寄せ集め問題とファン
寄せ集め問題
BUMP OF CHICKEN。私の大好きなバンドです。こんな文章わざわざ読む人はもうすでにバンプのことは十分ご存じでしょうから説明は省きます。本当に大好きなんですよね。
まだ小学生の頃、朝のニュース番組のエンタメコーナーで紹介されていたrayのmvを見たときに受けた衝撃たるやもう。そこからコツコツcdを買って、ライブに応募して、フェスに見にいって、高校の頃にはレスポールスペシャル手に入れてコピバンやってたりしました。オンリーロンリーグローリー、supernova、天体観測、メーデー、ロストマン、ガラスのブルース、あとなんかやったかな。
まあ私の好き好き具合なんて別に瑣末なことでして、つまり何が言いたいって筆者にとってとんでもなく多大な影響を与えてくれたミュージシャンだということです。人生変えられたと言っても全然過言じゃないしいまだに変えられ続けてる。彼らの音楽のない人生ってのは想像するのが難しい。電気水道ガスBUMP。重要度で言えばインフラとさして差はありません。
そんな彼らの待望のニューアルバム「iris」の収録曲が公開されました。見てみましょう。
01. Sleep Walking Orchestra
02. なないろ
03. Gravity
04. SOUVENIR
05. Small world
06. クロノスタシス
07. Flare
08. 邂逅
09. 青の朔日
10. strawberry
11. 窓の中から
12. 木漏れ日と一緒に
13. アカシア
名曲揃いですね。
この情報解禁に端を発し、x上であるポストがプチ炎上(?)を起こしていました。
私はこの投稿、正直言って強く共感しました。そう、知ってる曲だらけなのです。前作に引き続き。自分でプレイリスト組めるなこりゃと。
しかしどうもx上では非難轟々というか、かなり厳しい反論意見が散見されたように感じられます。その多くが「寄せ集め」というワードに強い嫌悪感を抱いているようです。こんな素晴らしい楽曲揃いなのに!とかメンバーは日々タイアップやツアーをこなしながら頑張っている!とか。なのに寄せ集めなんて言い方あんまりだというのが大方の意見。なるほど。
でもなんか、そこじゃなくない?っていうが私の感想です。みんな一段落目のキラーフレーズに引っ張られて熱くなってるけど、本当の問題は二段落目の「楽曲の素晴らしさと作品性の乖離」なんじゃないですか。投稿者さんはこの後もツリーで所見を述べてらっしゃって、別段そこに彼らを強く非難するような意図はなく、好きが故の一意見だと私は受け止めました。
サブスク大航海時代、アルバムをリリースするという行い自体その最善解を見出せていない現状があると思います。時代はシングルぞ!みたいな空気感、日々音楽を聴いて暮らしていれば説明せずともなんとなくわかるでしょう。そうした中でBUMPが選んだのは、既存の曲の順番を固定し一つの作品として名前をつけ再構築するという試み。なるほど、そういう解答か。作った張本人たちが楽曲を並べ、新たなストーリーを生み出す。この提案は、我々リスナーには天地がひっくり返っても行うことができません。だって楽曲制作に携わってないもの。メンバーが「ワテらの物語はこれやさかい!!!!」っつって出してくるものに意味があるわけです。
上記の内容を踏まえると、「あれ?新曲いらんくね?」みたいな気持ちも理解できます。でもやっぱり、新曲もっと欲しいな……とは思ってしまいます。学生時代、オービタとかリビングデッドとか聴きまくってた身からすると、わかりやすい一本の背骨があって、そこに肉がつき脚が生え隣に腰かけてくれた感覚が忘れられません。いわゆるコンセプチュアルと言いますか、アルバムを頭から最後まで途切れずに聴くという行為を経て得られた感情が、今も暮らしの原動力となっているのです。
この「コンセプチュアル」を実現するのにちょうどいいフォーマットが「アルバム」であり、そしてそのコンセプトをより洗練された、より説得力をもつものにできるのが「アルバム曲」であると考えています。なにもサージェントペパーズみたいな作品だけがアルバムだ!と言いたいのではなく、どんなアルバムにだってコンセプトはあるはずです。一曲を除き既存曲のみを用いたアルバムと、未発表曲を多く含んだアルバム、どちらがよりアルバムの本質に近づけるかと聞かれれば、後者のなるのではないでしょうか。今年のツアーを見てからだと尚更そう感じます。9曲目「青の朔日」に大逆転満塁ホームランを期待するしかないのか……?
