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シチリア島のパレルモ、チェファルー、パラッツォアドリアーノ、アグリジェント、タオルミーナ

イタリアのニュースキャスターが深刻な顔で銀行の不正アクセスを取り沙汰する。

パレルモ大学の進学率や北と南の収入格差、刑務所が快適で五つ星と言われている事、、戦後の常識は変わり、人々はいよいよ自然を尊敬し、目を向け始めている。

 チェファルーは小さな街。そんな規模が好きだ。海岸は山と空のコントラストが美しい。アグリツーリズモで鰯や鱈といった魚介料理とワイナリーで作ったビアンコが合う。店員さんの笑顔が良い。

チェファルーの海岸


 マッシモ劇場がデカく迫力がある。パレルモは総じて建築物が今までの都市より大きい。

 マッシモ劇場裏のトラットリア・デル・マッシモでまた満腹。店員さんがまた良い人たち。ツアーのみんなも旅好きだからみんな良い人たちと感じ、似てるかもしれないと思う。旅の多さに尊敬し憧れさえ抱く。

雨上がりの虹が見えた。ニュースでホロスコープに興味のある国は珍しい。南アフリカの旅をした時に見えたオリオン座の話をしてくれた方。

 シチリア島は剥き出しの地層が見える巨大な岩山の景色が素晴らしい。今日は内陸へ。地政学的に文明の十字路がシチリア。歴史的に侵略、支配の連続であったが当時の民衆の気持ちに思いを馳せる。

 13歳の頃、地理の先生に聞かせてもらったヨーロッパの見たかった景色が重なり、ある意味で夢が実現する数々の瞬間。

 山あいに虹がまた現れる。鳥がバスと並行して走る。やがて小さな村に差し掛かる。

 数々の旅の中でも久しぶりに良い旅ができている。それは気さくで旅の好きな人、広い紺碧の空と雲が聳える地層の見える岩山、そして地中海と豊かな穀倉地帯に群がる羊や1匹の馬が見えた時、その景色に心を奪われ圧倒的な雄大さに思わず言葉を飲み込む。刻々と変わる景色を見飽きることはない。

 魚介類の美味しい食、穏やかでサラッとした地中海性気候に包まれ、しかし雄大な自然の景色には何も敵わないと感じる。

 こんなところが多くの殺し屋マフィアの出身地というから不思議だ。お菓子のカンノーロが甘く美味しい。さらに南下し湖が見える。素晴らしいという言葉では足りないほど神々しい景色が続く。


 まもなく人口2,000人憧れのパラッツォ・アドリアーノだ。映画’ニューシネマパラダイス’の音楽が頭の中に流れる。街では奇跡が起きた。映画祭に来ていたトト(サルヴァトーレ・カシオ)本人にお会いでき彼の本にサインを書いてもらって握手し一緒に写真を撮った。

パラッツォ・アドリアーノでトトさんと


サプライズだった。そんな頻繁にいるわけで無いだろうから嬉しかった。トト本人が成長していた。

 シチリアのワイン…フルーティーなものが多い。イタリアは北に行くほど重い。

 さらに一本道の山道をバスで南下する。ゴルフ場など一切ない景色に癒される。もうすぐアグリジェントだ。

 シチリア島は人を作家にさせる。写真家にさせる。考古学者にさせてくれる。映画監督にさせてくれる。詩人にさせてくれる。

アグリジェントでは雲が横顔に見えた

 神殿が幾つも見えて来た。ギリシャからの哲学者たちがやって来た地。
昼にはピスタチオのパスタをいただく。
昔’カルタゴ’が強かった。紀元前20万今5万の都市。アクアポリ、ネクロポリ/チュニスと近いアグリジェントなのでどんどんアフリカ大陸から来た場所。コンコルディア(平和、調和)神殿は完璧な神殿。ギリシアにも無いほど。しかし木でできていたため屋根がない。柱は真っ直ぐ立っているように見えるが1本ずつ微妙に傾いている。2500年前。地震がある。柱が4つに分かれている。海から目立つ様な色彩だった事に想いを馳せる。カトリック時代は西側が入り口だった。川があった。水があった。地中海の人々。劇場は海が背中の様に作ってある。それは海から歌が聴こえるから。


現代のアグリジェント人の憧れの仕事は国家公務員、教師という。それは3ヶ月の長期休暇で旅ができるから…
大地にしっかりと過去の先祖に感謝を伝えながら一歩ずつ歩いた。かけがえのない経験をさせてもらっている。味わいたいと思っていた事が自然と届く。ただしその意味とか価値とかは今はわからない。動いているとその意味はわかってくる。

