クロスオーバー二次創作はいいぞ
私は二次創作鑑賞を嗜むタイプのエンタメ作品ファンです。形にすることは滅多にないけれど、数多の作品を題材としてふんわり練り上げた二次創作空想を脳内で長年遊ばせてもいます。
特に心を掴まれるのは『書き手(即ち、原作の受け手)のオリジナリティ』が色濃く練り込まれている作品です。
そんな訳で今回はnoteの場を借りて皆様に『クロスオーバー二次創作』についての説法をしていきたいと思います。
コラボ、クロスオーバーといえば、公式作品としても無数の素晴らしい作品がありますよね。
ニチアサスーパーヒーロータイム作品ではシリーズ前後作とのコラボはもはや定例、その他も様々なコラボ企画が見られます。
そして『スーパーロボット大戦』は言うまでもなく長期間愛され続けている公式コラボゲームシリーズですね。
種々のソシャゲでも多彩なキャラクターたちがコラボ・ゲスト出演を果たしています。
公式サイドが関与するコラボ作品は本当にありがたい供給。それは大前提です。
ですが私は『ユーザー・視聴者による趣味のクロスオーバー二次創作』でしか得られない栄養をとりわけ愛していると叫びたい。
ここからは私個人がクロスオーバー二次創作のどこを魅力として捉えているのかを示していきます。
公式サイドにより展開されるコラボ作品は大抵の場合『商品』です。
商品として外さないために――もちろんそれだけでなく権利の関係などもあるのでしょうが、馴染みの良い作品同士が組み合わせられているように思えます。
同一シリーズ内の作品同士。掲載雑誌が同じ。ジャンルが同じ。更に言えば作者が同じ。
そうでなくても、ある程度は原作が纏う空気に親和性がある作品同士が共演する傾向がないでしょうか。
もっとはっきり言えば、ファン層が被る、なおかつビジネスとしての矛先が大体同じ方向を指す作品同士が。
勿論そうでない場合はあるでしょう。でもその場合は異彩を放つことそのものにより、コラボ元に新たなお客様を呼び込むという効能を発揮していると考えられます。ハジケリストな方々などはこういう役割が得意そう。
異彩というほどではなくても大きく輝くもの×大きく輝くもの、の相乗効果が期待できる組み合わせというか。個人的には最近発表された初音ミク×ポケモン連作なんかがこれに当たると感じています。
でもファンメイドのクロスオーバー作品なら、そういうものは全部無視できます。
少年誌掲載のスポーツ漫画と、アイドル系ソシャゲの登場人物が共通の趣味のもと仲良く交流したり。
特撮ヒーローと、BL漫画の登場人物と、推理小説の登場人物が職業を共通項として協力したり。
ファン層が全然被らなくても、知名度が釣り合わなくても、更にそれが複数でも。
二次創作者がそれにときめきを覚える取り合わせなら、何でも!
ときめきだけで構成できる。これです。
で、二次創作者が何にときめきを覚えるのか。
何処にときめきを見出した結果、その作品・キャラを共演させようと望んだのか。
ここが本当に人それぞれだからこそ、クロスオーバー二次創作はオンリーワンの吸引力を発揮するんです。
一色の光はプリズムを経由することで虹色に分光する。
原作を光源、プリズムを受け手の心として、原作の中に何色を見出すか。その色のうち、どの色を美しいと感じるか。
他の光源からは何色を見出すか。複数の光源のどこに同じ色を見出すか、あるいは異なるからこそ並べるとより美しいだろうと思わせる色の取り合わせに気付くか。
ちょっと実際のプリズム分光と照らし合わせると不適切な比喩かもしれませんが、言いたいのはそんな感じの精神です。
あるいはハーブティーかな。素材も分量も全てが秘伝、オリジナルの。
とにかく、自分だけの最高の作品・キャラの組み合わせを見つけ出したとします。
それをどのように組み合わせるか。ここでも二次創作者の個性が剥き出しになります。
例えば、世界観のすり合わせ。
仮に、魔法が出てくる作品同士をクロスオーバーさせたいと思ったとします。しかし、各作品における魔法の定義はいくらか異なるといった場合。
割り切って定義をどちらかに完全に寄せるのか。各作品の掲げる定義の中間と見做せるような定義をクロスオーバー二次創作用に設定するのか。その配分はどちらに寄るのか、意地でも寄らせず中立を目指すのか。別ベクトルに割り切ってそれはそれ、これはこれで両立させるのか。
どの方向性を選ぶかによって、その舞台で出力される物語も異なってきますよね。
あるいは、別作品のキャラ同士の関係性の解釈。
いつどのように出会ったか。仲は良いのか悪いのか無関心か。お互いをどう呼び合うのか。同じ時間をどのように過ごすのか。
二次創作者の各キャラクターへの解釈を、当人が抱いている人間関係のオリジナル計算式に代入した結果、どんな情景が出力されるのか。
原作から読み解ける部類の『正解』はないからこそ、一ユーザーの解釈が全ての答えを描くことになる。
……そのオリジナリティこそが美味しいんです。
クロスオーバー二次創作でしか得られない栄養素とは結局何なのか。
大きな要因として『商売ではないこと』が関わっているのかなと思います。
商売ではない。つまり、採算やマーケティングを求めない。即ち――受け手の愛、情熱、こだわり……そういった衝動の塊として具現化できる、ということ!
二次創作は何でも、というか商売ベースではない一次創作も含めてそれは同じですが、クロスオーバー二次創作はそれを具現化するために通す『自分だけの解釈フィルター』の種類が多いことが魅力なのかなと思いました。
これまでの人生でどんな作品に触れてきたか。そのうちどの作品を特に好ましいと思ったか。その作品の中のどの要素が好きか。好きな要素同士であったとしても、どの要素の掛け合わせが自分にとって好ましい組み合わせになるか。望ましい掛け合わせの方法は何か。
こういった多数のフィルターを通って抽出された一滴。
多くの人の口に合うものではないかもしれない。
でも、他でもない自分自身にとっては最高の一滴。
そして他の人が抽出した一滴についても、私の口には合わないかもしれないけれど、それを表現するための営み、愛、情熱そのものを尊いと思うし。
私の口に合えば……それは得も言われぬ甘美な雫として陶酔をもたらすのです。
なので、この文章に目を通してくれた皆様も。
自分だけの最高のクロスオーバーシチュエーションがもしも胸の中にあるなら。それを現出させることを己の倫理観において許可できる範囲であるなら。
ネタの片鱗だけでも外界に放出すれば……それがどこかの誰かにとっての恵みの一滴にきっとなるんじゃないかなと、そう思います。
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