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ワディラムの星空(Jordan)

18年前の2005年、ヨルダン(Jordan)という素晴らしい世界を経験した。最近ヨルダンを旅されたYouTubeを見かけ、楽しく壮大な記憶が蘇り、時空を越え旅をした気分になれた事に感謝している。

…当時31歳、東南アジア近隣の旅が多かった。初めての中東世界へエミレーツ航空で先ずドバイでのトランジットをする。ドバイでは建設ラッシュの風景が見えたのを覚えている。普段あまりアジアでは見ることのなかったアフリカ系の人々が空港内を闊歩する。ナイロビ行きなどが出るハブ空港なのだ。ヨルダンへの乗り換え時間は真夜中を通り越して朝まで待つタイミングだったため長く、クイーンアリア空港までは遠く感じた。

 空港に到着。聞き慣れないクイーンアリアという空港は成田空港やドンムアン空港やタンソンニャット空港に比べひっそりとした、こぢんまりとした空港だった。明らかにアジアとは湿度が違う。すでに砂漠の存在を感じていた。空気は灼熱だが日本の冬の様に乾燥し、目や唇が乾く。そこには私たち以外ほとんど人がいなかった。ひっそりとした空港のベンチで現地ドライバーを待つ。すると遠目に灼熱のモヤの奥にゆっくり歩く黒いベールを着た女性の集団が見える。着くなり異世界に来たと感じ、それだけでもう中東を楽しめていた事を覚えている。

 確かワディラム、デザートキャンプ、ペトラ遺跡、死海(deadSea)、首都アンマンの順に巡った旅だった。
結果的にクライマックスとなる砂漠(デザートキャンプ)で見た夜空に広がる満天の星空は一睡もできないほど圧倒された。砂漠は空の水分が少なく冬の様に空気が澄んでいて、水分が蒸発し雲が無い。ビルもない。高木もない。高圧電線もない。空を遮るものが無い分視界は大パノラマになる。日中は太陽、夜は月と星の独壇場になる。その中でキャンプファイヤーと共に夕食を終える。そこには日本やアジアでこれまで見た星空とは全く違う世界が広がっていた。

 18年経った今でもまだ尚、忘れることはできない。静寂の砂漠の中、煌めく満天の星空。地球から宇宙を見る感覚に陥る。普段の日常が嘘の様に小さく感じ、もう一つ別の壮大な世界がこうして存在する事を思い出させてくれる星空。天の川がはっきり見える。頻繁に流れ星を見ることになる。一面に広がり煌めき続ける恒星の数が数えきれない。ずっと見ていた。ずっと見ていたい。結局、朝を迎えるまで見ていた。’もう夜明けか’と呟く。幸せな時間だった。これだけの星を見たら私たち以外にも生命体がいる事は容易に想像ができる。何かと交信した様な気持ちにならざるを得ない。圧倒的な記憶が刻み込まれる。そんな一晩を過ごす事になるワディラムのデザートキャンプ。

 夜が明け、灼熱の一日が始まる。ペトラ遺跡では地層に悠久の歴史を感じロバと共に遺跡に触れた。翌日は世界で一番低い場所という死海に本を読みながら確かに体が浮き、ミネラルたっぷりの泥を顔に塗りながら見た対岸のイスラエル方面の山脈を意識したりもしたが昨夜の星々の事が忘れられない。

 翌朝ヨルダンの首都アンマンに向かい、街ではシーシャを吸う方々を見かける。水を飲み、好きなチャイを交互にいただく。コロッセオの急な階段に歴史を感じ、真昼のマーケットではコーランがけたたましく鳴り響き、最初空港にいた黒いベールを着た人達と香辛料の匂いでごった返す。イスラムの雰囲気で混沌としている。賑わう。日本人は自分たち以外見かけない。人懐っこい少年が、現地で買った私のイスラエルの地図が載ったTシャツを見て揶揄う。その笑顔にまた会いたくなり帰り際再び喧騒の中市場で少年と出会う。笑顔がまた良い少年に別れを告げ、ホテルへ向かうタクシーから見た夜空には細い三日月が赤紫色に怪しげに光る。

…2005年頃のヨルダンはイギリスのブレアさんやベッカムさんも訪れる欧州のリゾートと聞いた。欧州からJordanは距離的に我々日本人の想像してるより近く、5000kmほど。北海道から沖縄で3000kmかと考えると意外に感じる。

…こんな素晴らしい観光地もメディアの扱い方一つで印象は人それぞれとなる。湾岸戦争やテロのイメージ、2001年9.11の影響もあるため周りからはなぜヨルダンに行く?となる中東エリア。他人を気にせず現地に行けば人生観は変わるだろう。2023年になりさらに行きやすくなっているはずだ。行かない手は無い。中東ヨルダンは旅人にとってheavenなのかもしれない。

 18年経った今でもあの空の星は忘れる事ができない。砂漠を感じさせる曲が勝手に脳内を駆け巡っている。
‘Hum a Tune’’青空の向こうから’’lt’s wonderful world’’ブロンコ’’ダンス’’風の歌を聴け’
(ORIGINAL LOVE)

‘GOOD FOR  YOU’
(TOTO)

 旅を続け、地球を楽しませてもらっていることに感謝したい。

 星に願いを、というのがあるが、あのワディラム砂漠の星々を体験し、時間の差はあれど願いは叶う。どうもその様なことの様だ。私も18年前の星を見た夏の後、当時の念願が叶った。何かを感じたあの星空。不思議というか感動というか、人間社会の常識を越える世界があると言わざるを得ない。

 日本に帰って18年経ち、歴史を振り返っても北極星、北斗七星、妙見菩薩など天体に興味を持つ信仰が存在する事に気付く。しかし気候条件、地理的な条件の違いで見え方が違うのか、いや答えは自分の中にある様だ。そんな中2023年の夏、シチリア島のタオルミーナを訪れた際、ホテルのバルコニーで夜空を見上げた時北の空に北斗七星が煌々と輝いていた。現れた北斗七星から何らかの意図を感じた。

 旅をする事で気がつく事がある。それはそれは忘れられない経験をさせていただいたので、ここに記しておきたい。


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