ピアッツァアルメリーナ、カルタジローネ

満月が欠けてきている。カルタジローネ経由タオルミーナ。バスに並行して鳥が飛ぶ。一面オリーブ畑やサボテン畑の奥に大きな山々が見える。山肌には刈り込まれた畑と所々木々が点々としている。シチリア島は地政学的にチュニジア、モロッコ、エジプト、ギリシャなどの気配が間近に迫る。

 温泉文化、日本の弥生時代には既に発達していたというが縄文文明を考えるともしかしたら日本にも発達していたかもしれない。モザイクを楽しむ。南イタリアでは珍しい蝉がなく。

mosaic


 陶器を楽しむ。アラブ人たちが伝えたマジョルカ焼き、素焼きテラコッタがほとんど。しかし釉薬を使って彩色をつける事が齎されたカルタジローネ。青緑黄色、が基本。白は当時なかった。松ぼっくりが目印。

カルタジローネへ
10〜12世紀の階段(公会堂(資料館)にカフェがある。午後は日差しが強く照り付ける。時折吹く風が心地良い。

大階段スカーラ

 陶器の街の階段を駆け登る。約200段途中の陶器の店で本場の陶器を買う。最終的に何段かわからなくなる。登ったところの景色は素晴らしい。大変な思いをして見た景色は美しかった。お昼はカポナータに舌鼓。ワインが並々と注がれ歓声を浴びる。

エトナ山

エトナ山が姿を現す。ヨーロッパ最大の活火山。ナポリのベスビオ山より大きく富士山より少し小さい。3000m級の山。裾野の円周は200kmで富士山よりでかい。シチリア島の20分の一を占めている。
200の火口。エトナとは燃え上がるというギリシャ語が由来という。20万年前に海底から顔を出した。2万年前溶岩が海岸まで達した。時々噴火する。桜島の様なものか。1669年の噴火でカターニャまで達する。噴火は1ヶ月前に予測できるらしい。いつでも蒸気が上がる。

バスの運転手ブルーノさんに別れを告げる。

夕方のメッシーナ門、この近くも皆、歩いている人も、店員さんも表情が良い。機嫌が良い。こちらの笑顔があれば伝播する。人種の坩堝。結果波動が高い。何のことはない。この世は平和だ。夕方のタオルミーナでこの世の天国を見た。最高の旅だ。

 夜はバルコニーでエトナ山の夜景を見ながら聴こえてくる歌と音楽と共にアーティチョークと、トマトとオリーブとパンとアランチャ・ロッサに舌鼓。北側の空を見上げると北斗七星が煌々と輝いていた。ー地球を楽しめてます。奇跡的な演出が何度も続くこの旅。不思議な事が立て続けに起きた旅。

 最終日、タオルミーナ→カターニャ空港→ローマ空港へ。途中エトナ山が噴煙をあげて見送ってくれている。溶岩の固まった後を間近で見る。滞在中エトナ山の姿がずっと見えるのは滅多にないことらしい。

旅行業界が逆風の中、円安、戦争、コロナでまだまだという。国内は盛んだが、海外旅行は全盛期の半分に満たない。スムーズに誘導してくれた添乗員さん、ガイドさん、参加者、仲間に感謝。

総じて、ツイていて、素晴らしく順調な旅だったと思う。暑さがおさまった天候、パレルモでの夜マッシモ劇場裏での雷雨も体感できた。コルレオーネ付近での山中、虹が見えた後に到着したパラッツォアドリアーノではトトに会えた事、アグリジェントで悠久の歴史に触れ地中海の奥にあるアフリカ大陸を感じ、エトナ山に見守られたタオルミーナでは北の夜空に北斗七星が見えた。暑さ対策をして体調も安定していた。

羽田行きの搭乗口に乗るのはほとんどイタリア人。渡航者は日本人とイタリアで逆転している。日本に行くイタリア人がほとんどで帰国する日本人はいない。行きと同じで機内はイタリア人だらけ。世界的円安か。日本が経済的に弱っているのか?日本国内旅行は賑わっているという。海外に行こうとする日本人は何故いないのだろう。

 しかし表情の良い生き生きとしたイタリア人が多い様に思う。笑顔が絶えず、明るく陽気で開放的で、そんな人には人が繋がる。見習いたい。帰りの機内も賑わっていて活気がある。人は油断すると偏見を持つ時がある。しかし偏見など持ってはいけない。同じ時、同じ場にいて目と目を合わせて話した時、通じるものがある。イタリア人も日本人もなく同じ人間なのだ。それぞれに考えている事があり、日常があり、社会もある。比較など必要ない。たまたま居合わせた人は縁がある。希望に満ちた表情の機内スタッフ。着陸後、恒例の拍手が機内に鳴り響く。イタリア、シチリア島また行くだろう。

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