「共同体の継承」に必要不可欠な要素である。令和5年2月22日から26日まで横浜アリーナで開催された「乃木坂46 11th YEAR BIRTHDAY LIVE」でも色濃くあらわれていたが、乃木坂46というひとつの共同体を守り抜く、歴史を紡いでいくというメンバーの責任感や覚悟である。しかし、これには裏付けが必要である。それは、乃木坂46というひとつの共同体への自信や誇りを持っていることだ。愛着、愛情という言葉にも換言できるだろう。そういったものをメンバーひとりひとりが持つには、抽象的ではあるがビジョンを模索し続ける姿勢が求められる。それが「乃木坂らしさ」を模索するということであり、今回の公演でも伝わってきたが、メンバーなりに模索、探究している姿勢である。この共同体の「らしさ」を模索、探究し続ける姿勢は、保守思想のあるべき姿を体現している。これを国民国家や我が国に置き換えると、愛国心やナショナリズムを国民が確かなものとして持ち、確立するためには、国家観や建国の精神を国民が共有することが必須となってくる。乃木坂46の11年間の歴史を現役メンバーが史実として知り、先輩メンバーやOGたちが語り継いでいるが、我が国では果たして「日本民族の共同体としての歴史」を正しく、自分事として語り継ぐことが出来ているだろうか。

乃木坂46メンバーの当事者意識からみる「共同体の当事者意識」


音楽ナタリーより引用②

 本稿を執筆している現時点において、令和4年2月24日に始まったロシアによるウクライナ侵略は未だに続いている。当初、ウクライナの首都キーウ(キエフ)は三日でロシア軍の手に落ちると言われていたが、ウクライナ軍とウクライナ国民の激しい抵抗と欧米各国からの軍事支援や財政的支援によって陥落はしておらず、現在では同国東部において、激戦が繰り広げられている。ゼレンスキー大統領を中心とする同国政府の強い国家意志、自由民主主義を守り抜くという国民の意志は、ウクライナという国家への愛国心があるから内外に示せていて、その愛国心を持つためには、彼らウクライナ国民が旧ソ連構成国時代も含めて自国の歴史を正しく、自分事として語り継がれていて、学んでいることが源泉といえるのではないだろうか。さて、一方で我が国はどうだろうか。中国共産党政府の領域拡張主義や中華覇権主義によって、我が国を含む極東の安全保障環境は日々悪化し、厳しさを増している。そこで気になるデータがある。ロシアによるウクライナ侵略から数か月が経過したころに行われた、雑誌「MAMOR」の令和4年8月実施のアンケート調査によれば、「もし日本が侵略されたら戦いますか?」という設問に対し71.8パーセントが「戦わない」と回答している。「戦わない理由」としては、「何もしない。自分が戦わなくても自衛隊やアメリカ軍が何とかしてくれる」(20代・男性)、「服従する。嵐が過ぎ去るのを待ちます」(20代・男性)、「逃げます。アメリカなら安全かも」(30代・男性)、「逃げます。安全な場所を探して逃げ続ける」(20代・女性)などが挙げられている。一方で、「日本の防衛問題に興味がありますか?」という設問に対しては、「はい:46.3% / いいえ:53.7%」となっている。一見すれば矛盾しているようにも見ることのできる結果だが、乱暴なまとめ方だろうが「国防に対しての当事者意識」や「自分事として国防を考えている」という意識が希薄とも解釈できる。そして「なぜ日本を守らねばならないのか?」という問いにいきつく課題である。この問いこそが、「日本民族の共同体としての歴史」を正しく、自分事として語り継ぐことが出来ているかどうかという論点であろう。
 乃木坂46の前キャプテンで、今年2月26日で卒業した最後の一期生の秋元真夏は、三代目のキャプテンに三期生の梅澤美波を抜擢し、任命した。自身の卒業コンサートにおいて秋元は新任キャプテンの梅澤に対しての手紙のなかで、「メンバーのみんなにも最後の、乃木坂人生最後のお願いがあります。キャプテンにはどうしても踏ん張らなきゃいけない時があります。だから、ウメのことを絶対に全力で支えてあげてください。つらい時はそばにいて寄り添ってあげてください。これが最後のお願いです。」と語っている。つまり、全員が当事者意識を持っていることの大切さを現役メンバーに説いたのだ。これは一期生として11年間の乃木坂46の歴史をリアルに知っているからこそ出てきた言葉であるし、秋元の前任の初代キャプテン桜井玲香(一期生)の葛藤や苦悩を傍で見続けてきたからこそ言える言葉である。乃木坂46というグループ、共同体は全員が当事者意識を持たねば守れないし、伝統の継承はできないと伝えたかったのではないか。筆者はそのように受け止めた。

自分事として


日章旗(フリー素材)