もしかしたら、今のBUMPメンバーにそのような意図はないのかもしれません。別にそこまで全体の統一感とかこだわってないよ〜みたいな。そうなってくると、今「アルバム」というフォーマットをもってリリースに及ぶという行為の必然性が揺らいできます。それならむしろ、各サブスクのプレイリストをメンバー自身が選曲して作成したっていいと思いませんか?初期から現在までのあらゆる楽曲を持ち寄って並べ、新たな物語性を付与する。既存曲だけならこれができるし、何より大変興味深いです。バンド公式アプリもあるようですし、いかがでしょう。
アルバムとしてリリースするからには、せっかくの背骨を生かして欲しい。生かすためにはそれまで手に入れたパーツを使うのもいいけれど、新しい部品を取り入れてみるのも効果的ではないか。かつてそれらが血液となって作品を駆け巡り一つの命を吹き込んだように。エンタメコーナーの衝撃から10年を経た、端くれリスナーの独り言です。
ファン
さて、ちょっと話の毛色は変わりまして、件のポストに反応していたリスナーについて思ったことをまとめてみます。
そもそも、「寄せ集め」というフレーズだけに着目して過剰に反応している方が多い印象がありました。寄せ集めとは、規律や統一感などを持たず、バラバラのものを一箇所に集めたことを指す言葉だと考えます。そうした意味からするに、元のポストが間違った内容を発しているとはあまり思えません。ただどうしても、マイナスなイメージをこの言葉に抱く方が多いのもわかります。しかし、だからといってそんなに熱くなることか…?というのが正直なところです。
きっと、リスナーには心優しく穏やかで純粋な方が多くいらっしゃるのでしょう。そんな方々の大事な大事な宝物を、自分にとってネガティブな言葉で表現されたために、何ポストにも渡っておかんむりになっていることと存じます。ただ、ご理解いただきたいのは別に言いたいのは「今作も寄せ集めじゃねえか!!!!」ってことじゃなくて、「楽曲それぞれは素晴らしいけど、アルバムとしての意味合い薄れちゃってないかい?」ってとこなんです。焦らず、最後までポストを読んでみていただけませんか。一番終わりのツリーまで目を通せば投稿者さんにバンプに対する敵意とか蔑みとか嫌悪はないと十分理解できるはずですし、一つ目のポストだけでも作品を卑下する意図はないと感じられると思います。「自分が好きなものを貶されて悲しい、こんなリスナーがいるなんて…」と思った方、ぜひもう一度読んでみてください。
この投稿を受け散見されたのが、「聴いてないのにわかったように言うな」、「嫌ならライブ来んな」、「メンバーの事情も考えろ」、「批評なんて素人にできるか」というような反論です。
「聴いてないのにわかったように言うな」、これは確かにその通りかもしれません。現時点で私は先述の通りアルバムには未発表曲が複数必要というスタンスをとっていますが、いざリリースされた本作を聴いてその主張が変わる可能性も十分あります。
「嫌ならライブ来んな」、これは横暴でしょう。まさに「寄せ集め」というワードだけに脊髄反射しているようですが、繰り返し述べているように元ポストの投稿主にバンプを悲観するような意図はありません。メンバーにも運営にも一人のリスナーにも、来場者を選別していい権利などありません。
「メンバーの事情も考えろ」、これもなんだか同意しかねます。確かに毎年のようにタイアップやツアーを持つ彼らは多忙であるとは思いますが、その調整までリスナーがすべきとは思えません。新曲だせ!ライブしろ!などとメンバーへの過度な要求が横行しているようなら対策を講じる必要がありますが、リスナーがそのような行為を行なっているような現状は確認できません。そもそも彼らも40代のいい大人、バンドの意思決定など十分に行えるはずです。あんたお弁当持ったの?教科書は?クラスでは仲良くやれてる?なんて、お母さんじゃないんだから。メンバーへの過剰なまでの配慮は無意味ですし、結果的に彼らを卑しめることにもつながりかねません。
「批評なんて素人にできるか」、私は逆に、素人こそ積極的に批評に参加するべきだと考えています。批評と聞くとなんだか難しい印象がありますし、現に私もそう感じています。しかし、多くの人が良い点・悪い点を指摘していくことがそのものの価値、またそれ以前の、あるいはそれ以降のものの価値を決めていくのだと思います。価値を決めることは重要です。何事にも基準があるからこそ、自分自身を形作ることができるのです。見知らぬ誰かの批評を鵜呑みにしてばかりでは、本当の自分を形成することは難しいでしょう。拙い語彙でも、めちゃくちゃな文章でも、きっちりと言葉に書き起こせなくても、触れたものを批評してみるという意識が重要であると考えます。
xの検索機能が仕事をしなくなりアラビア語に邪魔をされ、当該のポストを再び見つけることができなかったのが悔やまれますが、以上が私の意見です。思うに、ポストの投稿者さんは来たる新作に対する建設的な議論をしたかったように感じますが、それとは全く異なる点ばかりフィーチャーされてしまったようです。こうした出来事を経て、アルバムはどう聞こえるのか。この記事に何かご意見ご感想などありましたら、ぜひ優しい言葉でお寄せください。iris、楽しみです。
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