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すべては、観察から始まる

ミルトン・エリクソンの催眠療法入門 第Ⅰ章 解決志向誘導の原則

1.観察して、その反応を知る

 ミルトン・エリクソンは、観察を最重視していたようです。

 私たちが他者を見るときに、多分に、私たち自身の勝手な見方で見てしまいます。例えば、自分の道徳に照らしたり、昨日読んだ本のハウツーに照らしたり。

 しかし、それは、自分の目も前にいる、その人から離れる行為になってしまいます。まずは、目の前にいる相手をよく観ること。

 ミルトン・エリクソンに直に会い、共同で研究をした、日本の催眠の権威で臨床心理士1番の成瀬悟策先生に、かつて訊いたことがあります。

 「先生、心理療法の極意は何でしょうか?」

 すると、先生は…

 「認識することじゃないかなぁ」と教えてくれました。もちろん、それ以上詳しくは教えてはくれませんでしたが、ミルトン・エリクソンも同じことを実践していたのではないかと思うのです。

2.情報は頭の外にある

 私たちは、つい、思考に頼ってしまいます。そのほとんどは、過去のどこかで学んだり体験した知識や経験の破片でしょう。しかし、そこに、答えはないということであると思います。

 いくら、過去を参照し、そこからいかにも確からしい理論や経験を当てはめても、今目の前にいる人にフィットするはずがありません。何せ、全く同じ人間、同じ気持ち、同じ体験はないのですから。

 とにかく、目の前にいるその人を観る。自分の頭の中の情報からは一旦離れる必要があります。

3.観察し、その人の反応性を知る

 とにかく目の前のその人を観察する。そうすると、その人が世界に対してどのように反応しているかが見えてくる。

 10代後半に小児まひに罹り、体がほとんど動かせなかったミルトンは、自分から何かを働きかけることが難しく、それは言葉を発することもそうであったようです。

 そんなミルトンが、相手に影響を与えようとした時に何をしたか。それはひたすらに相手を観察し、相手の一挙手一投足から、その人が次にどのような反応を見せるのか推測し、その先に最低限の布石を打つことであったでしょう。

 私たちは、自分で考え過ぎず、その答えは100%相手の中にあると決め込んで、じっと観察しつつ関わることが必要なのです。

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