 対して我が国では、「日本民族の共同体としての歴史」を、国史というものを正しく、自分事として語り継ぐことが出来ているだろうか。筆者はそれに対して懐疑的である。筆者が受けてきた歴史教育は、勿論「自虐史観」という批判も当てはまる教育だったが、同時に「年表を過去から現代へなぞっているだけの歴史教育」であった。「日本民族の共同体としての歴史」、国史に対して、血の通った教育ではなかったことは確かだし、客観性と当事者性のバランスが欠けているものだった。そのような教育では、我が国に対して健全な形では誇りや愛国心、ナショナリズムを持てないし、ウクライナ国民のように自国を守るために戦うことはできない。他人事かのような歴史教育ばかりでは、国防に対しても他人事になってしまう。もちろん、全体主義の国ではないので、我が国の歴史に対する評価の仕方や受け止めは、国民ひとりひとりに任されている。だが、評価は多種多様であったとしても「日本を守りたい」と国民が自然な形で自覚できる、我が国の「らしさ」を国民各々が語れるような、そのような教育でなければならない。
 伝統の継承は難しい。国家を未来に紡ぐことは難しい。しかし、その難題に向き合って、難題の解の導出を試行錯誤するのが我が国の保守思想でもあると思う。歴史とは、先人たちから連綿と受け継いできた絆であるし、当事者意識を持つとは、現代日本を生きる国民同士の絆ともいえる。乃木坂46という我が国を代表するアイドルグループとして11年間も輝き続け、前キャプテンの秋元が、「素敵な後輩に囲まれて、最後の日を迎えることができて、本当に幸せです。生まれ変わっても絶対乃木坂46になりたいし、乃木坂46のキャプテンを務めたい。それぐらい大好きな場所でした。11年間、本当にありがとうございました」と語って卒業していったのは、グループに対して当事者意識を持ってひたむきに「乃木坂らしさ」を模索、探究してきたからこそ語れたことではないだろうか。そして「アイドルとして世代交代が難しいと言われる大人数のグループですけど、乃木坂46はちゃんと世代交代ができたんじゃないかなと自信を持って言えます」と彼女は胸を張って言えるのは、グループに対する誇りや愛情から来るものだ。その世代交代がうまく出来たのは、ひたすらに先輩メンバーが後輩メンバーに謙虚に、そして責任感を持って、当事者意識を持って接してきたからだ。もし上から目線で、傲慢で、「年上マウント」をするような態度であったとしたら、後輩メンバーは聞く耳を持たなかったはずだ。現に4期生の賀喜遥香は「私は乃木坂46に憧れてグループに入ってきたからこそ、素敵な先輩方の隣に立っていいのかなと苦しくなるときもあったんですけど、そういうときに真夏さんは笑顔で助けてくださって。大切な言葉がすごく心にいっぱい残っているので、その言葉を大切に持ちながら乃木坂46を守っていきたいと思います」、3期生の久保史緒里は「笑顔でご卒業おめでとうございますと言おうと決めてました。だけど本当に今日が来たら『行かないで』と思っちゃいました。それくらい真夏さんの存在が大きかったし、乃木坂46がこんなに温かいグループで言い続けられたのは、真夏さんがいてくれたからです。これからはそんな真夏さんみたいな優しさを持って、後輩たちと一緒に乃木坂46を強くしていけるようにがんばります」と語っている。謙虚さを持って後輩に接することは、当事者意識を持っていることである。そのことが何よりも「乃木坂46 11th YEAR BIRTHDAY LIVE」の全日程を通して伝わってきた。

保守思想に必要なこと

 我が国の保守思想に必要なことは、謙虚さと当事者意識がイコールの関係になった、血の通った歴史観や国家観である。今年で我が国は、神武建国から2683年になった。その歴史に対しての謙虚さと未来を担う人材への謙虚さを、保守思想と真剣に向き合うのであれば自分自身に問うていくべきではないだろうか。

参考文献

「大好きな場所でした」秋元真夏が信条貫き晴れやかに卒業、後輩に伝えた“乃木坂46人生最後のお願い” (音楽ナタリー)
https://natalie.mu/music/news/514439

乃木坂46最後の1期生・秋元真夏、11年間のアイドル人生に幕 西野七瀬らOGからのサプライズに涙&急遽曲数追加の対応も<セットリスト> (モデルプレス)
https://mdpr.jp/music/detail/3622796

【オフィシャルレポ】秋元真夏、リスペクトを集めて卒業 “生まれ変わっても絶対に乃木坂になりたい” #ototoy
https://ototoy.jp/news/110713

秋元真夏から乃木坂人生最後のお願い「ウメのこと全力で支えてあげて」/梅澤美波への手紙全文 (日刊スポーツ)
https://www.nikkansports.com/entertainment/news/202302260002045.html?cx_testId=103&cx_testVariant=cx_1&cx_artPos=4&fbclid=IwAR2KtiEGPysybxQwzBiWxexvSxt6Hwbdt4A5sKxjG1kQsN-l5Z5_Pi2f4nc#cxrecs_s

日本侵略は「自衛隊が何とかしてくれる」戦わない若者たちの主張
(MAMOR)
https://mamor-web.jp/_ct/17580906


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